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左遷からの成り上がり  作者: 流星明
第3章 ノルディン内乱
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第58話 過去の怨念

アドルフ「かつて弱者だった者が強者になった時、どうするか?ふん、俺は復讐を選んだ。俺をいじめ、苦しめた連中を全員血祭りに上げたよ。

『許してくれ、悪かった』

『あいつに逆らえなかったんだ。本当はしたくなかった』

『止めてくれ、家族は関係ないじゃないか!』

『俺は何もしていない。見てただけだ』

そんなことを言う馬鹿共がいたな。許すと思うか?家族を目の前で殺し、最期に殺された奴等の絶望の顔は痛快だった。奴等は過去の所業によって、殺されたのだよ。己の罪を死で償わせた、俺の手でな。かつての強者が、かつての弱者に倒される。この世は本当に面白いものさ」

アドルフ=ヒューレンフェルトは、かつて神兵の中でも際立った美少年であった。その容姿から、女の子にモテたが男にもモテてしまう。それが悪夢の始まりだった。


「アドルフは、そのう‥‥。軍人達に相手を強要されてたのよ。ほら、よくあるでしょ。女性の好きな本で、男と男の情事がメインの本が。相手は20人近くいたと思う。あれを強制的に4年近くもやられて、相当憎んでたんでしょうね」


「むう、男同士のあれか。かくいう我輩も危うく尻を狙われたが、家の権力を使ってそいつらを左遷させてから皆大人しくなったがな。ヒューレンフェルト大尉は、逃げられなかったか」


「ええ、そうよ。神兵計画に参加していた軍人達って優秀だけど癖のある連中が多かったからね。神兵計画が中止された後で、彼らは殺されたわ。自宅で家族と共に襲撃されてね。家族の方が惨殺されて、本人は涙を流しながら苦悶の表情で死んでいた。たぶん、アドルフの復讐だと思う」


リノアの説明に、ユルゲン達は何とも言えない視線をアドルフへ向ける。古今東西、教会や寺院、軍隊等ではよく起きる悲劇だ。その境遇には同情もするが、復讐方法がえげつない。だが、当のアドルフはといえば‥‥。


「貴様らがいるから!貴様らが存在するから、俺はあんな目にあった!かつて弱者だった俺は、着実に強者へと変わりつつある。奴等には相応の報いを受けさせた。俺が権力を持った暁には、邪魔な連中もろとも、貴様らのような存在全てを滅ぼしてやるわあああ」


4人に向かって、怒りと憎悪を込め機関銃を撃ちまくっていた。部下達の機関銃まで奪ってでも撃ちまくる様に、狂気すら感じ出す一同。4人は無軌道に放たれる弾丸をかわしながら、車の近くに1人残されたイェーガー大佐へと集まる。


「ちょっと、ロック!かなりヤバイわよ。あの子は私達の存在を完全に滅ぼす気だわ。全く、馬鹿のせいで私達の立場がまた悪くなる。強姦は同性や異性問わず、やったら駄目なのに。これは、軍の連中に教育が必要だな。悪質な奴等は矯正せねば」


ローズの言葉に、プリムとシェルは力強くうなずく。ロマルク帝国軍でもそういった輩も多い。彼らを修正を与えねば、第2、第3のアドルフを産みかねない。


「‥‥こりゃ、レノスキー少将に報告かな?アドルフ=ヒューレンフェルト。奴が権力を握ったら、エウロパは血で血を洗う戦が広がりかねん。よし、お前ら撤収だ!イェーガー大佐、一緒に来て貰いますぜ」


そう言って、ロックはオイゲンを地面から起こすとかつぎ上げた。アドルフの暴走を利用して撤退する算段だったが、彼の野望の一端を知れたのは収穫である。


「‥‥確かにアドルフの暴走は止めねばならんな。しかし、俺の部隊が君達を逃すとは思えんが?」


「イェーガー大佐。まさか、俺達が4人で来たとお思いで?しっかり、援軍は用意してますよ。ユリア、良いぞ。撃て!」


ロックの無線連絡により、10発の煙幕弾と閃光弾がドラーム軍に放たれる。視界を遮られ、迂闊に撃てなくなったユルゲン達。それでもアドルフは撃ち続ける。


「逃がすか!ここで始末してやる。き、貴様ら。何故止める?ぐおっ」


止まらないアドルフをユルゲンとベルントが殴って止めた。アドルフの部隊全員が、彼を助けようと動くもユルゲンが一喝する。


「やめんか!ヒューレンフェルト大尉は心神喪失の為、我輩が指揮をとろう。本来なら副官に指揮権を渡すが、非常時だからやむをえん。従わなければ、この場で銃殺する」


厳格な命令を発するユルゲンに、アドルフの部隊の軍人達は戸惑う。だが、そんな中で1人の女性士官が歩み出る。


「ナーシャ=シュナイダー中尉であります。ヒューレンフェルト大尉の副官をしていますが、今回のライペール少佐の判断を受け入れます。ライペール少佐、御指事を」


「‥‥感謝する。シュナイダー博士の合流地点へ急ぐぞ。ぐずぐずするとバロル大公らの軍に狙われるからな。君らも、ここで死にたくはあるまい!?撤退だ」


ユルゲンの命令に全員が動く。普段のユルゲンからは考えられない言動にベルントは呆気に取られていた。そんな彼を見て、ユルゲンは苦笑する。


「本来は、こんな事はやりたくないがな。イェーガー大佐は捕まり、クリストフは使い物にならん。ならば、我輩が指揮官らしくせねばなるまい。早くイェーガー大佐を助けるぞ。副官の方が気が楽だからな」





次回より、レオナルド達の登場です。

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