確認したら非戦闘職
俺の名前は黒鐘灰音。日本生まれ、日本時々アメリカで育った、一応普通の中学生である。
……なぜ一応が付くのか? 親父や大伯父がアメリカで警察官しており、その影響化なのか、荒事には物凄く慣れてしまい、男のような口調と性格になってしまったからだ。日本と比べ、いろいろ物騒だからな。アメリカは。
基本的な武装や武術等も、親父や大伯父が面白がっていろいろ教えてきたから何でもできる。小学生の卒業式にバレてしまい、母親が二人をシバいて止めたけどね。
……そんな俺は今、修学旅行の飛行機事故に巻き込まれたと思いきや、何故か他の同級生たちと一緒に異世界召喚に巻き込まれた。
即座に把握できたのは別のクラスにいるオタクな友人からそういう小説なんか読まされたから。ありがとう、友よ。今度あったら一冊くらいなら奢ってやるわ。
……話を戻そう。玉座の間に呼び出された俺らは、そこで姫から異世界から召喚されたという事実を聞かされた。
理由は魔王討伐……ではなく、この世界を支える世界樹とやらが不調になっており、それをなんとかしてほしい。というものだ。
「アバウト過ぎるにも程があるだろ……!」
一部は喜んで立候補しているが、俺個人としてはいきなり呼び出した挙げ句、理由もわからない上でなんとかしろ。だなんて無茶ぶりにも程がある。率直に言えば引きこもりたい。
しかし、それは許されなかった。半数以上が乗り気になってしまい、乗り気でない者もとりあえずスキル継承の儀式とやらを受け、何かしらの職業につくことになったのだ。
旅に出なくてもいいが、その代わり街か城で仕事しろ、という事だろう。
だが勝手に呼び出したのはそちらだ。向こうは協力してくれるなら色々便宜は謀ると言ったが、要は協力しないならどうなろうと構わない、という事だろう。勝手過ぎる言い分に、俺自身はやる気なんて物は忘却の彼方に置き去りにした。
(スキルとやらがわかったらとっとと隠れるか……)
幸い親父や大伯父と一緒にサバイバル訓練なんかしたから、野宿や狩猟に対するノウハウはある。
それを駆使すれば、隠居生活も可能なはずだ。
「……では、次の方。こちらへ」
同級生が順番に部屋に入るのを眺めていたら、とうとう俺の番になった。
妙に受かれている女子とすれ違いながら、継承の間と言う、スキルを授ける部屋に入る。
「こちらの水晶玉に触れてください。光が消えた後、あなたのステータスカードが作成されます」
「……それは身分証明書みたいなものですか?」
「はい。ギルドの登録や移住する際に必要になりますので」
「はぁ……」
神官のような人(僧侶か……?)の説明を聞きながら、ひそかにため息をつく。
面倒な……いや、作られる事自体は簡単だからまだ良い方か?
そんな事を考えながら、言われた通り水晶玉に触れると強い光を発した。って、強すぎだろ! 目が開けられん!
「これは……かなり強力な能力の持ち主ではありませんか!!」
強すぎる光とともに、どこか興奮したように神官が叫んだ。
光が強ければ才能とか能力が高いって事? そういう事は始めに言えよ!
心の中で悪態を付きながら、光が次第に収まるのを薄目で確認すると、神官が食い入るように宙に現れた青いファイルのような何か(多分これがステータスカードだと思う)を見ているのが見えた。
「……あのう、すいません。スキル継承とやらはこれで終わりですか?」
「……………………」
「……? もしもし?」
「そんな……勇者や聖女より、ずっと強い光だったのに……」
声をかけるが、何故か口をあんぐりと開けて硬直している神官。視線が俺のステータスカードに食いついたまま離れていない。
勇者や聖女なんているのか……そんな事を考えながらもう一度声をかけようとすれば、神官が膝から崩れ落ちた。
「なぜ……職業が『非戦闘職』の『鑑定士』なんですか……!!」
「……え?」
神官が崩れ落ちた理由は、俺の職業が非戦闘職だったかららしい。