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ヤンキーガール=鑑定ガール  作者: 黒夢迷宮
第二章
15/35

製作者に会いに行こう

 妖精の案内の元、俺とロビンは王都の街外れにある一つの家にやって来た。

 王都の北側には工房が多く、武器や防具の職人が多く住んでいるらしい。


「ここがおまえの知り合いの家か」


「うん。……ニール! アタシ――ラピスだよ! 入るからね!」


 そう言って妖精……いや、ラピスは家の中に入っていった。窓から。


「……アレ? これ、不法侵入じゃね?」


「妖精がドアを開けられる訳無いだろ」


 ロビンの言葉に納得した。確かにあのサイズで普通のドアは開けられないわな。

 一人頷いていると、目の前のドアがガチャリと音を立てた。


「ん? 何の音……」


「鍵が空いたのかな。お邪魔しまーす」


 確かめるべく、ドアノブを捻って動かせば、予想通り。何の障害もなく開けることができた。


「早い! せめてノックしろ!」


「ちょっと! アタシを潰さないでよ!」


「ああ、すまん。てっきり避けてるものかと……」


 中に入れば後ろと斜め横から抗議の声が上がった。後ろはロビン。斜め横はラピスだな。と考え、視線を後ろに向けた時だ。


「ぴゃ……っ」


 奥のドアから、眼鏡をかけた小さな男の子が顔を覗かせていたのに気づいた。

 男の子はすぐに奥に逃げたが、すぐに「ニール!」とラピスも追っていく。


「……まさか。アレがこの槍の製作者?」


「多分ハーフリング族だな。人間の子供くらいの身長だが、手先が器用な種族だ」


 ファンタジーならではの異種族か。ただ、イメージ的に武器を作る=ドワーフが拭えなかったので少々驚いたが。


「……とりあえず交渉するか。相手は子供っぽいし、対応次第で半額から4分の3にしようっと」


「……値引きは確定なのか」


 当たり前じゃないか。金は大事だよ?

 呆れたようなロビンの目を背中に受けながら、俺も奥の部屋に入る。


「もうニール! いい加減出てきなさいよ!」


「や、やだよぅ! なんでボクが……!」


 奥の部屋は工房で、家事道具が一通り揃っていた。

 さらに部屋の隅。仮眠用か来客用かわからんがソファが置かれてあり、その上でニールと呼ばれた子供が毛布にを被りながら丸まっており、その毛布を取ろうとラピスが引っ張っていた。

 兄妹みたいな二人だな。こいつら。


「おーい。この槍の製作者だろ? 買いたいんだけど。7割くらいで」


「ぴゃあぁあああっ!!? ……あ、アレ?」


 話しながら毛布を剥ぎ取り、森で拾った槍を相手の目の前まで持っていった。

 ニールは泣きそうな声で驚いて、だけど目の前の槍に気づくと、何度も瞬きを繰り返す。


「ぼ、ボクの槍……! 飛ばされちゃったはずなのに、なんで……」


「アタシが探しにいったら、この二人が見つけたんだ。……で。この人間の子が槍を買いたいって」


「えっ?」


 眼鏡の奥の瞳が丸くなった。ラピス、槍、俺と忙しなく移る。


「俺は武術の心得があるからある程度はわかる。このハルバード。中々扱いやすいし、強度も良い。俺としてはぜひ欲しい」


 実際森からここに来るまでの間に試しに使ってみたが、全体的のスペックがとても高性能だった。

 重さ・強度・威力。どれもすべて高水準だった。これを吹っ飛ばした魔女はバカだと思いながら感謝した程だ。おかげで俺がこれの存在に気づいたんだから。


「もちろんお金は出すぞ。足りなければギルドで稼いでくる。という訳で売ってくれ。7割で」


「値引きは諦めないのな!!」


「鬼神ー! 魔王ー!!」


 お黙り、ロビン君。さっきも言ったが値引きは確定なんだよ。主にそこの妖精のせいで。

 てか、鬼神とか魔王とかランクアップにしたんだけど。


「――お金はいらない。代わりに依頼を受けてくれたらいいよ」


 少し悩んだ後、ニールが出した答えは予想外のものだった。

 金の代わりに依頼だって? 何をさせる気だ?


