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神が逃げた世界  作者: 停止する惑星
第1章
3/8

3

 男は1人森の中で突っ立ていた。現実を受け止めきれず、数分放心状態でそのままでいたが、彼は我に帰ると近くの木に寄りかかって座った。


(マジか……、マジで異世界転移しちまったのか……)


  彼は辺りを見回し先ほど自分がいた部屋とはまるで違う森であることを認識して、1つ深いため息をついた。そして現実から逃げるように森の木々の間から見える空を見て、綺麗だなぁと思いながら空を眺め続けた。


  彼は空を見ながら何気なしにこれからのことを考えていた。すると身に覚えのない知識が頭にあることに気づいた。


(そういえば、女神様が力を分けるとかなんとか言っていたな)


  なんてことを思い出して自分の話を聞かず、一方的に異世界へ自分を飛ばした女神を思い出して腹が立ってきた。そして次会った時は文句の1つでも言ってやろうと心に決めた。


(まぁ、女神サマのことは今はいい。それよりもこれからどうするかだが……)


  彼はさてどうしようか考え、とりあえずは現時点で女神サマから知らない間に刷り込まれたこの世界の知識を確認することにした。その勝手に刷り込まれた知識によるとどうやらここは、神の森という場所でエルフの領域らしい。他にも種族としては天使や悪魔、吸血鬼がいて、それぞれ種族ごとに領域があるようだ。


(嘘……。人間が、いない……だと)


  そして知識を確認した彼はこの世界に人間がいないことを知り、本当にひとりぼっちということ認識して軽くショックを受けた。だが彼をさらに追い込む知識があった。それは地上の四種族がそれぞれ戦争状態であるということだった。


(女神サマは世界をなんとかして、と言いていたな。それはつまりこの戦争を止めろということか?)


  女神サマが自分を世界に送った理由を認識した彼はさらに絶望た。彼はまだ18歳である。そんな自分が女神サマから知識と力を分け与えてられたからといってなんとかできるわけがない。


(でも、やらないと帰れないんだろうなぁ)


  そう。自分にはとても無理な使命だとわかっていても彼はやるしかない。女神サマの意思で飛ばされた以上、女神サマの願いを叶えるしかない。それが現状わかっている女神サマに会うことのできる唯一の方法だからだ。


「やるしかない……か」


  彼は元の世界へ帰るため渋々女神サマの言う通りに動くことを決めた。そして彼が今後の方針を決めた頃空はすっかり暗くなっていたので、彼はその場で横になり木の根を枕にして寝た。


  彼が寝て数時経った後、なにやら森の奥の方から音が聞こえてきた。その音を聞いて彼は眠そうな半目のまま上半身を起こして辺りを見回す。すると奥の方に小さな明かりがあるのが見えた。どうやら音は明かりの方から聞こえているらしい。


(……なんだろうか)


  彼は不思議に思い立ち上がってその明かりののある方へと向かっていった。そうして段々と明かりに近づいて、数十メートル手前で彼は急に立ち止まりその場にしゃがみ込んだ。


  そこには黒衣で頭から足まで覆っている人が三人いた。よく見てみると一人の手にランタンらしきものが握られていて、どうやらそれが明かりの正体のようだ。そして音の正体は一人が地面を掘っているスコップの音だった。なにもしていないもう一人は周りの様子を見ていた。


(ここはたしか神の森、ということはあれはエルフか?……さてどうしようかな……)


  彼にとっては転移して初めての自分以外の生命体である。彼は話しかけたかったがこんな夜中に理由はわからないが、辺りを警戒しながら穴を掘っている奴らなどまともではないだろう。そのどう考えても怪しい集団を見ながら話しかけるべきか否かを考えていると、穴を掘っている一人が手を止めて、辺りを見回しているやつに向けて声を発した。


「へいへい〜、リーダーさんよぉ。本当に場所はここであってるんですかい?いくら掘っても出てきませんぜ?」

「ふむ、やつらが言っていたのはここだと伝えられたが……まさか嘘だったか?」

「ゔぇ!?マジですかい?それじゃ俺はなにも無い所を掘っていたことになるわけですか?あぁ〜マジかー、無駄に疲れちまったよ〜」


  声を聞く限りでは穴を掘っていた方は若い男で、リーダーと呼ばれた者はおじさんだろう。なにやら目的のものが見つからず困っているようだ。そしてそんな二人の会話を聞いてランタンを持つ一人が言葉を発した。


「……もし本当に情報が嘘だったら、あいつらはサラ様を騙したことになる。それは絶対に許せない……。叩き潰す。」


  声からしておそらく若い女性だろう。なにやらものすごくお怒りのようだ。その女性の発言を受けておじさんがなだめるように言う。


「おいおい、まてまて。まだ嘘だと決まったわけじゃ無い。もしかしたらもっと下にあるかもしれない。だからもうしばらく掘ってみて様子を見よう。」

「……了解」

「ゔぇ!?まだ掘るんですかい!?」

「悪いな、頼むぞ」

「はぁ。ま、リーダーの指示ですからねぇ。従いますよっと」


  どうやら三人はまた穴を掘るようだ。そして会話の一部始終を聞いていた彼は話しかけられるような雰囲気では無いことを感じ、話しかけるのは諦めて彼らを観察することにした。


  それから数十分間彼らは穴を掘り続けついに目的のものを見つけたのか、穴を掘っていた男は赤みがかった銀の棒状の物を手にしていた。


「ふえ〜、たしかに魔鉄はここにありましたが……。ちょっと深すぎませんかね!?」

「まぁ、それだけ彼らが用心深いということだろう」

「いや〜でもこの深さは絶対ただの嫌がらせでしょ〜」

「……よかった見つかって。……これでサラ様も喜ぶ」

「ふむ、では帰るとするか。では穴を埋めてくれ」

「ゔぁーい」


  そうして彼らは掘った穴を埋め、綺麗さっぱり掘った跡を消して立ち去ろうとし、そこで動作を止めた。


「……誰かいるな?」


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