つまらぬ
「つまらぬ」作 六六
A
B
C
D
E
先生…男
教室。ホワイトボード側から順にA~Eの5人の生徒が椅子に座って先生の授業を受けている(机はマイム)
ホワイトボードには『1=2』『794年 先生が幕府を開く』『酸素は旨い』『憂鬱』『I am crazy.』と書かれている
(先生は劇中ずっと、それっぽいことをホワイトボードにアドリブで書き続ける)
Aは小声で隣のBに話しかける
A「この授業……つまらん!」
B「よく言った! その通りだ! つまらん!」
A「つまらなさすぎて皆殺しを起こしてしまいそうだ!」
B「それは我慢しろ!」
A「我慢などできぬ!」
B「せめて暴走の種類を選択しろ!」
A「ならばこうだ! 見ていろ、僅か5秒の間に先生のハゲ散らかした頭に真っ黒の頭髪をふぁさっと生やしてくれよう!」
B「とても喜びそうだな!」
A「ああ!」
C「待たれよ!」
Bの隣に座っていたCが会話に参加
Cは持っていた折り畳み定規を弄ってカッコつける
A「何者だ貴様!」
C「クラスメイトの役者名Cである!」
A「そうか! 役者名Cか!」
C「ちなみに本名ではない!」
A「そうだろうな!」
B「役者名Cとやら! 待たれよとは一体どういうことか!」
C「役者名の部分は別に言わなくてもよい! 貴様ら、普通に考えてもみろ! 今は神聖なる授業の時間だ! 騒ぐのは止めろ!」
3人は先生を振り返る
先生「はい、ここはっ……1イコール、2! はは、みんな元気がないなぁ! もっと俺にコールくれよぉ! イコールだけにな!? ははははは!」
先生はホワイトボードを向き、3人は向き直る
ABC「(小声で)この授業、聞く価値など毛頭ない!!」
D「待たれよ!」
ABC「何者だ!」
Dは持っていたシャーペンを上に投げて一回転させてキャッチし、顔の前に持ってきてポーズを決める
D「クラスメイトの役者名Dである! ちなみに役者名、の部分は言わなくてよい!」
ABC「役者名D、貴様は何者だ!」
D「話を1ミリたりとも聞いていないのか貴様ら! 後で掃除当番を押し付けるぞ!」
ABC「申し訳ない!」
D「分かればよい!」
C「役者名D、貴様は何者だ!」
Dはガクッと椅子から落ちる
無駄に慌ててABCを巻き込みながら復帰を図る
先生「(スローで)んん、なんだぁ? 今、なんか変な音が……」
先生が振り返ると同時に、A~Dはそれぞれ考える人、円盤投げ像、サイドチェスト、ムンクの叫びのポーズで椅子に復帰している
先生「気のせいか……あぁー、そういやそろそろ東京オリンピックだなぁ! 先生も、あの、あれだ、あのリレーに参加してみたいものだ! そう聖火リレー! ……気の聖火、なんちゃって! なっ! はははは!」
先生はホワイトボードに向く
A~Dはポーズを解除、先生を向く
A~D「……は?(同じ向きに首を傾げる)」
B「今のは何だ! ギャグか! ギャグのつもりか!」
A「極寒の極み! センスは壊滅的! テンションは修学旅行が楽しみで寝れずに徹夜してしまった40代男性のようだ!」
C「いや違う、40代は行きすぎだ! せめて39歳にしてやれ!」
A「申し訳ない! では42歳に訂正する!」
C「話を1ミクロンでも聞いていたのか貴様!」
B「待て、待て! 静かにしろ! ……役者名Dよ、我々に何の用だ!」
D「遅い! もっと関心を持て!」
ABC「申し訳ない!」
D「先生の授業はつまらんな! ……以上だ!」
ABC「それだけか!」
D「それだけだ!」
ABC「そうか! ではもう黙っていろ!」
D「申し訳ない!」
B「音を出した役者名Dよ! もう手で口をふさいでおけ!」
D「申し訳ない!」
Dは手で口をふさぐ
E「先生! 少しよいか!(手を挙げる)」
先生「はいどーぞー! 元気いいねぇ役者名Eくん!」
E「役者名の部分は別に言わなくてもよい!」
先生「んん、じゃあ役者名Aくん?」
A「なぬ!? なんだ先生!」
E「名前を変えてどうする! Aよ間違いだ! 座れ!」
A「そうか! 承知した!」
先生「あーすまん役者名Aくん、役者名Eくんが勝手なこと言ってな!」
E「煩わしい、煩わしいぞ! もう役者名と言うな! たった三文字であれど確実にネタとしてマンネリを起こしているのだぞ!」
C「起立!」
A~Dは起立(Dは口をふさいだまま)
C「気を付け! 礼!」
A~D「(Eに向かって)マンネリになるようなネタを持ち込んでしまい申し訳ない!」
E「律儀なのはとても良いことであるな貴様ら! Dよ、もう手を離せ!(Dは手をどける)」
C「再び気を付け! 礼!」
A~E「(先生に向かって)ありがとうございました!」
先生「いやいや何勝手に終わってんだよ! まだ始まって5分だぞ? そんなに俺の授業がつまらんか?」
A~E「勿論!」
B「でなければこんなに騒いだりはせん!」
C「その通りだ!」
E「もう質問する気も失せたぞ!」
A「授業を止めろ!」
D「つまらぬ、つまらぬ! はい、つーまらぬ! つーまらぬ!」
Dによりつまらぬコールがスタート、手拍子とスピードが頂点に達したらAが指揮をして止める
A「もう授業を終わらないか先生!」
先生「もういいよぉ、知らないっ。ふえーん」
先生は子供みたいに泣きながらはける
A~Eは顔を見合せる
A~E「イエーーーーイ!!」
暗転
END