「い、一週間後、王都の装備職人が競い合うお祭りがあって……実際に冒険者に使っていただく武術大会も開かれてるんです。だから、そこにお姉さんが出てほしい。……です」


「……わかった。『技巧祭』の事か」


「『技巧祭』?」


 察しがついたか、ロビンがつぶやいた。

 名前からして芸術関係の祭りらしいが、一体どういう祭りなんだ?

 首を傾げた俺の様子を察したか、ロビンが説明してくれた。


「家事や装飾関係のスキルを持った職人が中心になる祭りだ。作った装備を実際に見てもらい、その腕を振る舞う祭りなんだ。腕次第では無名の新人でも名が売れる可能性のあるから、一流の職人を目指すなら絶対に出たい大会だ」


「装備を見てもらうには二つあるの。一つはお店に直接出す。もう一つは冒険者に依頼して実際に装備してもらい、武術の大会でそれを披露する。ニールはお店を持っていないし見習いだから、大会でそれを披露しようとギルドに依頼したんだけど……」


「……例の魔女たちにぶち当たった。って訳か」


 ラピスの補足からの苦い顔。これで魔女とやらに遭遇した理由もわかった。

 その魔女は強い武器を探す。もしくは報酬に惹かれてニールに会い、期待外れだったから吹っ飛ばした。って辺りだろうな。


「……その槍。この前洞窟から見つけた壊れた槍を、ボクが新しく打ち直したんです。ボク、【効果判別】という鑑定スキルを持ってて、見てみたら素材になった槍は元が良い槍だったのか、かなり特殊な効果が付いていたのを見たから。確かに使いにくいんですけど……でも! 使う人は選びますが、ちゃんと強いんです!」


「ほう……」


 ニールも【鑑定】が使えるんだ。俺とは違うタイプだが。とにかくそれもあって槍を新しく打ち直したのか。

 ……そういやラピスも特殊なスキルがあるって言ってたな。


「俺、鑑定士だから【鑑定】が使えるんだ。もしよければ【鑑定】してもいいか?」


「え? は、はい!」


「え!? アンタ、戦士じゃなくて鑑定士だったの!?」


 めちゃくちゃ驚いているラピス。そんなに戦う鑑定士って意外なのか……?

 一種のカルチャーショックを受けながら、【真実の瞳】を発動させる。




【偽装名称:ハルバード:武器】

【正式名称:新生グングニル:武器】

 斧と槍の特徴を併せ持つ槍。重量があるが、様々な攻撃が可能。

(正式詳細:長い時により、効力を失っていた軍神オーディンの槍。新たに鍛え直された事により、人間にも装備可能。ただしオーディンに選ばれた者だけが正しい効果を認識・扱う事ができる)

・攻撃力:G(+0)

・魔法攻撃力:G(+0)

・付属効果

【偽装名称:自身同調】

【正式名称:神槍同調】

 魔力を槍に込めている間のみ、自分の攻撃力を槍に反映させる。

(正式効果:装備中、自分の攻撃力が武器の攻撃力となる最上級付属効果)

【偽装名称:命中補正】

【正式名称:必中投槍】

 投擲攻撃した際、命中補正がかかる。

(正式効果:投擲攻撃した際、必ず相手に命中する最上級付属効果)

【偽装名称:装備召喚】

【正式名称:自動召喚】

 投擲攻撃後、有効範囲内であれば、装備者の手元に召喚する。

(正式効果:投擲攻撃後、装備者の元に自動的に召喚される最上級付属効果)

【偽装名称:強度増加】

【正式名称:トネリコの加護】

 武器の強度を強化する付属効果。

(正式名称:トネリコの木で作られた事により得た加護。武器を破壊する事が不可能。最上級付属効果)




「――え」


 ……嘘だろ。また最上級という言葉が見えるんだけど。

 というかグングニルって……今度は伝説の武器ですか!?


「すごいな、コレ。……色んな意味で」


「そう思いますか!? ありがとうございます!」


 嬉しそうな表情でぺこりとお辞儀するニール。

 ……確かにコレは確保すべきだな。色んな意味で。

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