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2章 勧誘 【朝霧 凪沙 編】

州崎すざき 洸夜こうや

・この物語の主人公。コミュニケーション能力が低めであり、それを克服したいと努力中


ドルド

・洸夜と契約した悪魔。洸夜を過去に飛ばした張本人


洲崎すざき 師十郎しじゅうろう

・洸夜の父親。ロボットの製造を仕事としている

 校内に入ると、まず出入り口に靴箱があり、その奥はとてつもなく広いエントランスが存在していた。

 5階建ての校舎ということもあり、想像以上に広くて大きい。思わず口を開けたまま、呆気にとられる。

 エントランスは吹き抜けになっているらしく、恐らく5階からここが見えるのだろう。チラホラと下を覗く生徒の姿が見える。

 取りあえずここに突っ立ていても仕方ない。俺は来賓客用のスリッパに履き替え、一度職員室に向かおうと足を動かし始める。

 が、あまりにも広すぎて、何がどこにあるのか全く分からない。


「あら? 転校生かしら。道にでも迷った?」


 困り果てていると、後ろから声を掛けられた。

 その声のする方向に振り返ると、バインダーを抱えた女生徒が首を傾げながら、こちらの方向に視線を向けていた。

 髪は艶やかで、主張するようにポニーテールが後頭部から顔を覗かせる。前髪は綺麗に切りそろえられている。所謂、ぱっつんというやつだ。

 長年、他人とあまり接してこなかった俺でもハッキリと分かる。

 この子は美人だ。

 他の女生徒とは違う風格がある。

 その絢爛(けんらん)な姿に目を奪われ、俺はその場で固まってしまった。

 同時に引き籠りの後遺症、其の一が発動してしまったらしい。

 女性と喋ったことが(ほとん)どないので、目を合わせる事など出来るはずなく。何故か、直視しようとしたら自動的に目が逸れてしまう。

 こんな状態で、よく青春やり直したいだとか、恋愛してみたかったとか言えたなと自分でも思っているところ。


「? もしもーし。君、聞こえてる?」


 その女生徒は顔を覗くように、更に接近してきた。

 それ以上近づかないで! 洸夜のライフはゼロよ!

 心の中で悲鳴を上げる。恥ずかしながら、俺の顔は絶賛アッツアツ状態だ。

 このままの状態では変なやつ扱いされる。それはとてもよろしくない。

 俺の脳内では即座にここから逃げると、勇気を振り絞って職員室の場所を聞き出すの2択が用意されていた。

 前者の場合、確実に変なやつ扱いされる。一応、他の生徒もいるわけだから、余計に目立つ。

 ここは後者の方が無難ではあるが、果たして元引き籠りの俺にそれが出来るのか?

 声を掛けられてから約5分くらいは経過しているはず。もう考えている余裕は無い。


「あ、あ、あのさ。しょしょ職員室は……何処ですか?」


 声は小さいが、この距離だったら聞こえているだろう。吃りながら、何とか返答する事ができた。


「職員室だったら、そこの角を曲がって真っ直ぐ行ったところにある直通のエレベーターでいけるわ。他になにか聞きたいこととかあるかな?」

「いや、だだ大丈夫です」


 職員室の場所を聞いた後、足早にその場から立ち去った。恐らく不思議そうな顔をしているとは思うけど、今はどうだっていい。

 今後会うことなんて、そうそうないだろうし。見た感じ、俺よりかは歳下のような気がする。歳下ということは学年も下。

 数え切れないほどの生徒がいるわけだ、あの声を掛けてきた女生徒も直ぐに忘れるだろう。

 教えてもらった通り、角を曲がった先にエレベーターがあった。職員室前以外は止まりませんと書いてある。

 学校の中にエレベーターがあるって何か凄い。まあ、金持ちとか頭いいやつが通うだけ、色々と設備が充実しているんだな。

 というか、よくこんな場所を受験して通れたな。改めて自分は頭が良かったんだなと実感する。

 ここで長居していても仕方ない。俺は職員室に向かうべく、エレベーターのボタンを押した。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 職員室に着くと、親父が今朝話していた担任の先生が居るか、他の先生に確認を取ってみた。なにやら書類を纏めるのに手間取っているらしく、近くにある来賓用の長椅子で待っておくように言われた。

