第47話 アレクセイとの出会い
「皆さん、初めまして。アレクセイ=ブレジネフ中佐です。フォンターナ中佐の隊に配属され、光栄に思います。今回の任務限定ではありますが、よろしくお願いします」
そう言って、敬礼する青年はフォンターナ率いる隊の人々を見渡す。優秀だが曲者揃いの隊を見て、アレクセイは面白いと感じた。
(父上やウラディミルが認める訳だ。空中分解してもおかしくない面子をまとめあげるんだからな。君の人柄と実力を存分に見せてもらおう。さて、まずは‥‥)
レオナルドにアレクセイは近付くや、特大の爆弾を見舞う。
「フォンターナ中佐、腹ペコ死神との逢瀬はどうだい? 抱き心地は最高かな?」
「い、い、いきなり何?そ、そんな事、ブレジネフ中佐には関係ない!」
「スタンコ少尉、君には聞いてない。冷静になるんだね。そんな態度じゃ、フォンターナ中佐に抱かれていると認めたも同然だよ。意外と可愛い所があるじゃないか、君は」
顔を真っ赤にして怒るエルザに、忠告するアレクセイ。そして、周りの人々の様子を監察する。驚いているのはレナニートやグレゴール。にやけているのはボルフ。新人士官や兵士達は、畏怖の念でレオナルドを見つめる。そして、もっとも感情の振れ幅が大きかったのが‥‥。
「ず、ずるいよ、エルザ!抜け駆けするなんて。僕もレオナルド様に抱かれてないのに」
サーラは怒りと妬みの感情を込めて、エルザを睨み付ける。レオナルドは慌てて、アレクセイを止める。
「‥‥ブレジネフ中佐。お戯れはそこまでにしてください。皆も静かに!これより、我々はノルディン連合王国に向かう。バロル大公やドラーム帝国が、ロマルク帝国との和平を黙って見ているとは考えられない。気を引き締めて行動してくれ。以上だ、出発」
「「「「り、了解!!」」」」
レオナルドの号令の下、部隊全体が動き出す。先頭の指揮車に乗り込むのは、レオナルドとアレクセイ、レナニートの3人と運転手たるエルザだ。出発からしばらく経って、レオナルドはアレクセイに苦言を呈する。
「アレクセイ殿下。あまり派手な言動はお止めください。正体がばれてしまいます」
アレクセイ=イヴァ=ロマルク。ミハイルの息子にして、第4皇子である。母親が皇后の侍女であった為に、宮中では迫害されていた。アレクセイは、そんな逆境に負けず努力する。文武両道を貫き、士官学校を首席卒業。結果、その実力がウラディミルの目に止まり、影の騎士の一員として働くまでになった。
「さすがのフォンターナ中佐も恋人との情事を問われるのは恥ずかしいか。私は正直驚いているのだよ。スタンコ少尉が、男に興味を持った事にな。私の友人からの情報では、少尉はレズビアンだと聞いていた。事実であろう? スタンコ少尉」
「‥‥だから、何? レオには話をしてある。私は女も愛せるって。レオは驚いたけど、受け入れてくれたもの」
「何で俺は友人の恋人の性癖を知ってしまうんだろうか。どうして殿下が、そんな事を知っているのでしょうか?」
突然のカミングアウトに、レナニートは頭を抱える。と言うか、アレクセイが何故、その話を知っているのかが不思議でしょうがない。
「オーブルチェフ少佐。私も下世話な話はしたくないさ。だが、仕方あるまい。イダルデ王族とドラーム帝国が作りし神兵が恋仲なのだからな。その子供がロマルクにとって、災いとなるか幸福を招くかは見定めないといかん。イザベッラ姫が死んだからな。イダルデ王国復興にかける連中は、フォンターナ中佐を担ぎ上げようとするだろう?」
イダルデ王家の血脈と神兵の力を得た子供など恐ろしすぎる。仮にイダルデ解放軍の代表ともなれば、瞬く間にイダルデ半島で一大勢力を築く可能性が出てくる。イザベッラでは無理だが、レオナルドやその子供ならありえそうだ。そんな想像をしたアレクセイをレオナルドは一笑に付した。
「やはり、皇帝陛下もレノスキー少将閣下もご存知でしたか。ですが、ご心配無く。小官もスタンコ少尉もロマルク帝国に弓を引くつもりはありません。今の所は、ですが。しかし、イザベッラが死んだのは良かった。自分で止めを差せなかったのは残念ですがね」
「おー、怖い怖い。つまり、不利益と考えれば反旗を翻す訳だ。そうならぬよう、私も努力せねばならぬな。差し出口を聞いたイザベッラ姫は魔王によって排除された。後は和平を締結し、バロル大公とドラーム帝国を倒すだけだ。そこで今回の任務だが‥‥」
レオナルドの発言に気を引き締めたアレクセイは、改めて3人に自分の任務を告げる。
「まず、和平交渉で兄貴を援護しつつ、締める所は締める。バロル大公との内乱にも加わり、後方支援を行う。それが、私に与えられた任務だ。フォンターナ中佐、オーブルチェフ少佐。そして、スタンコ少尉。力を貸してもらうぞ。下手をすると娼館に入り浸る可能性がある絶倫男だからな。よろしく頼むぞ」
第4皇子アレクセイの評価
ミハイル「何ともつかみ所がない息子だ。賢明なのか、愚劣なのか分からん。とはいえ、才はあるようだ。見定めねばな」
ウラディミル「なかなか面白い皇子殿下ですよ。私の部下として、働いているが優秀でありますしね。ただ、女好きなのは珠に傷ですが‥‥」
ボリス「ふん、ただの女好きよ。しかも、年上好きときた。熟れた果実よりも若い新芽の方が良いのにな。女の何たるかを知らん奴だ。あれ、母上。何で鞭を持ってるんです? や、止めて下さい。また、少女を買ったのはすい‥‥。ぎにゃあああ」
レオナルド「全く、エルザとの付き合いをばらすとは。困った皇子殿下です。まあ、他の皇子殿下よりは優秀そうですから、様子見といきましょう。次代に誰に従うのを選ぶか。それで人生が決まってしまうからな」




