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左遷からの成り上がり  作者: 流星明
第4章 魔法使いの登場とアレクセイ派結成
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幕間 リースの力

飛ばし過ぎたので幕間を書きます。説明不足でした。

「イェーガー大佐、食事の時間です」


「ああ、ありがとう。捕虜としては破格の待遇だよな。食事は暖かいし、美味い。行動は監視があるものの比較的自由だ。理由を聞いても良いか?」


オイゲンは食事を運んできた女性下士官にそう尋ねた。今、彼がいるのは捕虜輸送車の中である。上級士官や要人の為に作られたもので、サーラが開発したものだ。内装が豪華なのに加え、ベットやテーブルと椅子等の調度品も1級品を使われている。大佐にすぎない自分への待遇を疑問に思うオイゲンに対し、彼女は笑顔を浮かべて答える。


「イェーガー大佐は名将として有名です。粗略な扱いをするなとレノスキー少将閣下より命令がありましたので」


魔王の名前を聞いたオイゲンは何とも言えない顔になる。彼の事だ。この待遇も策略の一環であろう。下士官は食事を置くと敬礼をして車内より出ていった。


「‥‥俺の待遇を聞いたドラーム帝国がどう考えるかだな。まあ、なるようになるしかないか。それにしても美味いな」


悩んでいても仕方無いと思ったオイゲンは出された食事を食べる事にする。その様子をはるか遠くより見ている人物がいた。


「オイゲン様は無事のようね。本当に良かった」


ノルディンの山奥の小屋で1人の少女がつぶやく。彼女の名はリース=エルライン。神兵計画の生き残りであり、ゲオルグ=フォン=ローゼンハイム侯爵が長年追い求めてきた魔法使いとなった少女である。彼女は今、遠視の魔法でオイゲンを始めとする主要人物達の様子を見ていた。遠視の魔法は鏡や水を使い、遠くの出来事や様子を見る事が出来る魔法だ。まずはバロル大公の様子から見てみる。


「どうすればいい! ドラーム帝国は敵に回り、ロマルク帝国も軍を派遣するらしい」


「しかもアレサ様とヴィクトル様はバロル大公、貴方の子供だとか。大陸諸国も知るこの醜態、どうするおつもりか!」


「おのれえ、先代の馬鹿王め。よりによって大陸の皇家、王家に秘密を暴露しおって。恥という物を知らぬのか!」


「「「「王妃を寝盗った貴方に言う権利は無い!!!!」」」」


もはや会議の様相も無く、その後は罵りあいや喧嘩に発展する始末であった。あまりのひどさにリースも呆れてしまう。


「バロル大公の陣営は大混乱か。ドラーム帝国を敵に回し、王室の秘密も各国に知られたのなら当然ね」


ノルディンに上陸したドラーム帝国軍に加え、ロマルク帝国軍も動くのだ。腹心たるローデン准将らも失った今、バロル大公の命運は尽きたと言ってもいい。次にロマルク帝国の陣営を写し出す。


「皇太子殿下、どちらに行かれますか! 援軍6万が明日には到着します。国をあげての戦いが始まるのですぞ」


「爺か。いや何、英気を養う為に少し出掛け‥‥」


「また、娼館ですかな? いい加減になされい! 本当に廃太子が現実味をおびますぞ!」


「俺は女がいないとやってられないんだ。ここ数日女が抱けないから、我慢の限界なんだよ。‥‥という訳で行ってくるぞ」


祖父であるバルーニンの制止を振り切り、逃げるように去るボリスには絶望する。影の騎士にも事の顛末は見られているだろう。廃太子は確定的だ。


「‥‥取り柄が欲望豊かな下半身だけとはな。我が孫ながら情けないわ。こうなれば、陛下に直接申し上げて廃太子を願い出よう。娘には悪いが家を守らねばならん」


バルーニンはとうとうボリスを見限るようだ。リースは興味無さげに視点を閉じる。


「ロマルク帝国も介入してくるか。それにしても、ロマルクの皇太子は馬鹿すぎる。まあ、彼らはどうでもいい。問題は‥‥」


そう言って、リースは軍港ベルンから出てきた部隊を写す。部隊の中央に位置する指揮車の運転席に、かつての仲間エルザの姿が見えた。この部隊の隊長たる男が助手席、後部座席には第4皇子と副官が座っているのが見える。