 何故か分からないが、先生だったら緊張などしないみたいだ。

 数分の間、腰掛けていると、職員室の奥の方からコツコツと足音を立ててその人物が姿を現した。


「ようやく学校に来たな、貴様が毎回毎回、郵送した課題を100点満点で送り返してくる州崎か?」


 目の前に現れたのは、ショートの髪を靡かせ、所々パーマの掛かった色っぽい女性だった。唇の近くにあるホクロが一層色っぽさを際立たせている。


「は、はい。州崎ですが、貴女は……」


 よくよく見てみると、胸元が開けて谷間がガッツリ見えている大胆な服装をしている。

 まさに大人の女性といった出で立ちだが、学校にこのような服装って不健全すぎじゃあないですか? と疑問に思う。

 そもそも、目のやり場に困る。


「私か? 私は貴様の担任である椿 飛鳥(つばき あすか)という。とりあえずコレを受け取れ」


 差し出された紙を数枚受け取り、視線を移動させる。そこには本日の時間割表、それから小テストの出題範囲と書かれたプリントがあった。


「時間割は分かりますが、この小テストの出題範囲とは一体……?」

「今日放課後に残ってもらう。何故かと疑問に思うだろうが、それは今の貴様の学力がどれほどのものなのか確かめる為のもの」


 長年、引き籠ってたわけだから、現在の学力を確認するテストというのは納得がいく。頭のいいやつが通うだけ、厳しいのだろう。

 一通り目を通してみると、全ての問題が過去にやったことのあるものばかり。


「理解しました。放課後は教室で居ればいいですか?」

「あぁ、そうしてくれ。聞き分けのいいやつは好きだぞ」

「……はい」


 最後の言葉だけ、凄くねっとりとした言い方だった。ゾクゾクと背筋に電撃のようなものが走る。

 今更だとは思うけど、この担任は色々とヤバイ。服装もそうだが、時々会話の中で色気のある声を発してくる。

 思春期真っ盛りの男子には、かなり刺激が強い劇薬のような存在だということがハッキリと分かった。


「言い忘れていたが州崎、貴様のクラスは3年C組だ。席は、教室を入って右から2列目の1番後ろになっている」

「分かりました。因みに3年のクラスがある階層って何階になりますか?」

「4階だ。後20分したらホームルームだから、教室で待機しておくように」

「あれ? 体育館とかで、始業式みたいなものは無いんですか?」

「はぁ〜……そこまで説明しないといけないのか? 私も忙しいんだ。説明が一々面倒だから、これでも見ておけ」


 近くの机に置いてあった、少し厚めの紙束を手渡してくる。そこには『新入生のしおりだよ★』と書かれていた。

 その名の通り、新入生に配られる学校案内のしおり。

 各階の地図、施設の名称だったり、行事についてなんかも記されている。


「ありがとうございます」

「では、私は書類整理に戻るから、分からない事があればクラスメイトにでも聞いてくれ」


 その言葉を告げると、コツコツと足音を立てながら、職員室の奥の方へ去っていった。

 職員室内にある時計に視線を向けると、ホームルームまではまだ時間はある状態。

 少し余裕はあるから、貰ったしおりを見てから教室に向かうとしよう。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 目的地である、4階を目指して歩いている。現在、3階から4階に上がる階段。

