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左遷からの成り上がり  作者: 流星明
第5章 諸悪の根源の死とドラーム帝国との停戦
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第71話 イザベッラ、悪運尽きる

更新長らくお待たせしました。すみません。


わがままイザベッラに鉄槌が下されます。おとなしい人ほど、キレると怖い。

アドルフ率いる部隊が壊滅する少し前、ナーシャ達はロマルク皇帝ミハイルのいる本営へと潜入に成功していた。目的はあくまでもレオナルドの捕縛であり、ミハイルの命を狙うという無謀をする気は無い。しかし、不安要素満載の人物が作戦に同行している時点で、この作戦の危険度が高くなっているのは間違いなかった。


「うふふっ、ようやくレオに会えるのね。そして、私達は結ばれる。考えただけで心が踊るわ」


作戦行動への同行は、イザベッラが強く要望しての事だ。メルも最後は説得を諦めてナーシャに丸投げしてしまう。足手まといを丸投げされた、ナーシャの機嫌は最悪の状態に陥っていた。


「‥‥イザベッラ姫様、お静かに。敵に気付かれては元も子もありません」


浮かれるイザベッラをナーシャはたしなめた。敵陣に潜入してから、ずっとこの有り様である。敵に見つかっていないのが、奇跡と言っていい。苦言の1つどころか、幾つも言いたいがこの姫様には堪え性が無い。案の定、たちまち不機嫌となったイザベッラは声を荒げた。自分が置かれている状況を忘れて。


「たかが、1兵士の分際で黙りなさい。私が存分にレオを抱いた後、貴女に渡すのは嫌でたまらないんだから。でも、シュナイダー博士との約束だから我慢してあげるわ。全く、自分の立場を理解して欲しいものね。そんな貧相な体で男が抱けるのかしら?」


(‥‥もう限界だわ。こうなったら、戦闘開始と同時に後ろから撃つしかない。戦場で死ねるなら、王族として悪くない死に様よね。今は我慢よ、私)


心の底から溢れる殺意をナーシャは必死に抑え込む。だが、その努力は徒労に終わる。イザベッラ姫の大声を聞き付けたロマルク軍の兵士達が、こちらへと向かって来たからだ。彼らは、ドラーム帝国軍の制服を着たナーシャ達を見るや、警笛と同時に発砲を開始。たちまち、何人かの部下達が銃火に倒れた。


「敵が侵入したぞ! 相手は神兵だ。女子供とて手加減するな!」


「ち、ちょっと。敵に見つかったじゃない! このままじゃ、レオに会えないわよ。何とかしな‥‥」


イザベッラに最後まで言わせず、ナーシャは右ストレートを彼女の顔面にぶちかます。突然の出来事に、敵であるロマルク軍の兵士達も呆気に取られて身動きがとれなくなる。そんな中で、ナーシャは今まで溜まりに貯まった怒りをぶちまけながら、イザベッラを足蹴にしだす。


「このあばずれ女! あんたのせいで敵に見つかったじゃないの。だから、連れて来たくなかったのよ。だいたい、姉さんも姉さんよね。私に子供を産ませるですって? そんなに欲しいなら自分で産みなさいよ。どいつもこいつも人を道具のように使いやがって! この、このっ」


遂にキレてしまったナーシャ。それを見た神兵達は神に祈りを捧げた。ナーシャを怒らせる事は死に直結するからだ。かつて、最低の神兵の1人と彼女を揶揄していた、第2世代の神兵達数人が不可解な死を遂げた。銃の暴発による事故死、原因不明の謎の食中毒死。果ては、夜までは元気だったのに、朝ベッドで冷たくなっていた者もいた。

第2世代の神兵達は気づく。全てナーシャが人知れず手を下したと。それ以降、ナーシャを侮る者は誰もいなくなった。


「や、止めなさいよ。私は、イダルデの正統後継者‥‥」


「だから、どうしたああ? もう、黙れええ!!」


ライフルをゴルフのクラブのように握り、イザベッラの頭めがけ、フルスイングをするナーシャ。イザベッラの頭に銃床が命中し、血しぶきが辺りに飛び散る。鼻は折れ曲がり、左耳は裂け、頭に出来た傷からは出血が激しい。あまりの惨状に敵味方も動けない。それでもナーシャは止まらない。ライフルを構え、銃口を右手の甲に突きつけた。


「ふん。人を痛みを与えるのは得意でも、自分に痛みには慣れてないのね。さあ、今からもっと苦しめるわよ。まずは、右手を撃つ。左手、右足、左足、最後は心臓を貫いてあげるわ」


「や、やめてえええ。だ、誰か助けてよ。頭が痛い。痛い、痛いのよおお!」


「シュナイダー中尉を止めるんだ! これ以上やったら、あの女が死んじゃうぞ」


あまりの痛みに号泣し、もがき苦しむイザベッラ。部下の神兵達に全力で止められ、ナーシャはようやく落ち着きを取り戻した。そして、やるべき事を行う為にロマルク軍兵士達に向け、大声で叫ぶ。


「そこの貴方達、私達は投降する。指揮官の所に連れて行ってくれませんか? 手土産としてシュナイダー博士とイザベッラ姫を渡しますから。皆もそれで良いわね。良・い・わ・よ・ね?」


「は、はい! 我々はシュナイダー中尉に従い、投降致します!」


凄むナーシャを見て、部下達は直立不動で敬礼し、命令を受け入れた。武器を地面に置き、両手を頭の後ろにまわす。その様子を見ていたロマルク軍兵士達は、すべき事を思い出し、慌てて行動を開始する。


「‥‥えーーと、うん。とりあえず、フォンターナ中佐に連絡をしよう。武装解除と拘束を行う。あと、衛生兵を呼べ! イザベッラ姫の手当ても頼む。しかし、助かるかな、これ?」





次回、遂にイザベッラとレオナルドが御対面です。

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