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ヤンキーガール=鑑定ガール  作者: 黒夢迷宮
第二章
3/35

追い出され、出会った人は

 スキル継承とやらは成功した。

 だがそれは神官――ならびに国が求めていたバリバリの戦闘職ではなく、認識した対象を鑑定するだけの非戦闘職、『鑑定士』だった。

 国側としてはあまり必要としないものであり、数日経った今現在、俺は冷遇の一途を辿っていた。勝手に呼んでおいて、望んでいたものでなければどうでもいいとは……。ここまで来ると怒りを通り越して呆れてくる。


「とはいえ……」


 いつまでもこんな扱いを受ける気はない。最初に考えていた通り、とっとと隠居生活に入った方が良さそうだ。

 という訳で。


「すいません。旅に出るので許可をください」


「……は?」


 思い立ったが吉日。手持ちの荷物を全てカバンに入れ、適当に歩いていた神官を取っ捕まえてそう告げた。

 冷遇されまくった環境にいるくらいなら、森かどっかに隠居した方が精神衛生上に良い。


「……まあ、あなたの場合はそれは構いませんが。……よろしいのですか? 一度出れば、しばらくの間は城に戻れませんよ。魔物もあなたがなんとかしなくてはなりません」


「それで構いません。魔物も……まあなんとかしましょう。とにかく旅に出させてください」


「……わかりました。少々お待ちください」


 俺の意志が固いと悟ったか、神官はため息を付きながら立ち去っていった。……絶対厄介払いができるのと、面倒事言いやがって。と文句を言ってるだろうな。まぁいいか。


「それも少しの辛抱だ」


 周りの同級生も戦闘訓練とやらで忙しい上に余所余所しい。城の人間は明らかに冷遇してくる。こんな環境から解放されるなら多少の辛抱も我慢しよう。




 城を出る許可はあっさりと取れた。というか、最低限の金と装備を手渡し、「早く出てけ」と言わんばかりに城門を閉められた。

 わかっちゃいたが、はっきり言おう。腹立つわ、コイツら。


「まあいいか。立ち去れただけ満足と思えば」


 とは言え、あんな空気の中にいるのは避けたい俺としては、最低限と言えど金と装備を手渡してくれただけでもありがたいと思う。

 正直無一文で放り出されるかと思っていたからな。一式用意してくれただけでも幸運だろう。


「さてと……荷物の中身は……と」


 とりあえず城門にいる兵士の無言の視線が居たいので早々に立ち去る。

 城門から先は緑溢れる――というか、もう森としか言い様がなかった。適当に歩き、誰の視線にも入らない木々の中で座り込む。


「中身は……ナイフと杖と――コートみたいなローブだな。金は確か……銅貨1枚で1円。銀貨1枚で100円と一緒だったな」


 非戦闘職だからか、装備がまるで魔法使いだった。それもゲームの序盤に出てくるような貧弱ぶり。……まあ重たい鎧なぞよりはマシだが。

 だが実用性はある。ナイフはしっかり刃の手入れをされており、杖は……まぁ木製なので強度が心配だか無いよりマシ。コートは内側にポケットがたくさんあるため、見かけによらず収納性が良い。

 現在の資金は銀貨3枚。……まあこの世界の物価がわからないため、しばらく節約だな。


「とりあえず……まずは資金集めと住居探しだな。えーっと、街の広さは……」


 ちょうど背後の木は中々の高さだ。遠くまで見渡せる。

 スルスルと登り、頂点近くから辺りを見回す。


「街は……結構遠いな。ああ、でも少し右側には川があるな。岩肌が見えるという事は木々が開けてるって事……よし」


 目的地決定。しばらくはそこを拠点にするか。

 幸い相手は魔王ではなく病人……もとい、病気の世界樹だ。魔物とやらはいるだろうが……それは今は横に置いておこう。

 サクッと結論着けた俺は木から降り、荷物を持ち直しながらその方角へと歩いていくのだった。




 数時間後。俺は目的地にたどり着いた。

 ある程度拓け、川もある綺麗な森。うん。まったくもって問題ない。

 後は食料。見渡せば、すぐ近くにあるのは果物と見える木の実があった。形は洋梨みたい……色はリンゴだが。


「とりあえず、これは食えるのかな……」


 毒があるのは困るからな。……とは言え、異世界の果物なぞ初めて見たからわからん。

 睨み付けるように、その果物をじっと見つめる。


「……ん?」


 するとどうだろう。果物の脇に青いボード――いや、ディスプレイに似た何かが現れた。3Dみたいなソレはテレビの如く文字を映し出し始める。





【リフランの実】

 甘味ある果汁とシャリッとした食感の果物。日本で言う洋梨と同じ。

 ルナシェリアや近隣王国でも流通する果物であり、食べられる。




 ディスプレイにはそう書かれていた。それを信じるなら、これは食用で合ってるらしい。

 ……というか、このディスプレイはなんぞや?


「……もしかして。これが【鑑定】?」


 神官は、鑑定は『認識した対象を鑑定する』と言っていた。

 先程このリフランの実は何なのかと思いながら見つめたが、それが【鑑定】というスキルと繋がったのか?

 ……だとしたら結構使えるかも。食用とか毒物とか。何でも調べ放題じゃねぇの?


「……試してみよう」


 好奇心が勝り、木の根本に生えていた白い花を付けていた雑草に目を向ける。そしてじっと「知りたい」と思いながら見つめれば、再度ディスプレイが現れる。




【アースヒール草】

 土属性の魔力が強い薬草。液体と混ぜ合わせて調合すれば、回復薬となる。




「うわ。思ったより使えるな」


【鑑定】の結果に満足だ。割りと何でも鑑定してくれるみたい。

 それにしても回復薬か……。ゲームで言えばポーションの類いか? いずれにせよ、街で売れる可能性もある。


「とりあえず、確保しよう」


 木の実をもぎ取り、薬草を確保する。

【鑑定】も思ったより効果的だし。これならいろんなものを調べる事が可能だな。


「さて……次は――」


 拠点を作るか。もしくは他の食料を探すか。そう思考を巡らせた瞬間、近くから枝を踏んだような音がした。


「ッ! 誰だ!?」


 近くに人? それとも魔獣? いずれにせよ、こんな接近されていた事に気づけなかったのは不覚だ。

 ナイフを構えつつ、足元の石を音の方向へとぶん投げる。


「うわっ! ……わ、わっ、たっ!!」


 やや間抜けな声を出しながら、茂みから何かが出てきた。

 出てきたのは人だった。体格と声音からして男っぽい。ずべっと顔から地面にダイブしたな。非常に痛そう。


「おまえは誰……!」


 痛そうに顔を上げた奴を見て、思わず目を丸くした。

 何故なら……。


(み、耳が長い……これは、エルフってヤツか……!?)


 青みがかかった銀髪に赤い瞳。そして褐色の肌。日本人離れしたその容姿に加え、その男の長く尖った耳に目が離せなかった。

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