 エレベーターに乗っていくという選択肢もあったが、あえて階段を使うことにした。

 まだ不慣れな俺には、他の生徒がいる状態でエレベーターに乗るのは、難易度が非常に高い。現にエレベーター前は、登校してきた生徒が並んでいた。

 椿先生に手渡されたしおりを見ていて、いくつか分かったことがある。

 どうやらこの高校は、全校生徒に向けての放送で始業式を行なっているらしい。

 始業式=体育館で行うものと思っていたので、その考えが根底から覆された。

 確かに体育館でやるより、放送で始業式を行った方が効率的だよな。

 移動するという無駄な作業が無くなるわけだから、それはとても感心できる。

 それともう1つが、部活動が盛んに行われていること。ここの学校は全校生徒が、何かしらの部活に所属しないといけないという校則があるみたいだ。

 新入生が入学した日の放課後なんか、校門付近で部活動の勧誘なんかも行われているらしい。

 当然ではあるが、帰宅部を選択することはできない。

 俺も部活動に勤しまないといけないのか。

 そんなことを考えながら歩いていると、遂に4階に到着してしまった。

 案の定、他の生徒が廊下で談笑を繰り広げていたり、登校してきた生徒が教室に入っていく姿が確認できる。

 相変わらず、不安や緊張などしているが、ここまで来ればそんな事を思っている暇はない。

 20年後だったら、些細な事で緊張したりしないのに、今はそういかないみたいだ。

 恐らく、過去に戻ったことで、精神がその当時のものになってしまっているらしい。

 精神についての説明とかは、ドルドから何も聞いていない。もちろん、渡してきたマニュアルにも特に触れられていなかった。

 この調子だと、他にも隠している事がありそうだな。

 不安要素が1つ、増えてしまった。


「さて……」


 ノロノロと亀のようにゆっくり歩いていると、目的地である3年C組の教室前に到着した。

 あえてゆっくり歩いていたのだが、時は無情にも過ぎてしまうもの。

 本日最大の難関が遂にお出まし。

 緊張はしているが、大丈夫だ。教室に入ったら、早足で指定された席に向かえばいい。

 バクバクと騒がしい鼓動を、抑えるように拳を胸に当てる。

 そして引き戸の窪みに手を置き、大きく深呼吸を2回。


「よし!」


 意を決して、勢いよく教室の戸を引いた。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 着席してから数分が経過した。

 ここまでは問題なく進んだのだが――何故か、こちらに視線を向けてくる生徒が何名かいる気がする


「なぁなぁ、うちの学校ってあんな奴いたっけ?」

「いや、俺は見たことがないな。転校生とか?」


 2つ隣の席から男子生徒の喋り声が耳に入ってくる。案の定、早速話題にされているようだ。


「クラス表見たけどあそこの席、州崎っていうらしいぜ」

「州崎州崎…………あ、思い出した! 確か2年間学校に来てなかった奴だ」

「マジかよ! ということは、引き籠りのヒッキー君ってところか?」


 ガハハハハと笑いながら、そんな話を繰り広げている。

 初対面の人間に、そのようなあだ名はどうかと思う。

 大体予想はしていたことだけど、案外メンタルを削られるんだな。


「貴方たち! これから1年間、共に勉学に励むクラスメイトに対して、そんな事を言うのはよくないと思うのだけど?」


 窓の方に視線を向けていると、先程の男子生徒の声がしていた方角から女生徒の声が聞こえてくる。


「うわ……マジかよ」

「せ、生徒会長……」


 声のする方角へ徐に顔を向けると、ポニーテールを揺らしている女生徒の姿があった。


「罰として、貴方たち2人には生徒会と一緒に体育館の掃除をしてもらいます」

「新学年早々、生徒会長に目をつけられるとか、ついてねぇな~」


 そう言いつつも、何処か嬉しそうにしているように見えるのはなぜか?


