第50話 奇策披露
色々あって、更新遅れました。本編の続きです。50話ようやく達成‥‥。
「イェーガー大佐。まずは現状をどうするかです。バロル大公は動かず、アレサ女王は我々の動きを封じてくるでしょう。策はあるのですか?」
リノアの言葉に、全員が注目する中でオイゲンは語り出す。ここ最近、寝る間を惜しんで考えた策を。
「まず、アレサ派の陸軍基地を制圧する。そして、敗残兵として王都付近へと撤退。最後に王都でクーデターを起こす。アレサ派の兵としてな。他にも作戦は考えたがこれしかない。バロル大公を立ち上がらせ、敵の士気を落とすのが目的さ」
「つまり、敵兵に紛れて奇襲をかける訳ですな。だが、成功の見込みは薄いかと。敵に気づかれずに、陸軍基地をどうやって制圧する気です?」
この作戦は、薄氷を踏むように慎重を期さねばならない。どこかでしくじれば1巻の終わりだ。アドルフの疑問にオイゲンは答える。
「バロル大公の軍内には、アレサ派に家族や親戚がいる将兵も多い。彼らを利用するのさ。『バロル大公にはもう従えない。だから投降する』と言わせて基地内に入る。俺の部隊は彼らと共に行動し、隙を狙って基地を制圧。ヒューレンフェルト大尉の隊は、無線封鎖と基地の外に出る敵兵を倒して欲しい」
オイゲンの説明にアドルフは頭をかきむしる。自分も色々と考えていたが、どれも決め手にかけていた。対案が無いのなら従うしかない。
「‥‥それしかないか。リノア、バロル大公を説得しろ。ここまできて、反乱を止めてもアレサ女王は許さんとな。座して死ぬか、抗って生きるか、2つしか選択肢は無いと言え!」
「はあ、了解。脅しまくって、後に引けないようにするわ。でも、オイゲン大佐。偽りの投降をさせる将に心当たりはあるの?その人に裏切られても作戦は失敗よ」
レイアの懸念にオイゲンは不敵に笑う。既に話を通してあり、ここに来るよう伝えてある。その時、ドアをノックする音が室内に響いた。ベルントは銃をホルスターから抜き、ドア越しに声を掛けた。
「どちら様ですか?」
「こちらにいるイェーガー大佐に呼ばれた者だ。戦う前から負けそうになっている大公閣下の参謀さ。入ってもいいか?」
ベルントが慌ててドアを開けると、眼鏡を掛けた中年男が入ってきた。軍服は着崩れ、無精髭が目立つその男はバロル大公の参謀として名高いミカエル=ローデン准将だった。
「邪魔するぜ。おっ、なかなかの美人だ。どうだ?俺とワインでも飲んで、ベッドの上で朝まで夜の運動するか?」
入って早々、リノアを口説き始めるミカエルにアドルフは呆れる。無類の女好きと言う噂が本当だと証明されたからだ。
「おあいにく様。私の相手は、ベルントがしますので結構ですわ。彼は閣下を超える夜の達人ですもの。私の屋敷にいる女性使用人の数人を満足させ、完全に従わせているのですから」
ミカエルの口説きを軽く一蹴するリノア。その場の男性陣の視線がベルントに集中する。大人しい顔して、とんでもない絶倫男であった。呆れや妬み、驚きの感情を含む視線にさらされ、ため息をつくベルント。
「リノア、今それ関係無いでしょ?それに、僕だってしたくてしたかった訳じゃないんだからね!」
ベルントは現在、リノアの屋敷に居候している。そこは彼女の強い意向で、使用人は全て女性で統一されていた。しかも屋敷が帝都郊外の深い森の奥にある為に、外界とは離れている。そんな中に男が入って来たのだ。男に飢えた何人かの女性が、ベルントを狙うのはある意味必然だった。
「その話は後にしてくれ。ベルント君、意外に強者なのだな。それはさておき、ローデン准将。ここには女性を口説きに来た訳ではないでしょう。それで、例の件は引き受けて下さるので?」
「引き受けるぜ。アレサ女王を泣かせてやろうじゃないか。このままじゃあ、じり貧だからな。上手く騙してやろう」
アレサの泣き顔を想像し、凶悪な笑みを浮かべるミカエル。こうして作戦は始まる。主役になるはずのアレサ女王でもバロル大公でも無い。オイゲン=イェーガーによって、ノルディン内乱の火蓋は切って落とされる事になった。
ベルントは私生活でも結構苦労しています。いずれ、幕間で書く予定。
次回、オイゲン達が王都にて作戦を開始します。レオナルド達は海の上。




