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ヤンキーガール=鑑定ガール  作者: 黒夢迷宮
第二章
19/35

武術大会最終戦

『――勝者! ハイネ・クロガネ!』


 第三試合、第四試合、第五試合もほぼ一撃で完封していった。

【武術の神域】と【瞬間最大攻撃力】。さらにグングニルのコンボにより、一撃で次々と吹っ飛ばしていく。

 隙を突いて攻撃をしてくる奴もいたが、そこは【絶対危機察知能力】の出番。ナイスなタイミングで防ぎ、逆に手痛いカウンターをお返しする。おかげさまでノーダメージだった。

 ――ま。それはアイツも一緒だが。


『勝者! アカネ・アンジョウ!』


 安城もノーダメージだった。もっとも、こちらは魔法の強さで勝ち抜いたパワーファイターだが。

『アイスウォール』で倒せれば良し。そうでないなら囲んで強力な魔法を一発。バカ高い魔力を利用してやった力業だ。


「最終戦は俺と安城の一騎打ち、か」


 俺のスキルが規格外過ぎた事もあるが、それでも警戒が馬鹿馬鹿しくなるほど他の参加者は相手にならなかった。

 同じ異世界人の――安城の魔法の方が恐ろしい。


「……気を引き締めていかねぇとな」


 これまでの戦いとは格が違う。一瞬の油断で敗北するだろう戦いに、自然とグングニルを握り締める手が強くなった。




『――お待たせしました! いよいよ! 武術大会最終戦が行われます!!』


 司会者の声に沸き上がる歓声。

 いよいよ起こる試合に、嫌でも緊張が高くなっていく。


『15歳の鑑定士でありながら、相手を瞬殺して勝ち進めてきた槍使いの少女! ハイネ・クロガネ!!』


 目の前の扉が開かれ前に進んでいけば、歓声が辺りに響き渡る。


『対するは! 同じく15歳でありながら、上位魔法使い職業、魔女である少女! アカネ・アンジョウ!』


 遠くにある扉が開き、その奥から余裕綽々と言った表情の安城が出てくる。


「はぁい、黒鐘さん。……まさか、あなたも大会に出ているなんて思わなかったわ」


「あの時言わなかったからな」


「相変わらずつれないわね。……一匹狼のくせに、なんでこんな人が人気あったんだろう? ――――ムカつく……」


 距離があるから途中から聞こえなかったが、一瞬だけ表情が歪んだのが見えた。

 そんなに俺が嫌いか。まあ気にしないけど。


『それでは両者……前へ』


 グングニルを構える俺と宝石でできた杖を出す安城。

 周りの観客も、期待に満ちた目で注目してくる。


『武術大会最終戦……始め!』


「『アイスウォール』!!」


 開始宣言された瞬間、足元が急速に冷たくなった。

【絶対危機察知能力】の効果か、瞬発的に後方に飛び退く。


「『アイスウォール』! 『アイスウォール』!」


 避けた先や進行方向に氷の壁を連続で出現させる。

 相手の嫌がる事をするのが勝負やゲームに勝つコツとはよく言うが……なるほど。実体験すると嫌でも身に染みていく。


「どこまでもちょこまかと……! 『アイスウォール』!!」


「チッ……!」


 ……とはいえ、このままだと押しきられて俺の方が不利になる。

 何せ安城の魔力に底が見えないんだ。スキルか召喚特典かはわからないが、遠距離で一撃即死級の攻撃を連発されるのはキツい。


(スタミナ的に不安があるが致し方ない、か)