「分かったよ、会長~。放課後、体育館に行けばいいんだろ?」

「ええ。丁度人手が欲しかったところだから、2人共よろしくね」


 そのやり取りを見ていて、この生徒会長と呼ばれている人物に対して、何故ここまで聞き分けがいいのだろうかと疑問に思った。


「あら? 君、転校生じゃなかったんだね」


 こちらの視線に気づいたのか、男子生徒と会話していた女生徒がこちらに近づいてくる。

 その瞬間、目を見開いた。


「今朝は急に早足でいなくなっちゃうんだから、驚いちゃったよ。あの後はちゃんと職員室に辿り着けた?」

「は……はい」

「それはよかった。私って結構、道案内が大雑把すぎるってよく言われるから」


 少し嬉しそうに微笑むその人物は、今朝エントランスで遭遇した女生徒だった。

 外見で判断して、学年が下という安直な考えに至った自分を恨む。

 同級生であり、しかも同じクラスだったとは、邂逅とはこの事を言うのだろうか。

 黙っていても仕方ない。会話の主導権を握らないと、恋愛なんて夢のまた夢に終わってしまう。

 今の内に、女性との会話に慣れておかねば。


「いえ……ちゃんと迷えずに……職員室に辿り着けましたよ……。ところで貴女の、お名前を伺っても、いいですか?」

「そういえば自己紹介がまだだったね。私の名前は、朝霧 凪沙(あさぎり なぎさ)。生徒会執行部で会長をしているわ」


 ニコリとした笑顔を見て思う。先程の男子生徒が素直に言うことを聞くのも納得できる。

 朝霧さんは絶美であるのと同時に愛嬌も備わっていた。

 気付くと、周りで朝霧さんを見ている生徒が少なからず存在している。

 学校のアイドル的存在に似たような感じということか。

 生徒会長をやっているわけだから、当然秀才なんだろうな。


「お、俺は洲崎 洸夜(すざき こうや)って言います。よろしく……」


 完璧な人間を前にすると、余計に緊張してしまう。

 改めて見ると、やはり他の女生徒にはない品格がある。


「よろしくね、洲崎君。何か分からないことがあったら、気軽に聞いて来てね」

「わ、分かりました」


 気軽にとは言っているけど、声を掛けるのも憚れるような存在なわけで、これじゃあ気軽ではなく気重なんだが。

 先が思いやられるな。


「もう少ししたら先生が来ると思うから、私は席に戻るね」


 そう言い残して、朝霧さんは真ん中の列にある座席へと戻っていった。

 自分の席についてから、長い時間が過ぎたような気がする。

 思いの外、学校というものは体力を使うんだな。一連の流れで一気に疲れた。

 正直、恋愛をするための道のりがここまで難易度が高いものとは、俺は舐めすぎていたのかもしれない。

 内心嘆息する。


「お前ら、席に着け。今からホームルーム兼始業式を始めるぞ~」


 教室の引き戸が開け放たれると、そこから担任である椿先生が声と共に姿を現した。

 担任の姿を見た途端、男子生徒どもが歓喜の声を上げている。まぁ当然、思春期の男には嬉しい先生に当たるわけだが、ここまでとは少々驚いている。

 案の定、女生徒は白い目で男子生徒を見ている。

 そんな事はお構いなしと、ガッツポーズをしているクラスメイトの姿も見える。

 なんだこれ、お祭り騒ぎじゃん。

 そう言いたくなる光景が眼前に広がっていた。


「後10秒以内に黙らないと、先生を変えてもらうぞ?」


 椿先生が発した言葉に対し、ものの数秒で騒がしかった教室がピタリと静かな状態になった。

 流石先生、生徒の扱いが上手すぎる。

 静かになったことを確認してから、椿先生はホームルームを始めた。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 今日はホームルーム兼始業式だけらしく、終わると生徒たちが各々部活に行くなり、部活が休みだから帰宅するなりと行動し始めていた。

 教室の窓から外を覗くと、校門付近では部活動の新人争奪戦が繰り広げられている。

 俺は椿先生に指示された通り教室で待機中。

 ガヤガヤとしていた教室も、数分もすれば静かな空間になった。

 現在、教室内は俺1人。

 椿先生は準備をしてくるといって、少し前に教室を出て行った。

 12時から開始すると言い残していたが、時計の針はまだ11時を指している。

 この1時間のうちに、予習でもしておけということだと思うけど、今は疲れすぎてやる気が起こらない。

 まあ、過去にやった事のある設問ばかりだし、予習しなくてもなんとかなるだろう。


「寝よう」


 丁度いい具合にポカポカとした陽が、体をじんわりと暖める。俺は机に突っ伏して、寝る態勢をとった。

 瞼が重くて目を閉じようとしたとき、教室の引き戸が開けられる音が耳に入る。

 あれ? まだ1時間も経っていないよな。誰か忘れ物でも取りに来たか?