「どうやら、ボリス兄上は娼館に向かったらしい。無線で今、連絡が入った」


「あの方は何をしてるんですかね。今から戦いだってのに」


「英気を養うらしいぞ、オーブルチェフ少佐。だが、そう言えるには、すべき事をしなくてはならん。兄上の行状は父上も知ることになろう。廃太子は確定だな。下手をすれば幽閉されかねんぞ」


「幽閉ですか、それですめば良いのですがね。皇帝陛下が怒りのあまり、突然の病死にしかねませんよ。例えば、ワインに毒を入れての自害強要とか」


レオナルドの言葉に絶句する一同。ミハイルの性格上、ありえそうで怖い。


「‥‥フォンターナ中佐、恐ろしい事を言うな。確かに、兄上の不行状は目に余りすぎる。これ以上醜聞をさらすなら、いっそと考えられるかもしれぬな」


「病死の内容は腹上死か腎虚でいいんじゃないですか? 散々女を抱いてますし。歓楽街でも有名ですから、種馬皇子は」


「「「いや、さすがに外聞が悪いから!!!」」」


「真に受けないで下さい。ちょっとした冗談ですよ。話はそれくらいにして、アレサ様の救援に向かいましょうか」


4人の会話を聞きながら、リースは考える。エルザが軽口を叩くのを見るのは初めてであった。やはり、隊長たるこの男の影響であろう。


「エルザを御せる男、レオナルド=フォンターナか。オイゲン様の敵になるようなら排除したいけど、エルザを敵に回すのは嫌だな。何とか味方につけないと」


リースの視点がドラーム帝国軍に移る。何やら話し合うアドルフとベルント、ユルゲンの姿が見えた。よく見れば、捕虜となったヴィクトル王子の姿もある。


「神兵も揃った。まずはアレサ女王を奪還しましょう。この王子では何の役にも立たんからな」


「‥‥ヒューレンフェルト大尉。先の戦闘の二の舞は避けたいが、大丈夫なのか?」


アドルフの暴走を経験したユルゲンは、彼女らが出てきた時に冷静でいられるかと問い掛けた。その懸念は最もな事だ。アドルフは対策を用意している。


「私は後方で指揮をとるつもりです。しばらく、前線は部下に任せます。ご安心を」


「お前達、私はノルディンの王子だぞ! 礼節を持って扱え。まずは手錠を外してもらおうか」


今まで存在すら無視されていたヴィクトル。だが、彼の発言を聞いたベルントは冷徹に語り出す。


「ヴィクトル様、貴方は不義の子として大陸に知れ渡っています。アレサ様は為政者として尊敬されているから大丈夫でしょう。では、貴方は? 王子の資格も無く王子を名乗っても、物笑いの種でしかありません」


ベルントの厳しい言葉に、何も言えなくなったヴィクトル。そのやり取りを聞いていたアドルフはユルゲンに進言する。


「ライペール少佐。いっそ、この偽王子を雪に埋めますか? 利用価値が何もないのです。殺しても損はありません」


「いや、何かに使えるかも知れん。殺すのはいつでも出来る。フォルツ少尉、監視を怠らぬよう部隊に徹底してくれ」


「了解致しました。ヴィクトル様、こちらへ」


ベルントは敬礼した後、喚き叫ぶヴィクトルを営倉へと連れていく。その様子を見たリースはつぶやく。


「ノルディン連合王国は終わるべくして終わったわね。さて、オイゲン様を助けにいきましょうか。フォンターナ中佐とアレクセイ皇子なら敵の情報を流せば、彼の身柄を引き渡してくれるでしょうから」


視点を消し、椅子から立ち上がったリース。彼女は杖を右手に持つや、勢い良く小屋の扉を開いた。杖に魔力を集中し、一面雪に覆われ銀世界と化した山々を南に向かって飛び立つ。目指すはオイゲンのいる軍港ベルンの西側に広がる平野だ。こうして、後に史上最高の魔法使いと謳われたリース=エルラインが歴史の表舞台に登場することになった。






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