 チラッと安城を見れば、彼女は防御魔法を周りに張っている。

 ぶっ壊すなら近距離で力強く叩くのがよさそうだ。

 その為には――。


「……せいっ!」


 槍を構え直し、安城に思いきり投げつける。

 ハルバードだから重いが、投げられない事も無い。


「きゃあっ!? ――な~んてね♪」


 槍は結界に弾かれ、上空に弾き飛ばされた。

 再び余裕綽々と言った安城は、再度杖をこちらに向けてくる。


「私、結界魔法も使えるの。黒鐘さんの攻撃なんて通用しないんだから」


 ――さすが魔女。グングニルっつっても俺の遠距離投槍では破壊は無理か。

 冷静に安城の結界を見つめていると、不意に安城の顔がまた歪み出す。


「ちょっと……武器が吹っ飛んだのに、なんでそんなに冷静なのよ」


「さぁね。教えてやる義理は無いよ」


 実際吹っ飛んだ所で問題は無い。何せアレには【自動召喚】の付属効果があるんだ。その気になれば、言葉通りすぐにでも手元に戻ってくる。

 それを安城に教える気はないけど。手の内を晒す程、阿呆な事は無い。


「……っ! 何よ……何よ! 一々苛立つのよ、アンタは昔っから!!」


 だけど何が気に入らなかったか、安城の怒りが爆発しやがった。


「昔からって……俺、おまえと接点なかったと思うけど」


「……っ。ムカつく、ムカつくムカつくムカつく!!! 興味ないのに、私の邪魔ばかり!!」


 先程と違って、氷の矢を俺に向けて乱発してくる。もちろん避けるが、さっきと違って余裕で避けられる。

 ……なんであんなに怒ってるんだ。というか、邪魔っていったい何?


(……いや。それは後で聞くか)


 今はそれどころじゃない。だって『攻撃が終わってない』んだからな。


「この――きゃあぁあああっ!!?」


 ナイスタイミング。結界で上空に飛んでいた槍が安城の横に落ちてきた。

 さすが【必中投槍】の効果を持つ槍。例え宙に飛ばされようが、何の因果なのか、必ず攻撃が決まる。どんな形になってもだ。

 現に飛ばされた槍は直立不動、まっすぐ地面に落ちて爆撃を仕掛けてくれた。もちろん安城に当てる攻撃じゃない。結界のある状態ではダメージなんて与えられないし。

 狙ったのは安城から離れた地面。そこに落ちた槍は派手な土煙を起こし、辺りがそれで覆われて見えなくなる。


「ゲホッ、ゲホッ……! な、何すん――」


「そこだッ!!」


 流石にダメージのない土煙では結界も効果が無いらしい。

 土煙でむせ込み、集中力が途切れた所を瞬時に槍を呼び戻し、彼女の杖を叩き壊す。


「なっ……!!」


「はーい、おしまい」


 杖を壊されて動揺している所に槍を向ければ、安城は顔をひきつらせながら穂先を見つめる。


『そこまで! 武術大会最終戦の勝者は――ハイネ・クロガネ!!』


 審判の宣言後、数秒の沈黙が起き、だけど次の瞬間、かつてない程、大きな歓声と拍手が沸き起こった。


「な……嘘よ……」


「はぁ……何とかなったか……」


 槍を肩に掛けながら息を整える。

 正直厳しいものがあった。アレだけ高い魔力と威力を連発されるのは接近戦主体の俺にはいろいろ足りないものが多すぎる。

 コレは今後の課題かな。


「ハイネ!」


「ハイネさん!」


「ハイネー!」


 そんな時だ。後ろから聞こえてきた声に振り向けば、ロビン、ニールとラピスの喜んでいる顔が目に写る。


「ありがとう、ハイネ! コレでニールの腕が認められるよー!」


「こ、こんなに進めるなんて……! ハイネさん、すごく強いんですね!!」


 ラピスとニールがすごいハイテンションだ。片方は親友の出世に、片方は俺のレベルに驚いている。


「無茶しやがって……怪我したらどうする気だよ」


「流石に最後は厳しかったがな」


「本当だよ……無事だからいいけど」


 ロビンも表情が和らいでいる。小言も付いているが、それもまたロビンらしい。


「嬢ちゃん、やるなあ!!」


「なかなか良い戦いだぞ!」


「鑑定士なのにスゲェな!」


 周りの観客も俺に声をかけてくる。最終戦が如何に盛り上がったのかよくわかるわ。


「……ま。今後の事はまた後で考えるか」


 今は勝利の余韻に浸りましょうか。

 司会者の声と観客の声に包まれながら、この空気を楽しもうと気持ちを切り替えるのだった。






 side ???


「…………ハイネ・クロガネ…………」


 闘技場の歓声の中、ロビンとともに笑うハイネを見つめる一人の男。

 彼はハイネと、ハイネの持つ槍を見つめている。


「彼女こそが……私の探していた存在かもしれんな……」


 男は彼女を愛しそうに見つめる。そして視線をずらし、闘技場の真ん中へ。


「確かめるか……あの『駒』を使って……」


 ハイネを憎らしげに睨むアカネを見ながら、楽しそうにその口を歪ませるのだった。

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