七話、よろしく
「・・・レイ、だよね?」
私は今起きたことが理解しきれてなかった。
元の世界に帰ったはずなのに帰れてなく、
何故かレイに抱き締められているこの状況が・・・
レイはハッとして私から離れた。
「悪い!」
顔を真っ赤にして焦るレイをみながら、
私は頭の整理をしていた。
するとレイが不思議そうな顔で聞いてきた。
「お前、帰らなかったのか?」
「帰ったよ!」
即答した私を見て、レイはもう一度鏡の前にいった。
そして、扉を開いて自分で入っていった。
こんな時に食事なのかな?と思ったが
すぐにレイも戻ってきた。
「・・・帰ってきてる?」
それから私とレイは何十回と扉を開いて
チャレンジしたが、
一度も向こうの世界に行けなかった。
「どういうことだ?」
「いや、私に聞かれても・・・」
とまぁ、こんな感じだ。
「ってことは
私、しばらくここにいるってことだよね?」
「ああ、そうなるな。」
二人で顔を見合わせると
お互い即座に正座して同じことを言ったんだ。
「これからしばらく、よろしくお願いします!」 って。
レイの側にもう少しだけいれることになって
私は少し、嬉しかった。
これからのことを話し合おうとしていると
コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。
「入っていいぞ。」
「失礼します。」
そういって入ってきたのは、さっきレイがいっていた不老不死のメイドだった。
「失礼ですがレイ様、
そちらの女性はお帰しにならないのですか?」
「何度もチャレンジしたが、
向こうに繋がらないんだ。
だから、しばらくここにいてもらうことにした。
ここにいる間の世話はお前に任せる。」
メイドは「かしこまりました。」と、一言答えると私を見た。
えっと・・・挨拶した方がいいよね?
しばらくお世話になるんだから。
私は立ち上がるとメイドの方を向いた。
「しばらくお世話になります、上杉鈴です。
手伝えることは何でも手伝いますので
よろしくお願いします。」
そう言って頭を下げると、
「ご丁寧にありがとうございます。
私はこの家に仕えているメイドの、
サミー・ホワイトと申します。
サミーとお呼びください。
こちらこそよろしくお願い致します、リン様。」
と、サミーも頭を下げてきた。
「二人とも、少し固くないか?」
レイがこちらを見て、苦笑しながら言ってきた。
挨拶は大事なんだから
少し固いぐらいでちょうどいいのよ!
そう思っていると、またドアがノックされた。
「入っていいぞ。」
もう少し、レパトリー増やそうよ・・・
まだ2回目だけどさ。
「失礼します。
レイ様、食事の準備が整いました。
そちらの方の分もご用意しましたが
いかがなされますか?」
この人が執事さんか~
ここの人達、美形揃いだな・・・
羨ましいよ、本当。
「ああ、扉が繋がらないから
しばらくここにいてもらうことになったリンだ。」
ハッ!
自己紹介しなくちゃ!
「はじめまして。
しばらくここでお世話になります、上杉鈴です。
よろしくお願いします。」
「私は執事のタイガ・ホワイトと申します。
そちらのメイドの兄です。
呼び捨てで構いませんので
なんなりとお申し付け下さい。
こちらこそ、よろしくお願い致します。」
そういってアレンは微笑んだ。
兄妹だから笑顔が似てるな~
美形の笑顔には耐性がないからクラっとくるや。
「それではレイ様、リン様。
食堂へどうぞ。」
兄妹揃って笑顔で同じこといわないで~
私、死んじゃうよ!
美形の笑顔には耐性がないから死んじゃうよ!
「リン、どうかしたのか?
一人で百面相しているが・・・
正直少し面白い顔してたぞ。」
失礼しちゃう。
プンプン!
私はさっさと部屋の外に出た。
サミーが「こちらです。」と案内してくれたので
レイを放ってついていった。
「リン!?
どうして急に不機嫌になるんだ?
リン待てって、おい!」
タイガには少し悪いけど、
私は少し、レイの発言に腹をたてているので
そんなことを後ろで叫んでいるレイは
スルーされてもらう。
そんなこんなで食堂についた。
「なぁ、俺なんかしたか?」
レイはさっきからずっとこれである。
サミーとタイガは微笑んで食事を取りに行った。
今はレイと二人っきりなのだ。
つまり、逃げられない・・・
仕方がないので、アドバイスぐらいはあげてやろう。
「自分の胸に手を当てて考えてみれば。」
「わかった。」
そういってレイは自分の胸に手を当てて考え始めた。
馬鹿?馬鹿なのか?馬鹿なんだな。
私は突っ込む気力を失った。
だって、食事がきてからもずっとしていたんだもん。
流石におかしいと思ったタイガが突っ込んだ。
「レイ様、先程から何をなさっているのですか?」
「何って・・・
リンに怒っている理由を聞いたら
自分の胸に手を当てて考えろと言われたので
実行しているんだ。
だが一向に分からない。」
「レイ様・・・」
タイガも突っ込む気力を失った。
もう頭を抱えている。
まぁ、こんな調子で食事を終えた。