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ヤンキーガール=鑑定ガール  作者: 黒夢迷宮
第二章
20/35

後夜祭……とギルドで事件。

 武術大会は俺の優勝で終わった。

 表彰式が終わった時はすでに夜となっており、街は後夜祭に突入している。


「あ。こっからは普通に飲んで食べたり、って感じ?」


「まあな。大半が日中に商品を見られているからな。夜はその分派手に飲み食いしたい奴が多いんだ」


 昼間はいつも以上に働いていたからな。みんなも楽しみたいよな。

 辺りを眺めれば、周りの住人の騒いだり笑ってる姿が目に映る。

 地球でもあったな。こういった光景。


「ニールも腕前が認められたようだし、ラピスの機嫌もすごく上機嫌だったな」


「試合中。特に最終戦では凄かったぞ。……相手への野次に」


「……だろうな」


 あいつは気性の荒い猫みたいな性格だからな。気に入らない相手なら容赦がない、というか……。


「気持ちはわかるけどな。……とりあえずロビン。俺、あっちの屋台が行きたいんだけど。いいか?」


「わかった。わかったから引っ張るな!」


 グイグイとロビンの片腕を引っ張りながら、気になる屋台に片っ端から突撃していく。

 最終戦は結構厳しかったからな。美味しいものを食べて英気を養いたい。

 屋台から焼魚の串焼きを貰いながらそう言えば、ロビンが小さくこう言った。


「……おまえも大概猫みたいだな」




 深夜頃には祭りも終わるらしく、辺りの喧騒が徐々に鳴りを潜めていった。

 まあ子供は寝る時間だし、夜更かしも良くないからな。


「……ん? なぁ。なんかギルドが騒がしくないか?」


「え?」


 ロビンに言われてみれば、いつもお世話になっている中央ギルドに慌ただしく人が出入りしている。

 ギルドは基本的に夜間も開いている。だが日中と比べればかなり静かだ。……それが慌ただしい。という事は。


「ひょっとして、かなり緊急性高い?」


「……多分」


 俺の言葉に、ロビンも神妙な顔で頷く。

 大抵生息地以外の魔物が表れたとか、疫病が発生したため、薬の材料を取ってこいとか。とにかく非常にヤバい事態にはギルドは日中夜間問わず慌ただしくなるらしい。


「……どうする? 行ってみる?」


「行かなきゃ状況が掴めないからな」


 ロビンも状況は知りたいらしい。ならば決定だな。

 ギルドに向かい、入口近くにいた男に話しかける。鮨詰め状態のギルドに割り込む勇気は無い。


「すいません。いったい何があったんですか?」


「あん? 街の入り口で――って、おまえは! 武術大会で優勝した嬢ちゃんじゃねーか!!」


 話しかけられた男が大声でそう言った瞬間、周りが一斉に俺に視線を向けてきた。

 ……うわぁ。コレはコレで嫌な予感がする。


「あのー……すいません。いったい何があったんです?」


「アタシから説明するよ」


 ギルドの中から別の声が聞こえた。

 その声と同時に人混みが二つに割れ、奥から女性が表れる。


「えーと……どちら様です?」


「ああ、アンタと会うのは初めてだね。アタシはハース。この中央ギルドのギルドマスターをやっているよ」


「へぇ、ギルドマスターですか。……って、ギルマス!!?」


 嘘だろ!? どう見てもまだ20代後半だぞ! いや頬の傷とか鍛え上げられた身体とかは並の奴より強そうだけど!


「よくそう言われるが事実だよ。……ところで、確かハイネだったね。そこにいるロビンもあわせて、アンタらに頼みたい事がある」


「え……俺も?」


「……それは、緊急の依頼という事です?」


 ロビンも込みで俺に、という事は相当厄介な事になっている可能性が高い。

 そう感じて尋ねれば「察しがいいね」とハースさんがニヤリと笑う。


「街の南口から少し行った先で襲撃があった。魔法による攻撃という観点から、恐らく相手は魔法使いだ」


「恐らく……? 姿を見ていないんですか?」


 曖昧な言い方に疑問を感じて尋ねれば、「逃げるのに精一杯なのさ」とため息をついてから周りを見ながら続ける。


「この周りにいる奴らが全員ソイツにやられた。深夜という事もあるが、それでも姿を捉える前に威力の高い魔法を大量に連発されてね。怪我を受ける前に退散してきたってわけさ。だから魔法使い、という事はわかるが、敵が単体なのか何人なのかもわからない」


 姿を捉える前に威力の高い魔法を連発……ねぇ……。

 普通に考えるなら何人もの強力な魔法使いがいた。という事になる。

 ……ただ、いろいろ何かが引っ掛かるような気がするのはなぜだろう?


「それで俺に、ですか。……ただ、大会に優勝したとは言え、俺はまだGランクなんですけど。そんな俺が出ていいものですかね?」


「普通なら無いさ。だけどアンタは北ギルドに所属しているDランクの魔女、アカネ・アンジョウをサシの勝負で勝ち抜いた。Gランクで収まる奴じゃない」


 安城は北ギルドでDランクなのか。

 ……つまり、大会で優勝した時点で俺はハースさんに目をつけられた、と。


「……報酬は?」


「Fランクに昇格。それから金はDランク級の金額を用意。後、中央ギルドが優遇しているお店にアンタも優遇させるよ」


「よし、引き受けましょう」


 よし。その報酬ならかなり稼げる。危険な依頼ならそれ相応の報酬がほしいからな。

 そんだけ危ない依頼なら報酬はかなりほしい。


「ハイネが行くならしかたないか……。ギルマス。俺も行きます」


 良かった。ロビンも来てくれるのか。確かに俺一人では魔法使いの相手はキツいからな。


「……おまえに任せたら、下手したら魔法使いの連中が病院送りにされかねないからな」


「それはどういう意味かな?」


 攻撃力くらい、自分でセーブするよ。……多分。

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