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左遷からの成り上がり  作者: 流星明
第4章 魔法使いの登場とアレクセイ派結成
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第65話 皇帝親征

更新遅れました。皇帝陛下登場です。

レオナルド達がアレサと合流した翌日。軍港ベルンにロマルク帝国の陸海軍が集結した。陸軍兵力40000人、戦車1000両に加え、トラック等の車両が8000台。海軍兵力は20000人。戦艦4隻、巡洋艦8隻と駆逐艦32隻。これに、揚陸上陸艦や補給艦と輸送艦が合計200隻の艦隊である。海軍に関しては6割方の兵員を動員していた。ミハイルの本気を窺い知れる。


「父上は本気でノルディン連合王国を併呑するつもりだな。アレサ殿、構わないのか? 祖国を失う事になるが」


軍の偉容を目の当たりにしたアレクセイは、かつての為政者たるアレサに尋ねた。だが、元女王はその質問に呆れた様子で返答する。


「アレクセイ皇子殿下。宰相は一族もろともあの世行き、バロル大公は自爆。あげくに私とヴィクトルは偽者の王族なのよ。誰を頼みに民は立ち上がれと? それにロマルク、ドラーム両帝国の軍隊と戦えば、国民と国土に甚大な被害が出るでしょうからね。国家の存続も不可能に近い今、民の事を優先するしかない」


アレサの言葉にリースも追随する。魔法で各国の情勢を見続けた彼女もノルディン滅亡は不可避と考えていた。


「無理ですね。とても、ロマルクとドラーム両帝国の軍隊と勝てる訳がありません。偽者とはいえ、アレサ様を傀儡にして政権を樹立する事を企む可能性も両帝国は考えているでしょう。その辺はどうお考えですか?」


リースに答えようとするアレサ。そこへ、多くの将兵を引き連れた軍服姿の男が現れる。人物の正体に気付いたレオナルド達は慌てて跪く。


「皇帝陛下! どうしてノルディンへ?」


「フォンターナ中佐、面白い話をしているではないか。君とは後で話そう。まずはアレサ殿、久しぶりだな。今度の事は残念だった。為政者として、君は最高の傑物であったからな。今回の内乱、全てはバロル大公が元凶であろう?」


ミハイルは憤りを露にアレサに問いかける。同盟国足り得たノルディンを崩壊させ、自らの器に身合わぬ欲望を持ったバロル大公を彼は許せないでいた。彼を自らの手で打倒し、ノルディンの統治者として成り変わろうと考えての今回の親征だ。そして、ミハイルにはもう一つの目的がある。


「ミハイル陛下、お久しぶりですわ! ノルディンを奪うべく、親征をなさるとは。私への評価はさておき、バロル大公も愚行を犯しましたね。女狐を追い出したら、2頭の竜が出てくるとは思わなかったでしょう。しかも、この竜は私などよりも手強く欲深い」


アレサの遠慮の無い批評に、ミハイルは苦笑するしかない。全くもって正しい見解だった。同盟国として機能しないなら奪う。それが、両帝国の方針だからだ。何よりロマルク帝国皇帝としては、是が非でも欲しい物がある。


「ノルディン連合王国の半分は欲しい。バレット海沿岸は特にだ。バレット海を我が帝国の海として、その先の大海洋へ繋がる海路奪取は、歴代皇帝の悲願であったからな」


「父上。お気持ちは分かりますが、危ういですぞ。バロル大公やヴィクトル王子らのような有象無象はともかく、アドルフ=ヒューレンフェルト大尉。彼の下にいる神兵は、危険極まる者達です。父上の御身が‥‥」


アレクセイの諫言を、ミハイルに随行していたレノスキー少将が右手を挙げて制する。


「アレクセイ皇子殿下、心配しないでもらおう。私達が付いているのだからな。今回配属されている神兵の実力を調べさせたが、我らと同じ位の実力だと分かった。エルザ=スタンコを始めとする先輩達には、遠く及ばないらしい。資金と人的資源の差が如実に出たな」


見れば近衛兵の中に、影の騎士の構成員が多く配属されていた。これでは神兵といえど、突破は難しいだろう。無論、絶対と言う言葉は無いが。


「今回の派兵、本気なのですね。皇帝陛下を囮とし、神兵の殲滅まで考えるのですから」


「フォンターナ中佐、仕方あるまい。情勢が激しく流動化し、内乱から2国間の戦争へと突入しつつあるからな。ノルディンの奪取と神兵の殲滅位しないと割が合わぬ。それに加え、重大な関心事が発生したからな。リース=エルメインという魔法使いの件だ」