 徐に視線を引き戸の方角へ向ける。


「あ! よかった〜。まだ教室にいたんだね」


 声の主は、相変わらずバインダーを抱えて、人を釘付けにするような秀麗(しゅうれい)さを醸し出している。

 教室に入ってきたのは、ホームルーム前に声を掛けてきた朝霧さんだった。


「一応、椿先生に教室で待機しておくように言われていたので――どうしましたか?」


 そういうと、小走りで俺の席に近づいてきて、前のめりに近い体勢で詰め寄ってくる。

 あまりの近さに、俺は座ったまま椅子を2歩程退いてしまう。

 いきなりの事に鼓動がバクバクと脈打つ。

 清楚な朝霧さんが、こんなにも近くにいると思うと緊張でどうにかなってしまいそうだ。

 マジで元引き籠りの俺には効くから止めて欲しい。


「州崎君に用があってね。探してたんだよ」

「お、俺に用事ですか……」


 ニコニコとしながら2度頷いている。

 こんな冴えない俺に用事とは、それ程急いで伝えないといけない事柄なのだろうか。


「州崎君って、部活とかやってないよね?」

「そうですけど……」


 しおりに書いてあったように、俺も部活動をやらないといけないわけなのだが、それを伝えにきたのかな?


「実はお願いがあって……」

「お願い……ですか?」


 俺は息を呑み、朝霧さんの言葉を待った。


「人手が足りなくて、生徒会執行部で書記をやって欲しいの!」


 両の手を合わせて、お願いされたのは、生徒会への勧誘の言葉だった。

 流石にそのような事を言われるとは思っていなかったので驚いている。


「何故、俺なんですか?」

「学校で部活動をしていないのは州崎君だけだから――それと生徒会は部活の掛け持ちができない決まりなんだ」

「そういうことですか……」


 なるほど、俺にお願いしてきたのは合点がいく。


「どうかな?」


 首を傾げて見つめてくる姿に、あざといというか悪魔的な何かを感じた。

 ギリギリのところで堪えてはいるけど、今の朝霧さんは誰が見ても悶絶するほど可愛い仕草をしていた。


「……分かりました」


 そんな顔をされて、断れる男子がいるはずもなく。

 まぁ、部活に入るのも決め兼ねていたところだし、生徒会だったら他の人と接する機会が大いにあるだろうから結果的にはいい方だと思う。


「ありがとう! 引き受けてくれて嬉しいよ! 1年の間だけどよろしくね」


 それ程嬉しかったのか、俺の手を強く握ってくる。

 目線が朝霧さんから、窓がある方角へと逸れていく。

 顔が熱い。

 女性の手ってこんなにも柔らかかったのか?

 鼓動が一層激しさを増していくのが分かる。


「よ、よろしくお願いします……」

「明日、授業が終わった後に声を掛けてね。生徒会室で手続きと説明を行うから」

「分かりました」


 明日から生徒会役員をやると思うと、不安な気持ちに陥ってしまいそうになるが、反面として新しい出会いがあるかもしれないと思ってみると、期待感が湧いてくる。

 俺は初めて明日が楽しみだと感じた。


「少し気になっていたのだけど、州崎君って何で教室でいるの?」

「長期欠席者を対象に、小テストがあるみたいで……それが此処で行われるみたいです」

「なるほどね! それじゃあ勉強の邪魔をしちゃ悪いわね。私も会長業務が残っているから戻らないと」


 そういうと、小走りで教室の出入り口まで駆けていき、くるりと此方の方向を振り返る。


「勉強頑張ってね〜」

 満面の笑みで手を振ってくる。そしてそのまま教室を出て行ってしまった。

 長いようで短かった嵐のようなものが過ぎ去った。


「明日から生徒会の一員か……」


 当然ではあるが、これで満足はできない。まだ、大きな第一歩を踏み始めたに過ぎない。

 ようやくスタートラインに立つことが出来たんだ。

 ここからどういった出会いがあって、恋が始まるのか……俺は期待に胸を高鳴らせた。



お待たせしました! 遂にヒロイン登場回である2章の投稿ができました~。

いや~考えるのに少し苦労しました(笑)

ヒロインの他に、少し濃いめの先生なんかを登場させてみたりと、ドタバタな2章になったかと思います。

楽しんで読んでいただけたのなら、すごく嬉しく思います。

さて、今回は洸夜が生徒会の一員になってしまったというところで終わりましたが、次回も濃いめのキャラクターが多数登場することを考えております!



頭のいい奴が揃うと当然馬鹿なやつも出てくるはず……

生徒会メンバー始動!!



次話投稿は遅くなると思いますが、お許しを~(汗)

それでは次回の投稿を楽しみにお待ちいただければ幸いです。


またお会いしましょう。

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