プロローグ
最初は異音だった気がする。
優雅に飛ぶ飛行機から、耳鳴りのような音がしたと思った瞬間、突如鳴った大きな音と強い振動に、次第に阿鼻叫喚の嵐。次第に身体に強い負荷が掛かり、意識が段々遠退いていった。
……うん。明らかに事故だったろうな。普通に飛ぶならそんな事は起きるはずはない。
だがしかし、俺としてはそんな事は、現状においてどうでもいい。
(えーっと……これって所謂、テンプレって言うか……)
飛行機事故に巻き込まれた俺を含む同級生たちは皆、大きな城に招かれていた。
某夢の国に出てきそうな城だが、あれは作り物。ここはそんな作り物とかじゃない。“本物”の城だ。
「――混乱している中、お呼び立てしてしまい、申し訳ございません」
広間の奥。玉座に座るのは白いドレスに身を包む、明らかにお姫様と呼ばれる存在だ。
念のため言っておこう。俺の生まれ故郷である日本。そして親父や大伯父が暮らすアメリカにもこんなひらひらキラキラしたお姫様はいない。ヨーロッパ辺りなら居そうだけどね。
「私はルナシェリア国の姫、アリアンナと申します。皆様は我々ルナシェリアの魔法により、異世界から召喚されたのです」
その言葉に騒ぎ出す。ある者は困惑。ある者は思考。ある者はひそかに喜んでいた。
そして俺は……。
(……明らかに面倒だよな……)
……展開が読めた俺は、明らかに面倒な事態に巻き込まれたとしか思っていなかった。