ウラディミルの言葉に、皆の視線が魔法使いの少女に注がれる。たがリースは物怖じもせず、ミハイルに挨拶を行った。魔法使いである彼女を初めて見た者は驚く。見た限りでは、どこにでもいるただの少女にしか見えないからだ。


「ロマルク皇帝陛下、レノスキー少将閣下。初めまして、リース=エルメインと申します。随分と私を買って下さるのですね」


「当然だ。魔法使いは、これからの戦争に大きな影響をもたらす。絶対に味方へ加えたいからな」


「余もリース嬢には並々ならぬ関心がある。神兵の中で無能と呼ばれた君が、魔法使いとなった経緯もな。だが、まずは君の処遇についてだ。リース=エルメイン。君には男爵位に加え、帝都に屋敷を与えよう。我がロマルク帝国に仕えてくれるか?」


ミハイルのリースに対する厚遇ぶりに、驚きと羨望の声を挙げる人々。そんな人々を尻目に、リースは深々と頭を下げる。


「皇帝陛下、私とイェーガー大佐はアレクセイ皇子殿下にお仕えする事になりました。皇子殿下の気概と理想を聞き、私達は忠誠を誓っております。陛下の直臣になれない事をお許し下さい」


「‥‥私はドラーム帝国に忠誠を誓っていましたが、度重なる仕打ちに愛想も尽きました。以後は、ロマルク帝国にお仕え致します。ただ、リースに対して非人道的な扱いをするならば、すぐに反旗を翻しますぞ」


2人の発言は居並ぶ諸将を動揺させた。陸軍の軍人の多くは第2皇子イワンの派閥に所属している。ドラーム帝国軍で1、2を争う名将のイェーガー大佐。そして、現代に蘇った魔法使いであるリース。2人が皇位継承を争うであろう、第4皇子アレクセイの陣営に加わったのだ。敵対した時の事を思うと気が滅入るのは当然である。


「ふっはっはっはっ。余よりも先に手に入れるとはな。アレクセイ、なかなか手が早いではないか。良かろう、アレクセイの臣下として励め。勿論、男爵位と屋敷は渡す。それとイェーガー大佐。リース女男爵の身の安全は余が保証する。余の命令に反する者は極刑に処すゆえ、安心してくれ」


リースとオイゲンに答えた後、ミハイルは居並ぶ諸将へ振り返る。そして、大声で演説を始めた。この演説を聞いた者達は、皇帝の声が獅子の咆哮に似ていたと後に語っている。


「諸君! ロマルク帝国は魔法使いを得る事に成功した。さらに、元女王アレサ=デュレールと名将オイゲン=イェーガー大佐をも味方に加える事が出来たのだ。これは、天におられる神が! 我がロマルク帝国に、ノルディンを渡そうと与えてくれた恩寵であろう。最早。我らの勝利は疑い無し! ノルディンを我が帝国の物とし、勝利の美酒を共に味わおうではないか!!」


「「「「おおーーっ!!」」」」


こうして、ノルディン内乱はロマルク、ドラーム2国間の戦争へと変化しようとしていた。しかし、事態はミハイルが考えていた以上に早く進む。この時点で、バロル大公がドラーム帝国軍によって既に殺されていたのである。アドルフ率いる神兵達によって。






会談後のミハイルとウラディミルの会話


ミハイル「ウラディミルよ。アレクセイの陣営って、強すぎないか?」


ウラディミル「元ノルディン女王アレサ様、イェーガー大佐、フォンターナ中佐、オーブルチェフ少佐。ルイシコフ技術中尉にスタンコ少尉に魔法使いリース。彼らの部下も従っていますからな。更には民間となれば、死神の鷹の面々にマルコ=フォンターナまで加わりましょう」


ミハイル「‥‥‥‥ヤバくないか? 他の皇子が簡単に潰されそうだ。いくら余でも勝てそうにないぞ」


ウラディミル「ふむ、他の皇子殿下が焦りますな。ボリス皇太子殿下は廃太子確定。他の方々は、国家に対する功績がまだまだ足りませんから。人材、実績共にアレクセイ皇子殿下の功が大きいのは間違いないでしょう。それと陛下。敵対しないようにするのが、陛下と私の仕事です」


ミハイル「ウラディミル、確かにそうであるな。分かった、善処しよう」


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