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ヤンキーガール=鑑定ガール  作者: 黒夢迷宮
第二章
11/35

俺の本性と真価がスキルになったらしい

「次に行うのは採取の試験だ」


 奥から現れた人がいくつか用意した細長いテーブルの上に草を順番に置いていった。

 ……採取の試験じゃないのか?


「今回はこちらで素材を用意した。各自、テーブルの上の薬草の名を答えていただきたい。尚、図鑑を使っても構わないが、使わずに正解すれば高く得点を評価しよう」


 なるほど。採取の試験は素材の見極めか。

 確かに地球のハーブも似たようなのがあるしな。冒険者ともなれば、その辺の目利きも必要だろう。


「それと……鑑定士ハイネ。君は【鑑定】が使えるので、素材の見極めと同時に素材の詳細。並びにどの薬草が効果が高いのかを答えてもらう」


 俺だけ更に難易度が上がった。

【鑑定】持ちだとあっさりバレるからだろうな。プラス知識も答えてもらうってか。


「それでは始め!」


 開始の宣言に、受講者たちは薬草を一瞥した後、ある者は図鑑を取りに。またある者はさらに注意深く見ていた。

 俺は指定されたテーブルに近づき、テーブルに並べられた5種類の薬草に【鑑定】をかける。




【アースヒール草:素材】

 土属性の魔力が強い薬草。主に森林や草原に生息する。

・調合

 液体=回復薬

 火薬素材=爆弾。

 効果値【G】


【ポイゾナス草:素材】

 解毒効果のある薬草。森林や草原に生息する。

・調合

 液体=回復薬。

 効果値【G】


【バイパー草:素材】

 蛇の毒と酷似した成分を持つ毒草。森林に生息している。ポイゾナス草と酷似している。

・調合

 火薬素材=爆弾。

 効果値【F】

 付加される状態異常【毒】


【雑草:その他】

 生命力の強い、ただの雑草。


【エアーヒール草:素材】

 風属性の魔力が強い薬草。崖や高原に生息する。

・調合

 液体=回復薬。

 火薬素材=爆弾。

 効果値【E】




 素材の鑑定もアップグレードされていた。さらに詳しい解説に調合の種類。どれくらいの効果値かも書かれている。

 ……ところで毒草と雑草が混じっているんだが、間違いか?


「……すいません。これとこれ、毒草と雑草なんですけど」


 俺がそう告げると、試験官の人が目を見開いた。


「……いえ。これはわざと置いたんですが……もう【鑑定】終わったんですか?」


 わざとかよ。嫌がらせか?

