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閑話休題  作者: 神薙和刃
3/3

語られない物語

皆様は宮澤賢治氏をご存知でしょうか?

氏は『銀河鉄道の夜』『よだかの星』など様々な名作を生み出した方であり、私の心の師匠でもあります。



宮澤賢治氏の作品は、人間社会への批判や心情の具現化、出自に対する罪悪感による悲哀など様々な物を持っています。



余談ですが私は『よだかの星』を特に好いています。

醜い鳥『よだか』への謂われのない迫害、それに対する星座達の冷遇。そして自らの不遇を嘆きながら、自らを蔑むよだかの儚さは、今でも涙を誘う程です。


まあ今回は『よだかの星』ではなく『銀河鉄道の夜』が主題なんですけどね。



なら書くな、と?

サーセンwww




『銀河鉄道の夜』については長く書きすぎてしまいそうなので説明は割愛致します。

簡単に説明すれば主人公ジョバンニと友人カムパネルラ(本によってはカンパネルラ)が、不思議な銀河系を体験するというお話です。



宮澤賢治という人間がどういう人間だったのかを論じる際、『よだかの星』と共に題材として挙げられるほどの作品。



ただ、この物語は宮澤賢治氏の作品でありながら宮澤賢治氏の作品ではありません。


なぜなら氏は『銀河鉄道の夜』を執筆中、不幸にも夭折してしまったからです。


かくして未稿でありながら遺稿と成った『銀河鉄道の夜』は、様々な人間の手で推敲、改竄され世に出されて『しまった』のです。



物書きとは、自らの物語に『伝えたいこと』を載せるものだと思っています。

理解されるにせよされないにせよ、『伝えたいこと』を、言葉に載せて放つ―。

これが物語になる。と私は思っております。



故に作者亡き『銀河鉄道の夜』は、宮澤賢治氏の作品でありながら、真に宮澤賢治氏の作品にはなれないものだと思っております。


さながら劇中にて、永久に一緒に居ようと云った矢先、消え失せたカムパネルラへ、喉が裂けるほど泣き叫んだジョバンニのごとく―


『銀河鉄道の夜』は『伝えたいこと』を喪われさせられてしまった。




ただ遺稿に記された文字の羅列を繋ぎ逢わせただけでは『銀河鉄道の夜』ではなく『物語』と化してしまう。

作者が意図し、望んだ形で文字が紡がれて初めて『銀河鉄道の夜』と化す。



故に子供のころ、『銀河鉄道の夜』に描かれた世界を見て心弾ませたのを思い出し、あの壮大なスケールを以て氏は何を伝えたかったのかを思わずにはいられません。



崇高なものなのか

他愛のない、矮小なことなのか



何千万と刷られ、世に出回る『銀河鉄道の夜』

世の中全てが『銀河鉄道の夜』を理解しながら、『作者の意図』を理解することは出来ず、またそれは永遠に理解されない。

そして銀河鉄道は延々と走り続ける。



それを想うと、氏の存在はなんだったのかと思い、虚しさと悲しさがこみ上げ、不覚にも涙してしまいました。




果たして氏は、あの無限に広がる星空の彼方へ何を馳せ、その馳せた想いから創り出された世界から何を伝えたかったのか。



それを知ることは永遠にできない。







感想、苦情喜んで受け付けます。

それでは皆様ごきげんよう。

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