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ヤンキーガール=鑑定ガール  作者: 黒夢迷宮
第三章
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アマツ到着

 将軍との予想外な邂逅以外は特に何事もなく、俺たちは無事にアマツへと到着した。

 昔の日本や中国みたいに『和』をイメージした国であり、着物やら鎧やらが辺りに目に映る。


「ようこそいらっしゃいました。国王陛下がお待ちです。謁見の間までご案内致します」


 飛竜艇から出てきた俺たちに、待機していた別の従者がフリードと睦月。そして使者である翡翠と蒼龍に挨拶していく。

 俺らは……無理矢理来たし、オマケみたいなもんだからな。挨拶無しはある意味しかたない。


「……にしても。国王陛下、ね……」


 未だあった王族はルナシェリアの姫様だけ。それ以外は見た事無かったな。


「翡翠。アマツの国王陛下ってどんな人だ?」


「一言で言えば武人、ですね。アマツは武術関係に優れた者が多いので、必然的に武人として厳しく育てられています」


「なるほど。……だから実力行使も通じちゃった系?」


「平たく言えば」


 非常に納得したわ。

 脳筋とは言わないけど、武力で解決する方が好みなんですね。よくわかりました。


「国王はこちらにおられます。陛下! ルナシェリアからの聖騎士様が参られましたぞ!」


 おっと。そうこうしているうちに目的地に到着したそうだ。

 ルナシェリアの所と遜色無いような場所で、玉座に座っていた男性が立ち上がる。


「遠路遥遥、よくぞアマツへと参られた。我がアマツの国王、伊那岐だ」


 玉座に座るのは角の生えた男性だった。国王って言ってたから、てっきりおっさんかと思ってたんだけど……一見20代後半の青年とは意外だった。蒼龍や翡翠と同じ、外見詐欺の可能性が高いが。

 王様の名前も『いなぎ』。変わった名前だな。いや、それを言ったら、この世界全体そうだろうけど。


「ルナシェリア騎士団将軍。フリードと申します。必ずや邪龍を退治し、アマツの力になってみせましょう」


「ほう……そなたがルナシェリアの新しき聖騎士か。では、その横にいるのが……」


「はい。勇者召喚によって参りました、聖女のレナ・ムツキと申します」


「そなたが勇者召喚に呼ばれた聖女殿か。聖女殿もご足労いただき、大変感謝しております。蒼龍よ。使者の役目、ご苦労であった」


「はっ。勿体なき御言葉でございます」


 蒼龍が型にはまったような綺麗な礼で国王に返す。

 今まで生意気なガキとしか思ってなかったからちょっと驚いた。いや、実年齢は300歳越えのジジイだけどさ。


「竜己と翡翠もご苦労だった。……と、言いたい所だが……」


 竜己と翡翠にも労いの言葉を掛けようとした瞬間……国王と周りの側近たちが射抜くように俺とロビンを鋭く睨む。


「……翡翠。おまえ、勝手に行動した挙げ句、妙な連中まで連れてきたそうじゃな?」


 もうばれてんのか! 情報早いな、おい!

 アマツの事だからアレか? 忍者的な密偵がいるとか?


「はい。陛下。こちら、ハイネ・クロガネと(ついでの)ロビン・シャウドです。こちらの二人も邪龍討伐に相応しい実力の持ち主と判断し、僭越ながら、僕の独断でお連れしました」


 低い声の王様や視線に悪びれる様子もなく、サラッと言う翡翠。

 ……つかさ。今、ロビンをついで扱いしたよな?


「……話は聞いている。なんでも蒼龍と勝負し、そして勝利したらしいではないか」


「ぐっ……」


 負けた時の事を思い出したか、苦い顔になる蒼龍。さすがに国王の前で子供っぽい振る舞いはしないけど。


「しかし相手は邪龍だ。蒼龍に勝てただけでは、討伐隊には認められ――」


「陛下。ハイネは非戦闘職の鑑定士であり、聖女と同じく勇者召喚によって呼ばれた者でございます」


「……なんだと?」


 ここで王様の目が見開いた。周りの側近たちも驚いてざわめきだす。


「本来なら戦いに向かない鑑定士ですが、彼女は蒼龍の攻撃の絡繰りに気付き、さらに封じた上で相手に負けを認めさせました。……あと、ロビンもダークエルフの為、弓や攻撃魔法の腕前もそこそこございます」


 今度はハッキリと、だけど遠回しについで扱いしたな。ロビンの苛立ちが上がったんだけど。

 そんな事はさておき、国王様は翡翠の報告を聞き、値踏みをするように俺とロビンを見つめる。

 門前払い。もしくは相手にされないと覚悟していたけど、一蹴はされないか。さすが武人。


「二人ならば、こちらの聖騎士殿にも負けぬ働きをしてくださいます。……少なくとも、僕はそう思いますよ」


「……滅多に人を信用せず、煙に巻くような言い方で相手を惑わせるおまえが、そこまで言うとはな。……わかった。いいだろう」


「陛下。しかし……」


 王の言葉に思うところがあるのか、側近がこぞって止めにかけてきた。

 それを片手で制し、再度こちらに向き直る。


「むろん、安易にそのまま信用する気はない。……ハイネ・クロガネとロビン・シャウドよ。我が出す条件を達成したら、そなたたちも邪龍討伐隊に入れる事にする。……どうだ?」


 なるほど。自分の目でも確かめたいってか。

 賢明な判断かもな。部下が言ったからすぐ信用。……はあまりにも短絡的過ぎるし。

 ……ん? でも、そんな事をしている時間ってあるのか?


「一つお伺いしてもよろしいですか? その試練を受けている間に邪龍が暴れまわる。……という事は?」


「問題ない。どうやら邪龍は一定周期で活動を休止するようでな。あと二週間の猶予はある」


 時間はあるのか。ならばいい。

 休止期間は残り二週間。場所と相手によっては時間がかなり限定されるが……やむを得ないか。


「わかりました。その条件を飲みましょう」


「取引成立だな。……期待させてもらうぞ」


 ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべる伊那岐国王。

 戦闘凶の予感がするな。……それならそれで交渉の余地はあるけど。


(とにかく……その条件とやらを何とかせねばな)


 それをクリアしないと参加はできないからな。

 やるしかないならやるまでよ。

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