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ヤンキーガール=鑑定ガール  作者: 黒夢迷宮
第二章
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呪縛の破壊

 素早くロビンに耳打ちされた後、安城に槍を思いきりぶん投げる。

 ……まあ予測通り、安城は結界を張っていた。槍は派手に弾かれ、その衝撃で安城は俺の存在に気づく。


「標的、確認……」


「……はっ。完全に操られているじゃねぇの」


『支配』という言葉から、精神を操る事だろうとは予想していた。それは予想通りであり、安城の目に光が無い。


「……さぁ、かかってきな。すぐにテメェを解放してやる」


「標的……戦闘体勢と認識……。敵対行動を確認」


 自動で手元に戻ってきた槍を再度握り、安城と向き直る。

 安城に魔力が宿る。先程爆撃した、強力な炎の魔力。


「――対象の殲滅を開始します」


 無機質な感情と共にそれが放たれた。

 スキルの力でそれをかわし、一気に懐へ潜り込む。


「せいやぁあああっ!!!」


 槍を袈裟切りに降り下ろす。が、結界にいくらかヒビが入った程度であり、破壊までには至らなかった。

 予想はしていたが、思った以上に安城は強化されている。

 武術大会での結界は隙をついて破壊したとは言え、それでも力ずくでやれば壊せない事もなかった。今はレベルも上がっているだろうが、それでもヒビしか入らないとなると……。


「……ちょいと時間がかかるかね……」


 結界をぶっ壊さない事には、コイツを何とかする方法は無い。

 だが他に方法が無い以上、この方法で何とかするしかないとしか言えん。


「対象の殲滅を継続」


「チッ……!」


 再び宿る魔力に、槍で高跳びの要領で背後に回り込む。

 槍は地面から次々と表れる土塊に吹っ飛ばされるが、即座に手元に召喚。再び結界に殴りかかる。

【自動召喚】も強力だが、【トネリコの加護】も素晴らしい効果だ。何せどんな使い方をしても武器が壊れないんだ。

 多少――いや、結構無茶な使い方しても使い続けられるのは素晴らしい。


(現にあんな土塊にぶつかっても全然平気じゃねぇか)


 たかが土塊と思うなかれ。何せ安城の魔法なのだ。

 巨体な岩が連続で出てきては叩きつけてくるから、実際に受けたら確実に死ぬ。

 本来なら鉄辺りならひん曲がるだろうが、最上級付属効果のグングニルならばまったく壊れる事なく扱える。


「結界損傷率、67%……っ! 結界修復……!」


「はっ……! ずいぶん焦ってるんじゃねぇの……!」


 連続で結界のぶち壊しにかかれば、さすがにまずいと判断したらしい。攻撃の手を止めて結界魔法を直す事に専念し始める。

 だけどそれなら、こっちはそれを上回る勢いでぶっ壊しにかかればいい。


「【身体能力強化・真】!」


 自分の身体能力を大幅に上げる無属性の強化魔法。素の状態で結界にダメージを与えられるなら、さらに増幅させればいい。

 今まで使う機会はなかったが、この状況下ならまさにうってつけだった。


「はぁああああああっ!!!」


 修復する片っ端から槍で叩き続ける。先程よりもヒビが大きく入っていく。

 攻撃力、防御力、素早さが強化され、結界へのダメージも大幅に上昇している今を逃す気は無い。


「これで――行っけぇえええええッ!!!」


「くっ……! あ、アアアアアアッ!!!」


 ラッシュをかけ、ヒビを狙って勢い付けていく。

 叩き、斬り、突いていき……ついに結界が大破した。


「手加減はするから恨むなよ。……うりゃ!」


「ガハッ……!?」


 直ぐ様懐に潜り込み、鳩尾に一発叩き込む。

 魔法は凄まじく強い安城だが、物理攻撃には弱いのは変わらない。能力が凄まじく強化されている(手加減はしている)俺の一発で、身体がふらつき始める。


「ロビン! 今だ!」


「ああ!」


 操られていようが、身体が動かなければ魔法も使えないはず。

 体力が低下したのを確認してから、最後の仕上げをするべく、森の中に待機させていたロビンを大声で呼ぶ。


「『意思を縛る枷よ。契約を破棄し、縛られし魂を解放せよ』!」


 ロビンが素早く言葉を紡ぐと、安城の首が赤く光る。

 ぐるりと一週するそれは首輪のようで、胸元に光る紋様は首飾りのようだった。


「これが、【鑑定】に出てた何とかの首飾りか……」


 ロビン曰く、これは呪いの一種で、通常の

魔法では通常の魔法との事。

 聖女や神官と言った上位職業か、エルフ族に伝わる浄化魔法でないと難しいらしい。


「! ロビン!」


 ガラスが飛び散るように赤い紋様が消え去る。

 それと同時にロビンが膝から崩れ落ちた。


「大丈夫……。それより……そいつだけど……これで、なんとかなったはずだ……」


「そう、か……」


 確かに安城の顔色は悪いが、呼吸は安定してるし、特に問題はなさそうだ。

 むしろロビンの方が心配だ。顔色も悪いし息も上がっている。倒れたまま起きる様子が見られない。


(ロビンの事といい、安城の呪いといい……どうなってるんだ……?)


 安城は魔女だ。そうそう簡単に操られるとは思えないし、能力だけならそんじょそこらの奴らより上だろう。

 ……それにロビンの魔法。ロビンに浄化魔法のスキルはなかった気がしたけど……。


「……いや、それは後だ」


 今は帰ってロビンと安城を休ませないといけない。考えるのは後でもいい。

 暗い森の中、気を失った安城と倒れたロビンの頭を撫でながら、今浮かぶ思考を頭の片隅に追いやるのだった。




 side ???


「……さすがだな。ハイネ・クロガネ」


 暗い森の中、闇の中から彼女を見ている男がいた。

 満足そうに笑みを浮かべ、だがロビンを見て、途端に顔を歪める。


「ロビン・シャウド……エルフから『転換』した『人工』ダークエルフか。適性の合わなくなった魔法を無理に使用するとは、無茶苦茶な事を……」


 倒れたロビンから視界を外す。

 首元を押さえ、真上に浮かぶ月を見上げながら、静かにその場を立ち去った。

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