 とりあえず置かれた薬草の詳細と生息値。それから効果値を順番に告げると、試験官がビシッと固まった。


「すべて合ってます。……こんなに早く【鑑定】した方は初めてですよ」


 そりゃ、俺の【鑑定】スキルは最上級の【真実の瞳】だからな。

 めんどくさいから言わないが。


「試験はこれで終わりか?」


「はい。後は結果を待つだけです。身体能力の試験を受けた広間でお待ちください」


「了解です」


 案外あっさり早く終わったな。そんな事を考えながら先程の場所へ戻れば、観客席にいたロビンが手を振ってくれた。


「よう、ハイネ。もう終わったのか?」


「ああ。すごい短かった。つか俺がトップなのか」


「……短いのもトップなのも、ハイネが規格外だからだと思うけどな」


 明後日の方向を見ながらロビンにそう言われた。

 確かに二つの試験はスキルで解決したが、どれも最上級スキルだからね。間違いではない、と否定できないのが辛いな。


「よぉ、お坊ちゃん。生意気に女連れか?」


 自分の規格外のスキルに軽くため息をついた時だった。

 どっからか声がしたと思ったら、受付方面から装備や筋肉やらでやけにごっつい男が絡んできた。


「げっ……」


「……誰?」


「…………格下の冒険者に絡む奴」


 嫌そうにロビンがそう答えたのを聞いて、パシリを探しては絡むヤンキーみたいだな。と思わず思ってしまった。

 そんな事を思っている間に、男がにやついた笑みを浮かべながらロビンへ近づいていく。


「いやぁ、中々森から出てこない引きこもり君が珍しく出てきたと思ったら、なんか可愛い女の子連れているしさぁ? 彼女の事を紹介してくれないかなあ?」


「っ! おまえには関係な……ッ!!」


 違った。ただのナンパ男だった。

 半ば呆然とそう考えながら、だけど途中で途切れたロビンの声に意識を戻せば、彼が男に胸倉掴まれているのに気づく。


「……ほぅ。低ランクのE。それも『穢れた』ダークエルフがDランクの俺に逆らうって言うのか?」


「…………っ!」


 男の言葉にビクリ。と身体を震わせたロビン。

 ……ああ。なるほど。このやり取りを見て、俺はいろいろと納得した。


「わかったらさっさと退きや、がッ!!?」


「は……?」


「はいはーい。悪さはそこまでにしてくれないかなあ?」


 言葉は普通に楽しげに。ただしオーラは苛立ち全開で纏いながら、ロビンを掴む男の右腕を左手で握りしめた。

 本来なら、相手の鍛えた身体では通じない腕力も、【武術の神域】+怒りによって数倍パワーアップしているらしい。男の右腕がミシミシと嫌な音を立てていた。


「テメェ! 何をし」


「あ゛? 人の恩人に手ェ出した挙げ句に触れられたくない事を土足で踏み込んだ上に逆ギレするような奴を丁寧に扱うような教育は受けてねぇんだよ。こちとらよ」


 ノーブレスで男に言い切る。……察しの通り、ロビンに対する態度に、俺は完全にブチギレている。この言動もそれ故だ。

 こんな態度を男に取るのは、母親曰く「男の中身はしっかり見極めなさい。下心のある奴はロクな奴じゃないんだから。そんな奴だったら黙らせてあげなさい。どんな手を使ってもいいから」と言われたから。

 完全に相手に非があるなら、警察にバレない程度にあらゆる手段で解決してもいい。と言うのが俺の母親の持論。

 母よ。元ヤンとは言え婦人警官がそれで良いのか。なんだかんだで納得している俺も俺だが。

 とは言え、それでロビンが助かるなら俺は何度でもやるがな。

 怒気を放ちながら、右手のメイスを三回連続素早く振り回す。


「ぐぉっ!!?」


 メイスの打撃を受けてよろめく男。

 そしてその数秒後、男の防具と腰の剣がクラッシュした。


「「…………え?」」


 男とロビンの声が同時に重なった。何が起きたかわからない。という顔で。


「不愉快だから中身のねぇ謝罪は不要だ。何もしねぇから30秒以内に失せろ。……さもないと」


 そんな二人の戸惑いを見ながら、メイスを床に打ち付け、視線をこちらに向けさせ――。


「――その頭、潰すぞ」


 満面の笑みと殺気で相手を低い声で脅した。


「あ――う……うわぁあああああッ!!!」


 青い顔になったと思った瞬間、男は凄まじい勢いで逃げていった。

 ……あれ? 思った以上に逃げるのが早いな。意外と小心者だったのか?


「……えーっと。ロビン。大丈夫か?」


「え? あ――うん……」


 ロビンは戸惑いながらも頷いた。……まあ『こっち』の顔は向こうでも見せなかったからな。


「……誤解が無いように言っておくが、おまえがダークエルフとやらでも俺は気にしないし、形振り構わず脅す程、凶暴でもねぇぞ。たださっきみたいな奴らは何処にでも居たからな。そいつらだけは母親の教えに従って追い払ってるが」


「いや、そんな事を教える母親もどうなんだよ」


 反射的な速度で突っ込んできた。いや、確かに正論だけど。


「でも、まあ……助かったのは事実だから……その…………ありがと」


 うつむいたまま、よく聞き取らないと聞こえない程小さな声でロビンが呟いた。

 ……良かった。これなら大丈夫かな。


「ははっ。どういたしまして」




 それから数時間後。試験は無事に終了した。

 結果は合格。ロビンの顔に泥を塗らずに済んだな。


「これでロビンと一緒に行ける上に金も稼げる。ついでに世界樹の異変とやらもたまに調べておけるな」


「どう考えても最後が一番重要だろ」


 ステータスカードを受け取り、追加された3ページ目(冒険者欄)を見ながらウキウキする。

 俺からすれば地球には帰りたいが、だからと言って積極的にやる気は無い。気づいたらたまにやるくらいだな。


「いいじゃないか。第一勝手に呼んだのはルナシェリア。捜索から解決までやろうだなんて勇者はやる気のある若人に任せればいい」


「それを言ったらハイネも若人だろうが」


「それは言わない御約束――」


 ロビンに軽口を叩きながらステータスカードを眺め――だがスキル欄を見た瞬間。石の如く固まった。


「……ハイネ? どうした?」


 顔を引くつかせながら、所持スキルを見れるように再設定し、ロビンに見せる。……ロビンも同じく固まった。


「通りであの男があっさり逃げた訳だよ……」


 いつの間に増えたのだろうか。俺の所持スキルに【憤怒の力】と【脅し】という二つのスキルがあった。


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