第69話 暗殺計画の実行
仕事の多忙や病院の通院等で更新遅れました。執筆ペースが落ちますが、書き続けるつもりです。
「ちっ、ライペール少佐め。臆病風に吹かれ、停戦を進言しおって。このままだと我々の首が危ういのも分からんとはな」
アドルフは部隊と共に森の中で潜伏しつつ、ユルゲン達と袂を分かった時の事を思い出す。ドラーム帝国軍と合流した後で、アドルフはバロル大公を筆頭とする連中を軽く粉砕。降伏も許さず、神兵らによる殺戮を行う。女子供も容赦無く銃弾を浴びせ、屋敷に火を放つ中で、アドルフはバロル大公と対峙していた。
「き、貴様ら。家族もろとも私達を殺すとは、残虐非道もこの上無いではないか」
「ふん。恨むなら己の過ちを恨め。たかが重臣の分際で、王妃を寝とったあげく子を成した自分をな。さらばだ、バロル大公」
「ぐっ、地獄に‥‥」
拳銃より放たれた銃弾により、バロル大公の息の根は止まる。苦悶の表情を浮かべた死体を尻目に、アドルフは焼け落ちる屋敷を後にした。
「ぬう、間に合わなかったか。ヒューレンフェルト大尉め。功を焦るあまり、やり過ぎている。この辺りで釘を刺さねばなるまい」
蛮行を止められなかったユルゲンは、ヴィクトル王子をノルディン連合王国の国王に祭り上げる事を軍上層部に進言。バロル大公の威厳は地に落ちたとはいえ、重臣の1人だ。ノルディン国民の感情を考えて出された意見は受け入れられ、ヴィクトル王を中心とした新体制をドラーム帝国軍が確立している。そして、ユルゲンはロマルク帝国との停戦を主張した。
「ロマルク帝国軍との戦争は益少なく、害が増えるばかりです。フラシアに加え、エゲレースもドラーム帝国との戦争に突入しそうな現状況。ヴィクトル王を傀儡とした親ドラーム政権樹立で満足すべきです。ロマルク皇帝がノルディンに乗り込んだからといって、危険な賭けに出るべきではありますまい」
暗にアドルフを牽制した物言いのユルゲンに対し、アドルフは激怒する。ロマルク皇帝暗殺計画は、ルーテンドーフ陸軍幕僚長肝いりの考えだった。アドルフを送り込んだ真の目的と言っても良い。ミハイルを殺せば、後は凡庸な皇子達しかいないロマルク帝国は大混乱に陥る。そこを狙って帝国へ侵攻し、有利な和平を為した後でフラシア共和国との決戦に持ち込む。そんな青写真を考えていたのだ。
「ライペール少佐。ロマルク皇帝暗殺計画はルーテンドーフ幕僚長の命令であります。末端の我々が中止出来るものではありますまい。何より我々はイェーガー大佐を捕縛され、アレサ女王を取り逃した。バロル大公の抹殺は成功しましたが、更なる勲功を得ねば処断されかねません。そのような事もお分かりにならないか!!」
「だからといって、戦線を無闇に拡大する訳にはいかん! 例え、我らが処断されてもな。仮に失敗すればドラーム帝国の名誉は地に落ち、大陸諸国に付け入る隙を与えかねん。それに停戦は皇帝陛下も認められた事だ。隠居されていたビルメイス閣下が、陛下に直談判したらしい。陛下も認めざるを得なかったようだ。近々停戦の勅令が出るだろう」
「おお、ビルメイス閣下が!」
「皇帝陛下も今回は従わざるを得ますまい。ロマルク帝国との戦線は敗北続きでしたからな」
「これでロマルク帝国との戦争は終わるのか‥‥。長かったな」
ユルゲンの言葉に軍人達が驚く。文官の名門たるライペール家だからこそ、宮中の内情について詳しい内容が伝わる。昨日の時点で、ユルゲンはこの情報をノルディン方面軍の将官達に伝達していた。長きに渡る戦争にうんざりしていた所へ、ノルディンに派遣された彼らは決断する。ユルゲンの進言を受け入れ、ノルディンに傀儡政権を作る事で戦争を終わらせる事を。
「たが、勅令はまだ出されていない。勅令が無い以上、我らは動きます。ルーテンドーフ陸軍幕僚長直々の指令ですからな。必ずや、成し遂げてみせますので」
「ヒューレンフェルト大尉! いらぬ流血は回避すべきだ。それが何故分からない」
「流血を回避しても我々は責任を取らされる。ならば、大きな手柄を得て罪を帳消しにすれば良い。ロマルク皇帝ミハイルと重臣をも奇襲で倒してご覧にいれましょう。では、失礼」
そう言って司令部を離れたのは2日前の事だ。アドルフには最早この作戦を成功させる事しか活路は無い。相手にはウラディミルとエルザらがいるだろうが、神兵全員で死力を尽くせば勝ち目はある。
「では、行くぞ!! 目指すはミハイルの首だ。手向かう奴は討ち果たせ!」
アドルフの号令に神兵部隊が動き出す。こうして後にロマルク皇帝暗殺未遂事件の幕が上がる。彼は知らなかった。かつて自分が馬鹿にしていたリースが、魔法使いとなっていた事を。ウラディミルが部隊の動きを見抜いていた事を。そして、メルが見捨てていた事をだ。結果、部隊は悲劇的な最期を遂げる事になる。
次回、リースが本領を発揮します。




