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左遷からの成り上がり  作者: 流星明
第6章 ロマルクへの帰還
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第82話 老賢人と神兵達 前編

「まずは、全員を集める。ガスパー。ユリアとリノア、ナーシャを連れてきて」


「了解、エルザ姉さん」


通信機でガスパーに連絡したエルザは、椅子に座ると目の前にいる2人の英雄を睨み付ける。腹ペコ死神が戦場で放つ威圧。普通の兵士なら、怯えて逃げ出す程の気迫だが、彼らはまるで動じない。しかし、リースの次なる発言でオットーとヴィルヘルムは凍り付く。


「エルザ。その程度の威圧、彼らには効かないわよ。むしろ、私の魔法の方が良いんじゃないかしら? さあ、さあ、お立ち会い! 今から火の魔法で、お2人の髪を焼いてご覧にいれましょう!!」


「「やめんかああ! かつらは高いんじゃああ!!」


杖に炎をまとわせたリースに対し、老人2人が必死に頭を手で守ろうとする様子を見て、エルザは噴き出す。ドラーム帝国で噂になっていた話が、事実だと分かってしまったからだ。


「‥‥やっぱり、かつらでしたか。ドラーム帝国に送り込んだ諜報員達が、髪が怪しいって噂を聞いてましたからね。ふむ、弱みを手に入れた」


「き、貴様。なんたる悪辣な策を使うんじゃ。オットー。この死神と魔法使い、結構えげつないぞ。噂になっておっただと? 誰が言っていたのだ、詳しく聞かせてもらおうか」


「落ち着け、ヴィルヘルム。つい、彼女のペースにはまる所であったわ。リース嬢、調査通りの実力よな。ところで‥‥、噂を流していた奴等は誰だ? 少々、懲らしめてやらねば」


「「貴殿方、その人達を殺る気でしょう!!」


歴戦の勇士たるエルザすら、彼らの放つ殺る気に恐れ戦く。このままだと帰国後の彼らによる粛清は、さぞ凄惨なものとなるだろう。事態が斜め上に進み、困惑する2人を救ったのはガスパーだった。


「失礼致します。ガスパー=スタンコ以下4名参りました。‥‥どうかしましたか? なんか殺伐とした空気が流れてますけど」


「ビルメイス、モルト両閣下の髪がかつらだと、ドラーム帝国の文官や武官に知れ渡ってるでしょ? それを両閣下がようやく理解したの」


「あら、両閣下ともあろう方が危機管理が甘いですわね。鏡の前で、こそこそとかつらを直す。髪が雨に濡れるのを嫌い、従者にすぐ傘を差すよう指示したり、フードをかぶる。髪形が変わらない等の用件を満たしているのです。そりゃ、バレますわよ」


エルザの答えを聞いたユリアは、秘密が露見した原因を指摘する。それを聞いたオットーとヴィルヘルムは、もはや何も言えなくなった。つまり、ドラーム帝国政軍全体が分かっていると知ったからだ。


「モルト閣下。軍内部でも閣下がかつらであると皆が知っていました。誰も言わなかったのは、命が惜しかったからです。しかしながら、分かっているのに言えないという空気は正直申しましてキツいものでした。そこで、軍部が考えたのが‥‥」


沈痛な面持ちで語ったのは、元ドラーム軍人のナーシャだった。何でも、誰が『モルト閣下、その髪の毛はかつらでありましょうか』と尋ねるのかで賭けが行われていたらしい。この場合、賭け金は尋ねた勇者に支払われる事になっていた。その賭け金の総額は、現在100万マルスにまで膨れ上がっているらしい。


「はあ、軍部もしてたんだ。ビルメイス閣下、文官の方でも同じ事をしております。賭け金は80万マルス位貯まっておりまして」


リノアからも教えられた事で、オットーとヴィルヘルムはキレた。立て続けに予想外の話が続き、感情の制御が追い付かない。両手でテーブルを叩くや、椅子を勢い良く蹴り倒して立ち上がる。


「「儂らにかつらだと言うだけで、何でそんな大金が動くんじゃあああ!?」


「権力者だからかな。そりゃ、誰も虎の尾を踏みたくないもんね。でも、秘密を隠せているようで隠せていない両閣下に、1番の原因があると思いますが? 稀代の英雄も意外と脇が甘いんですね」


「「ぐふっ!!」


エルザの突っ込みに、ぐうの音も出なくなった2人。椅子に倒れ込むや、魂が抜けたかのように座っている。ひた隠しにしていた秘密が、筒抜けだった事の精神的ダメージが大きかったようだ。


「オットー=フォン=ビルメイス閣下及びヴィルヘルム=フォン=モルト閣下、ここに死す。神よ、どうか英雄たる2人に安らかな眠りをお与え下さい」


「「死者の魂が天に届く事を神に祈ります」


「いや、リース。まだ死んでないから! エルザ姉さん、ユリアも祈るな!!」


ガスパーが悪乗りする3人を止めようと奮戦する中で、リノアとナーシャは頭を抱えていた。


「まさか、両閣下に打撃を与えたのが神兵の面々とは。姉が生きてたら何と言うかしら?」


「‥‥とりあえず、両閣下を復活させましょう。ナーシャ、手伝って。ここで亡くなられては国際問題ですから。はあ、ようやく長年の懸案が解決されたのに、素直に喜べないわ」






オットーとヴィルヘルムが、かつらをかぶる理由


オットー「‥‥貴族であると主張する権威付けのためだ。決して、決して薄くなったからではないぞ!!」


ヴィルヘルム「武官たる者、帽子やヘルメット装着は必須じゃ。故に、どうしても髪が痛むのだ。‥‥何、儂の父やじい様も髪が薄いだと? それ以上言ったら撃ち殺すぞ!!」


リース「‥‥結論。遺伝と環境双方に原因が考えられると。オイゲン様の為に研究しないきゃ。とりあえず、食べ物と薬からかな?」



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