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ヤンキーガール=鑑定ガール  作者: 黒夢迷宮
第三章
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新たな騒動?

「おーい。大丈夫か?」


 討伐依頼の魔物を探す為に森の方を出歩いていると、どこからか鳴き声が聞こえてきた。

 その方面に向かうと、ふわふわの金毛をした狐が罠にかかっていた。


「これは狩り用の罠だな。見事に足に食い込んでやがる。……よっと」


 唸る狐を押さえながら、食い込んだ罠を解除する。

 トラバサミって結構キツイんだけど、そこはスキルの出番。底上げされた身体能力のお陰で、罠はあっさり開ける事ができた。


「あー……まだ足が痛そうだな。このままじゃ膿んじまうぞ」


 怪我したままだと雑菌が入って、足が腐る可能性がある。

 せっかく助けたんだ。このまま治療しても罰は当たるまい。


「よしよし。今治してやるからな。ああ、コラコラ。逃げるんじゃない」


 じたばたともがく狐を抱き止めながら、怪我した足にポーションを掛ける。

 この世界のポーションは飲むのが普通だが、掛けても効果はあるらしい。ビバ、ご都合主義。


「後は包帯を巻いて――よし。完成」


包帯を巻いて治療完了。これなら数日もあれば回復するはずだ。


「おっと。そろそろ行かないと。じゃあな」


 早く行かないと不死たちが徘徊する時間になっちまう。

 ふわふわの毛並みの頭を一撫でしてから、狐に手を振って立ち去った。


「……………………」


 名残惜しそうな視線を向ける狐。

 ――今思えば、この時だったんだろうな。

 これから起きる厄日が始まったのは。




 依頼の魔物たちを撃破した数日後。ロビンと一緒にギルドに向かった。

 もはやこの辺りでは負け無し。生活費以上の稼ぎが完了しつつあった。


「生活費が結構貯まったな……ニールの所で何か買おうかな」


「だな。……つーか。いい加減武器に任せっきりってのはいけないと思うし……」


 俺の言葉にロビンがため息をつく。

 あれからロビンの様子に変わりはなかった。だけどどこか遠慮がちだった距離感が縮まった。……ような気がする。


「そういえば、今日は北ギルドの方が何やら騒がしかったな。なんかあったか?」


「多分、貴族関係だと思うぞ。中央ギルドはいつも通りだから。討伐や疫病は両ギルドに情報が行くけど、貴族とか王族とかに関する依頼は大半が北ギルドが受け持っているからな」


「あ。そういやそんな事も言ってたっけ」


 ギルドで冒険者登録しに行った日に聞いたな。確か。

 確かに中央の方はいつもと変わらない様子だし、貴族関係となると面倒そうだな。


「そういう事なら関わらないでおくか。……と。ギルドに着いたな」


「ああ。換金しとくか」


 中央ギルドに入り、早速換金を行う事にする。

 やはり中央ギルドはいつもと変わらない様子だった。いつもよりは騒がしい気がするが、賑わってるぐらいにしか感じない。


「すいませーん。換金お願いしまーす」


「はーい。あら、ハイネさんにロビン君。相変わらず仲が良いわねぇ」


 受付のお姉さんに言えば、何故か微笑ましい笑みで迎えられた。

 確かに仲は良好だと思うが……。


「そんなに分かりやすいものなのかね? 俺らって」


「……少なくとも俺はな」


 ロビンが分かりやすい? ……ますます意味わかんない。


「あらあら……あ。そういえば知ってるかしら? 北ギルドにアマツ国の貴族が来てるって事」


「アマツ?」


 なんか和名みたいな国だな。

 首を傾げて聞き返せば、「東にある国だ」とロビンが教えてくれる。


「炎属性を象徴する国で、一番独特の文化があるんだ。そこの貴族様がルナシェリアに来て、北ギルドに依頼しているってところだろ」


「ええ、そうよ」


「へぇ……」


 やっぱり和系の国かもしれない。

 そして北ギルドはやはり貴族関係に巻き込まれていたか。


「ま。どっちにしても俺もロビンも関わらないだろ」


「そうね。貴族関係はほとんど北ギルドの管轄と言ってもいいしね。……はい。これが今回の報酬よ」


「ありがとうございます」


 生活費以上の報酬をいただき、俺とロビンはギルドを後にする。

 これでしばらくは問題ないな。


「じゃあ帰ろうか。……あ。その前にニールの所に行くか。装備品鑑定と顔出しに」


「……値切りは止めろよ?」


 疑わしげにそう言われてしまった。

 やだな。そんなに値切りなんかしないって。……一応はね。




 ニールの装備品の観察。それからラピスともお茶を楽しみ、夜中が来る前に家へと向かった。

 何せ不死系はわんさか出てくるからな。弱いと言えど相手にするのは面倒くさいし。


「川ヤドカリが大漁だし。今夜は網焼きかな」


「取りすぎだ。街の分が無くなるぞ」


 道中魔物を倒すことも忘れない。特に川ヤドカリは珍味としてイケるので必ず倒す。

 ……ただし街の取り分があるので限度があるが。


「……ん? なぁ……家の前に誰かいないか?」


「え? ……あら。ホントだ」


 立ち止まったロビンに言われてみれば、家の前に誰かが立っているのが見えた。

 遠目だからはっきりと見えないが、多分男性だと思う。ただ儀仗服に似た衣服や手に持つ刀剣を見るに、明らかに一般人とは言い難い。


「……貴族?」


「……多分。それに……あの衣装は……」


 男の衣装を見て、ロビンが何か考え込み始める。

 確かにここらでは見慣れない衣装だけど……。


「……! あなたは……!」


 あ。気配を察せられたか、こっちに振り向いてきた。

 男は俺に気づくと、何故か嬉しそうな表情でこっちに近づいてくる。


「……知り合いか?」


「いや……記憶に無いけど……」


 確実に知り合いではない。何せ男はかなりの美少年だった。

 日本人に近い顔立ちで、切れ長の目をさらに細めている。ロビンより多少背は低いが、剣士として鍛えているのはなんとなくわかる。

 こんな美少年、一度見たら俺でも忘れん。


「えっと……俺に用なのか?」


「ええ。北ギルドの方々は知らなかったので、失礼でしたが魔力の反応を追って、こちらにお邪魔させていただく事にしました」

 

 え。北ギルドにいたの? じゃあマジでお貴族様ですか?

 衣装は良い素材だしな。と思っていると、何故か男が俺の前に跪いた。そして俺の右手を両手で握る。


「僕の名は翡翠。ハイネ。友達からで構わないので、僕と結婚して下さい」


 どこか熱に浮かされた顔で、とんでもない事を言いやがった。

 ……色々と段階をすっ飛ばし過ぎだろ。

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