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左遷からの成り上がり  作者: 流星明
第3章 ノルディン内乱
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第53話 宰相の失態

宰相の事を書いてます。説明不足な部分が多かった。

ノルディン王国宰相イリオス=フォルベリはローデン准将を迎えるべく、一族や部下らと共に城門と宮殿の中庭で待っていた。バロル大公との和平。これがノルディン、しいては自分達の為になると考えて。そんな彼に補佐官の1人が尋ねる。


「閣下、よろしいので? バロル大公とは不倶戴天の敵同士でありませんか。私は閣下の考えが理解出来ません」


「‥‥私とて、こんな事はしたくない。だが、国際情勢の変動とアレサとの政争で我らは追い込まれている。私はドラーム帝国との同盟堅持をアレサに訴えて来た。だが、アレサは聞く耳を持たず、ドラーム帝国の同盟を破棄。エルゲース王国とフラシア共和国と同盟を結んだ。しかも、我らを政治から除かんとしている。なれば、バロル大公と結び、ヴィクトル王子を王位につけるしかあるまい」


イリオスにしてみれば、アレサは自分達の特権を奪わんとする敵に成り果てた。ヴィクトル王子の王位継承を早めて彼女を幽閉ないし、あわよくば殺害しようと考えている。長い間、権力を欲しいままにしていたフォルベリ家を恨む者は国内に多い。権力を失えば、餓狼のように自分達に襲いかかるのは、火を見るより明らかであった。


「むっ、来たようだな? 待て、何故城門を破壊するのだ。ローデン准将め、よもや裏切りおったか!!」


イリオス達の前で戦車の砲撃によって、崩壊する城門。土煙の中から現れた戦車5両はイリオスの前で止まる。戦車の中から降りた男は彼の前に立つや問い質す。


「これはこれは、イリオス=フォルベリ様ではありませんか? ローデン准将閣下をお待ちと見受けましたが」


「貴官は何者かね? 王城の城門を破壊するとはノルディン軍人としてあるまじき暴挙だぞ」


「失礼しました。私はドラーム帝国陸軍大佐、オイゲン=イェーガーと申します。イリオス閣下と皆様には残念な事でありますが、死んで頂きましょう。ローデン准将との交渉決裂により戦端が開かれ、双方戦死。政府不在のノルディンはドラーム帝国が貰う。そういう筋書らしいのでね。全員、攻撃開始!」


オイゲンの号令に王城内に潜んでいたドラーム兵士達が動いた。左翼、中央、右翼3方向からの機関銃による集中砲火によりイリオス以外の人々が倒れていく。銃撃が止んだ後は、物言わぬ数多くの骸と血の海が広がるだけであった。


「ひ、ひい。ま、待ってくれ。私達が何をした? 確かに、ドラーム帝国とは同盟を破棄した。だからと言って、このような無法は許されんぞ」


「いやあ、俺達を使い捨てようとするドラーム帝国と利用しようとするノルディン連合王国の連中を地獄に落とそうと思いましてねえ。これで、泥沼の内乱に突入。ドラーム帝国はノルディンを手に入れられるし、俺達を使い捨てようとした連中を失脚させられる。なかなか悪どい手を考えた物ですよ。うちの大尉は」


イリオスらを失ったアレサ派は、バロル大公派を許さないだろう。当然、ローデン准将らを失ったバロル大公派も怒り心頭に達する。皮肉にも利用しようとしていたドラーム帝国軍によって、バロル大公は自身の滅亡を近づけてしまっていた。


「だが、我らにはアレサ女王とヴィクトル王子がいる。彼らを‥‥。貴様、何を笑う!!」


「いやいや、何をおっしゃるかと思えば傀儡としていた王族を旗印にするとはね。だが、残念ですな。アレサ女王陛下もヴィクトル王子殿下も旗印足りえない。何故なら、姉弟揃ってバロル大公と王妃殿下の不義の子ですからな。私も最近知って驚いたんですがね」


オイゲンの言葉に、イリオスの顔は土気色に染まる。王国が隠していた秘密をドラーム帝国の軍人が知っているのだ。その驚きと絶望に、顔色が悪くなるのも無理はなかった。


「貴殿方は、先代ノルディン国王陛下をなめすぎでしたな。かの陛下は、自分の死期を悟ると各国の皇帝家と王家にある書簡を送ったそうです。『自分が死んだら、どの国でも構わない。我がノルディンを奪ってくれ。妻や子供、家臣に裏切られた。ならば、私はそんな国を裏切ろう』その後、不義や子供の出生の秘密を書き記していた訳です。この事はエウロパ全土の皇帝や国王は知っていますよ」


愕然とするイリオス。先代国王の義兄として辣腕を振るい、政治を牛耳った男が、まさか傀儡としていた国王の思わぬ反撃に何も考えられなかった。


「う、嘘だ! なら何故、各国はそれを利用しない。取引材料にも使える情報だ。それなのに、どの国も動いていないではないか!」


「簡単な事ですな、アレサ女王陛下ですよ。王位を継承する際、かの姫君は各国に書簡を送りました。『皆様ご存知のように、私は不義の子として生まれました。ですが、自分ではどうしようも無い事です。皆様にはこれからの私の政治を見て頂きたい。もし私の政治が失敗するようであれば、ノルディンを差し上げましょう。もっとも、簡単には渡しはしませんよ』とね。分かりませんか、閣下? 貴殿方は死刑執行書に自分達でサインした事を」


イリオスはようやく理解した。アレサがいたからこそ、各国は黙っていたのだ。さすがに弱冠18歳で女王となった彼女に対し、無体な事をするのは躊躇われた。しかも秘密をあえて開示し、自分が失敗したら国を譲ると言った胆力に各国の指導者は唸る。結果、18歳の少女がどこまでやれるのか。アレサ=デュレールのお手並み拝見と各国は静観の構えを見せた訳だ。


「さて、イリオス閣下。貴方にも死んでもらおう。何、すぐにバロル大公も送りますよ。ノルディンを滅亡に導いた売国奴。貴殿方は、後世の歴史家にそう書かれるでしょうな。それでは、閣下。お元気で!」


「き、貴様ーー! この‥‥」


オイゲンの拳銃から放たれた銃弾で、イリオスは倒れた。拳銃をホルスターに戻し、オイゲンは部下達に命令を出す。最早、イリオス達は眼中に無い。


「アレサ女王陛下とヴィクトル王子殿下を確保せよ。こいつらは打ち捨てて構わん、行くぞ!」











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