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左遷からの成り上がり  作者: 流星明
第5章 諸悪の根源の死とドラーム帝国との停戦
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第79話 思惑と決着

「成程。国作りに力を使わせ、反乱の芽を詰むと同時にロマルク帝国側への影響を与えられる訳ですな。ロマルク帝国は、未だに専制君主国家だ。隣国に立憲君主制の国家が出来るのは、政治家や活動家連中がうるさく騒ぐのを計算に入れてですな?」


ドラーム帝国も立憲君主制を取っているが、皇帝の権限が強い。だが、オットーは西ノルディンにはエゲレース式の立憲君主制を導入しようと考えているらしい。皇帝は象徴に過ぎず、議会の権限が強い方式であれば、ヴィクトルやローザでも治められると考えたからだ。


「アレクセイ殿下。よく分かってらっしゃる。ロマルク帝国の内部を揺るがすのも目的の1つですからな。ですが、同盟ではなく停戦に過ぎない。この位の自衛措置は認めて頂きたいものです。それと東西ノルディンとドラーム、ロマルク両帝国国境から50キラルを非武装地域にして頂く事も追加して頂きたい」


長年、戦争を続けてきた両国である。最悪の事態を考えるのは当然とも言えた。オットーの衰えを知らぬ豪腕ぶりに、ミハイルはため息をつきながらも了承する。疲弊した国民の事を考えれば、早めに停戦に持っていきたい。


「分かった、それで手を打とう。全く、相変わらず恐るべき男よ。何重もの策や保険をかけておるわ。余としては東ノルディンを傀儡政権を作らず、直接統治するつもりだ。アレサは、レオナルドの妻として本国に留める」


「傀儡政権は下手をすれば、反乱を起こしかねんからのう。現にヴィクトル王は、ドラーム帝国に不満を抱いているからな。オットーとミハイル陛下の意見、どちらも間違ってはおらんよ」


ヴィルヘルムの言葉は間違っていない。ユルゲンによるヴィクトルへの王位継承は、確かに対処療法としては正しかった。しかし、彼はあまりに野心と自己顕示欲が有りすぎる。その為、暫定王位とし、いずれはローザに王位を渡そうと画策したのだ。オットーのその努力は報われる。ミハイルは、ウラディミルを見て頷く。


「ビルメイス閣下。ロマルク帝国はローザ嬢の王位継承を認めます。短気なヴィクトル王よりは扱い易いですからな。ローザ嬢は、こちらで責任を持って預かりましょう。他に何か付け加える事はありますか?」


「では、儂らもロマルク帝国に同道させて頂きたい。マルコ=フォンターナの飯を久しぶりに喰ってみたいのでな」


「それと帝国内を見てみたくてな。帝都サンベルクを見た事がないのでのう。1度で良いから行ってみたいと思ったんじゃ」


オットーとヴィルヘルムの願いに、ウラディミルは困った顔でミハイルの表情を伺う。ミハイルはしばらく考えていたが、認める事にした。


「‥‥まあ、良かろう。現役の頃ならともかく、既に引退された身だ。ただし、重要施設には立ち入りは許さぬ。それで、よければ構わんが?」


「ありがとうございます。同行するのは儂とヴィルヘルム。リノア嬢にベルント中尉の護衛隊のみです。後の者は、本国と西ノルディンに帰還させますので」


こうして、合計20名の人員がロマルク帝国に渡る事になった。問題はどの部隊に彼らを護衛兼監視させるかだ。ロマルク帝国の軍人達が悩んでいると、オットーがレオナルド達の下へと向かった。


「フォンターナ中佐。君の部隊で送ってもらえないかね?個人的に会って、話をしたい人物が大勢いるのだよ。どうかな?」


レオナルドは正直言って断りたかった。義父やウラディミル等を凌駕する怪物相手は辛い。しかも、部隊には彼らが興味をひく人材がかなりいる。あまり近付いて欲しくないのが本音だ。


「皇帝陛下の御許可がありましたら、お受けしましょう」


とりあえず、ミハイルに丸投げをするレオナルド。さすがに断るだろうと彼は考えていたが、皇帝の判断は違った。この引退した2人が、レオナルドの部隊を調べた上で指名した事に気付いたからだ。


「馬群の中にいる狼なんて言われとる部隊だ。さぞ、精鋭揃いなんだろう。楽しみじゃわい。閃光ボルフや腹ペコ死神等とは会ってみたいのう」


「フォンターナ中佐。そして、アレクセイ。ドラーム帝国の要人であるビルメイス、モルト両閣下の護衛を命ずる。どうせ、部隊の内情も見抜いていようからな。今さら隠す事もあるまい。後は任せるぞ、2人とも」


「「‥‥了解です、皇帝陛下!!」」


ミハイルが認めるなら、否とは言えない。レオナルドとアレクセイは、不承不承従うしかなかった。それを知りながらも命令したミハイルにはある計算があった。


(今は最新兵器等に対する関心を失わせ、人材に目を集中させるとしよう。レオナルド、アレクセイ。面倒だが強面老人の相手を頼む)








交渉終了です。次回よりロマルク帝国へ帰還します。

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