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左遷からの成り上がり  作者: 流星明
第4章 魔法使いの登場とアレクセイ派結成
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第64話 アレクセイの勧誘

「立派な心掛けだな、フォンターナ中佐。さて、ここにいる者達に言いたい事がある。俺の派閥に入ってくれないか? ロマルク帝国皇帝になるには、優れた人材を配下に加えたい。いずれ、成すべき覇業を行うには必要だからな」


アレクセイの誘いに全員が考え込む。今後の人生がかかってるのだから、当然である。その中でレオナルドが口火を切った。


「アレクセイ皇子殿下、どのような事をなし得たいのですか? ドラーム帝国やイダルデ解放軍等を滅ぼし、エウロパ大陸の覇者となられますかな。この際ですので、お考えをお聞かせ願いたい」


皇帝として成し遂げたい事は何なのか。アレクセイの野望を聞くレオナルドに、アレクセイも真摯に答える。ここで本音を語らねば、彼らを説得出来ないと思ったからだ。


「安心しろ、ドラーム帝国は滅ぼさん。むしろ緩衝国として残す事を考えている。イダルデ半島は奪取するがな。エウロパ大陸の覇者という地位は魅力的であるが、ロマルク帝国は内政に徹しなければならん。奇しくも君の義父たるマルコ=フォンターナが言ったようにな。長年の戦争で帝国は疲弊している。俺の代では内政改革は終わるまい」


アレクセイも父の政治をウラディミルと共に助けつつ、ロマルク帝国の問題点を調べていた。マルコ=フォンターナの提言は理に叶っており、アレクセイの考えとも一致していた。永久氷河の恐怖はあるが、国土拡大路線はしばらく凍結したい。


「‥‥意外にしっかりしてるわね。女好きの駄目皇子との噂だったのに。ミハイル陛下は4人の皇子がいらっしゃるけど、上から種馬皇子、戦馬鹿皇子、芸術馬鹿皇子に駄目皇子と我が国の民衆が囃し立ててたから。鷹が雀を産んだと嘆く人も多かったわね」


ノルディン連合王国における自分達の散々な評価に、アレクセイはかなり傷ついた。少し涙目になりながらもアレサに尋ねる。


「アレサ殿、泣いても良いよな? まさか、他国の女王や民衆からもそこまで虚仮にされているなんて」


「言ってはなんですが、ドラーム帝国でもロマルク皇子達の馬鹿、いや無能。えーーと、そう! 普通なのは有名ですからな」


オイゲンが苦心のフォローをしようとするも、大失敗に終わってしまう。ますます落ち込むアレクセイ。エルザは彼のフォローをすべく発言する。


「イェーガー大佐、本音が駄々もれすぎてます。まあ、彼らが困った方々なのは間違いないです。アレクセイ皇子殿下も、婚約者が出来るまでは遊び呆けてましたから。もっとも、それは擬態に過ぎなかったけれど」


「私もロマルク帝国の情勢を知る為に、宮廷内をよく観察していたわ。他の3人の皇子は話にならないけれど、アレクセイ皇子殿下が器量があると考える。オイゲン様、私達は彼の派閥に入りましょう。私が調べた限り、ドラーム帝国は今回のノルディン遠征失敗の責任を貴方に取らせるつもりです。帰国しても確実に銃殺されますわ」


エルザに続き、リースもアレクセイを認める。しかも、彼女はオイゲンのドラーム帝国に置ける立ち位置についても語りだした。


バロル大公に裏切られ、ノルディン内乱を援助していた軍人達は責任を取り失脚している。オスカー=フォン=ルーテンドーフ陸軍参謀長は減俸処分ですんだらしい。彼を更迭しようにも、陸軍の軍人の6割が彼の派閥である。下手をすると反乱が起きかねない。アドルフも第2次神兵計画の推進の為には必要だ。となれば、現場の最高責任者たるオイゲンに責任を取らせようと軍上層部は考えたのである。とはいえ、責任を取らせる予定のオイゲンが、敵の捕虜となった現状に彼らも頭を抱えているようだが。


「マジか、亡命するにしても誰かの後ろ楯がいるな。しかし、アレクセイ皇子殿下。貴方は信用出来ますかな? 使うだけ使って捨てるのは、もう勘弁して欲しいですから」


今まさに捨て駒にされたオイゲンの発言は重い。オイゲンとしては祖国に対する愛情はある。だが、貴族達の目論見による作戦に巻き込まれ、何度も死にかけた事を鑑みて亡命する事を決断した。その事をアレクセイは無下にはしない。


「今は信用してもらう他ないな。これからの俺の行動を見て欲しい、イェーガー大佐。君が忠誠を預けるに足らないと思ったら、見限ると良い。それに君を使い捨てにする愚行を私はしたくないのでね。俺はまだリース嬢に殺されたくないからな」


アレクセイの答えに、もっともだと頷く一同。名前のあがったリースも苦笑している。オイゲン達の身の振り方が決まった所で、サーラはレオナルドに自分達の去就を尋ねた。


「レオナルド様、僕達はどうしますか? 僕としてもアレクセイ皇子殿下は悪くないと思う。実家と付き合いのある第2皇子殿下はドラーム皇帝と同じ位の戦馬鹿だからね。不必要に戦火が拡大すると思います」


「‥‥どうやら決断するしかないか。アレクセイ皇子殿下。我々も微力ではありますが、殿下の派閥にお加え下さい。ロマルク帝国とイダルデの民にとって、内政を重視する殿下が相応しいと私も考えます」


「よく決断してくれた。君達の支持は、100万の味方を得たに等しい。俺も忠誠に報いるべく、信念を曲げずに戦う事を誓う。まずはノルディンを平定する。アレサ殿、イェーガー大佐とフォンターナ中佐。これ以上、民が苦しまない策を示してくれ」


レオナルド達の言葉は、アレクセイにとって非常に価値のある物となった。元イダルデ王族たるレオナルド。ノルディンに未だ影響力を持つ元女王アレサ。天才技術者にして、ルイシコフ重工業の屋台骨を支えるサーラ。神兵の最高傑作であるに加え、影の騎士並みの部隊を持つエルザ。エルザに並び立つ実力を持った現代の魔法使いリース。ドラーム帝国重戦車隊を指揮していた、名将名高いオイゲン。彼らの支持を取り付けたアレクセイの躍進は、帝位継承争いに大きな混乱を招く事になる。


アレクセイ派の結成です。数は少ないですが、質が他の派閥を軽く凌駕しています。

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