『今』が正しいならそれでいい
「おい。今度はメイスでシバいてやろうか?」
「ギャーーーッ!!! なんでそんなに怒るのーーーっ!!?」
テメェがいらん事言うからだろうが!
ロビンがまた固まったわ!!
「ロビンはダークエルフだろ。それ以外になんかあんのかよ」
「あるって言うか~……お姉さん、エルフやダークエルフの事知らないの?」
「は?」
「……知らないよ。俺は教えていないんだから」
「ふーん。ま、それもそっかぁ。教えられる訳無いもんねぇ」
俺をそっちのけにして意味深な会話をする二人。
エルフの事を知らない? それは確かに事実だが、それとロビンと何の関係があるんだよ。
「……よくわからんけどさ。ロビンはただのダークエルフじゃない。それに間違いは無いって事か?」
「――そう、なる」
「はぁ……」
苦々しく答えたロビン。
……まあ、コレは予想済みだが。
「……わかった。ロビンにとっては嫌な何かがあるって事はよくわかった。……だから、何?」
「「……え?」」
ため息を付きながら言えば、またもや二人揃って声を出した。今度は同じ表情。
「ロビンが話したいならそれでいいし、話すのが嫌ならそれで構わない。……というか。ロビンが隠しているのは自分が他のダークエルフとは違うって事だろ? なら俺的に問題無い。だから何だって事」
「ええええええ……っ」
妖精が困惑してぐらぐらとよろけた。ロビンも目を見開いて俺を見ている。
「ロビンの抱えているものをすべて理解できるだなんて言わねえよ。……だからと言って、それでロビンと離れるのも嫌だ」
「いやいや。だからって言って、こんな得体のしれないのを傍に置くとか……お姉さん本気?」
「本気も本気。大真面目だけど?」
バッサリ切り捨ててやれば、今度は妖精が目を白黒させた。
一方のロビンは固まったまま動かない。
……そんなに衝撃的か?
「あいにく俺はこの世界の常識を知らない。ダークエルフとかもよく知らない。……だからさ、ロビン。俺は特に気にしないし、無理に聞き出そうともしないからそんなに身構えないでくれ」
「……本気、か? 聞かないって……」
「おまえの事情はわからないが、べつにおまえが犯罪を犯した訳じゃないだろう。だったらいいじゃないか」
少なくとも、俺が『今まで』見てきたロビンは相手をどうこうしようというのはしなかった。
細かい事は気にしないし、気にしてはいけない。
「……変な奴」
ボソッと、だけどどこか嬉しそうに呟いたロビン。
妖精は納得いかないのか、未だに唸っている。
……ま。それはそれで構わないのでいいとして。
「俺の考えは以上だ。――さあ。行こうか」
「へ?」
元々の話を忘れたのか、それともロビンの事でいっぱいだったのか。
再度俺に掴まれた妖精が間抜けな声を上げた。
「この槍を届けるんだろ? そいつのところまで案内しろ。そして俺に半額で売るように交渉してもらう」
「ちょっと! 半額で買うなんて聞いてないよ!?」
「本来なら二倍の値段出しても買うところだったが、テメェの態度で気が変わった。1割で無いだけ有難いと思えや」
「鬼ー! 悪魔ー!!」
「さすがに横暴過ぎる……」
べしべしと叩く妖精だが、片手で掴める程の大きさしかないので痛くも痒くもない。
俺に片手を引っ張られながら歩くロビンも何とも言えない顔でため息をつく。
なんとでも言え。この世は常に弱肉強食。隙を見せたらアウトなんだ。