武術大会開催!
「ふふーん。驚いて声も出ない感じ?」
確かに驚いている。なんで同じクラスの人間が、魔女となって現れるんだよ。
「……まあな。他の皆は、まだ城にいるのか?」
「ええ。勇者になった高嶺君や他一部を除いて、全員がまだ城にいるわよ」
「勇者……ねぇ……」
安城の言葉を聞き、ため息が出そうになるがぐっと堪える。
……予想より早く外に出てきたものだ。能力がどれ程の物かは知らないが、戦闘経験の無い人間を、こうもあっさり送り出すとは……。やっぱりルナシェリアは信用できん。
「私も「魔女の実力がすごい!」って言われてね! 高嶺君たちと一緒に外へ冒険する事になったのよ! どう? すごいでしょ?」
「……そうだな」
確かにアレだけの威力の魔法を、わずか数日で使えるとは不思議だわ。それを所構わず放つのは正直どうかと思うが。
ひそかに呆れていると、それを感じたのか、安城の表情にムッと苛立ちが現れる。
「……ふん。まあいいわよ。どうせお城から追い出された黒鐘さんは大したこと無いんだし。私は武術大会で優勝して、私がスゴい魔女だって知らしめなきゃいけないんだから」
げっ。安城も出るのかよ……。
正直戦いたくない……。勝っても負けても面倒じゃないか。負ける気も無いけど。
「じゃあね、黒鐘さん。せいぜいモブらしく、そこら辺で過ごしててね~」
手をひらひらさせながら、安城はさっきの野郎どもを引き連れて去っていく。
腹立つ上にムカつくな……。あまり話したことはなかったが、安城ってあんなキャラだったっけ?
「な……何なのよ、アレ!! スッゴい腹立つ~!!」
俺に掴まれていたラピスが、その状態のまま怒鳴り出した。両手でバシバシと俺の手を叩く。……いや、痛くないけどね。
「……思った以上にひどいな。ハイネはあんなのと一緒に過ごしていたのか?」
ニールの傍にいたロビンも、立ち去った安城の背中を見ながら顔を歪めている。
ロビンも彼女の態度はお気に召さなかったらしい。
「俺はアイツとはあまり接していないんだ。仲が良い奴は別の所にいたし。……んな事より。魔女の安城も武術大会に出るみたいだけど……」
「……多分。装飾品とかで出ると思います。魔法使いの方も、装備や実力次第では出ることができますから」
ふむ。確かに装飾品や防具も装備品だし、安城もかなり強力な魔法を使っていた。能力的にも申し分ないんだろう。
「この武術大会が単純な力比べだけでない事はよくわかった。……だけどさ。要はコレを使って勝ち進めばいいんだろ?」
だが、それでも俺の目的は変わらない。この槍を手に入れる。その為に勝つ。
そこは何一つ変わらない。
「そうよ、ハイネ!! ソイツであの魔女をボッコボコにやっちゃって!!」
「ラピス……。……ハイネさん。無理はしないでくださいね?」
「……無茶だけはすんなよ」
ラピスとニール。そしてロビンが、思い思いに俺に話しかけてくる。
これだけ仲間がいるんだ。安城が相手でも負ける訳にはいかない。
「やってやるぜ!」
三人の激励を受け、再び決意を固める俺だった。
『さあ、お待たせしました! 技巧祭・武術大会! 開戦です!』
決闘場に響く声。それに呼応するように、割れんばかりの歓声が上がった。
『職人たちが魂込めて作った装備品の数々! そしてそれを扱う冒険者たちの強さ! この大会でとくとご覧ください!!』
再び上がる歓声。そして会場のあちこちから立ち上る闘気。
全員やる気満々だ。……安城は舐めきっているのか、鼻歌を歌ってたけど。
『では、第一回戦! ペレヌス・ファウスト対ハイネ・クロガネ!』
おっと。一発目から俺ですか。
相手は……斧を持った筋肉ゴリラみたいな戦士だ。
(さーてと。……ド派手に行きますか)
ま。相手が誰であろうと、負ける気はないけどな。
満身せず、だけど全力で挑むといたしますか!