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ヤンキーガール=鑑定ガール  作者: 黒夢迷宮
第二章
22/35

『支配』された魔女

「おい、安城――」


「ハイネ!」


 呼び掛けようとした瞬間、ロビンに思いきり引っ張られた。

 派手に転がりこめば、ほぼ同時に後ろで大爆発が起きる。


「うわっ!! ……げっ」


 爆発に吹っ飛ばされた後、恐る恐る先程いた場所を見れば、その場所に軽いクレーターができていた。


「なんて威力だよ……!?」


「どうなってんだよ……おい、安城! 安城!!」


「……標的、生存。対象、第一抹殺対象と認識……」


 地上にゆっくり降りてきた安城に問いかけるが、肝心の安城の目は虚ろのままだった。

 機械のように感情が消え去った表情。武術大会とは比べ物にならない程の威力。

 ――明らかに彼女に異常が起きている。


「安城……!?」


「ハイネ! 今は逃げるのが先だ! 街から離れるぞ!」


 様子がおかしい安城に駆け寄る寸前、再びロビンに引っ張られ、森の方面へと駆け出す。

 確かに今の安城相手に話が通じるとは思えない。それに街に行ったら逆に被害がひどくなりかねない。


「標的……逃亡……。追撃開始……」


 逃亡する俺とロビンを追いかけてくる安城。

 走るのではなく浮遊魔法を使っている為、向こうの方がわずかにスピードが速い。


「ろ、ロビン! どうする気だ!?」


「とりあえずこっちだ! いいから早く!」


 このままじゃ追い付かれるが、ロビンには考えがあるらしい。

 とりあえずこのまま一緒に森に逃げ込むと、一瞬、辺りの空気が何か変わった気がした。


(いったいなんだ……?)


 走ったままのせいか、違和感の正体が掴めない。

 とはいえ安城が迫っている以上、今は身の安全を確保する事の方が先だった。

 とにかく、ただひたすらにロビンに引っ張られて走っていく。


「はぁ……はぁ……。ここまで離れれば……何とか……」


「ここは……」


 安城が迫っていたので確認できなかったが、結構鬱蒼とした森だった。

 ロビンが暮らしていた森はまだ明るさがあったが、ここはそことは逆。やって来た人間を森の中に飲み込もうとするような感じだ


「……? あれ? 安城……?」


 ふと周りを見渡せば、安城の姿がなくなっていた。

 思わず【観察】を発動させようとすると「待った!」とロビンに止められる。


「ここで【鑑定】はしない方がいい。いくら【真実の瞳】でも危険すぎる」


「……どういう事だ? この森の空気と何か関係あるのか?」


「ああ。ここは……『眩惑の森』と呼ばれている場所だ」


 やっぱりこの森はただの森ではなかった。

 改めて聞けば、ここは闇属性の魔力が濃い場所であり、【探査】や【感知】と言った調査系のスキルを狂わせ、さらには森の中を彷徨うようにさせる魔力があるらしい。


「ああ……だから安城の姿が消えたのか……」


「下手な所に逃げるより、いっそこっちの方が安全なんじゃないか、と思ってな。……ま、時間の問題かもしれないけど」


 ……確かにな。今の俺のレベルでは鑑定できない詳細も多く、鑑定できた能力も一部だけ文字が見えないというバグも起きていた。

 しかも見えた能力・魔法のレベルも規格外ものだ。真っ正面からやり合ったところで返り討ちに遇うのがオチだろうな。


「アイツの事は街道で【鑑定】できたよな? 弱点とかは無いのか?」


「……あるにはあるが、意味がわからない」


「……意味がわからない?」


「首飾りの破壊と書いてあった。けどアイツ、首飾りなんて身につけてない」


 弱点は何とかの首飾りを破壊する事らしいが、さっきも言ったが首飾りなんて身につけていなかった。

 安城の姿は胸元が開いた黒いワンピース。首や鎖骨がはっきり見える服なので、首飾りの類いがあったら見逃すはずが無い。


「状態が『支配』で英霊状態らしいから、操ってる奴が身につけているか……もしくはただ持っているだけなのか……」


 前者なら非常にまずい。どこにいるのか以前に、どこのどいつが犯人なのかすらわからないんだ。

 後者は安城と戦う必要があるので、別の意味で面倒だがな。


「『支配』に英霊状態。それに首飾りの破壊だって? ……まさか……」


 どうするべきか、と悩んでいると、隣のロビンが予想外の反応を示した。

 ……心当たり、あるのか?


「何か当てがあるの?」


「……多分な。ハイネが見た情報と俺の推測が正しければ――首飾りは、多分アイツが持っている」


「持ってるだって? なぜそれが言い切れるんだ」


 多分、と言っている割には、ほとんど確信に近い言い方をしている。俺の知らない何かを知っているらしい。

 もう少し詳しい話を聞こうとした瞬間、だが森に響いた轟音に、俺もロビンも辺りを見回した。


「なんだよ、この轟音!」


「……! アイツ……手当たり次第森に魔法攻撃をしかけてやがる!」


 ロビンの見ている方向を見れば、安城が辺りに魔法を連発しており、魔法を受けた木が次々と吹っ飛んでいる。

 邪魔な木を退かして炙り出すのか。それとも森ごと薙ぎ倒す気か。


「どっちにしろ最悪……!」


 このままでは見つかるのも時間の問題だ。

 どうするべきか……。と悩んだその時、ロビンに肩を掴まれた。


「ロビン?」


「一つだけ、何とかする方法がある」


「! ホントか!?」


「……かなり危険な賭けだ。特にハイネがな」


 ロビンはまっすぐ俺を見て、歯切れ悪く、だけどまっすぐ俺を見て言う。


「……このままでも危険だ。だったらやるしかねぇだろ」


 同じ危険だと言うなら、徹底的に抗ってやる。

 決意を込めて頷けば、ロビンも覚悟を決めたか、大きく頷き返してくれた。

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