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左遷からの成り上がり  作者: 流星明
間章 休暇中の出来事
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第46話 皇帝と魔王 後編

レオナルドについて、皇帝とウラディミルの会話です。

「‥‥フォンターナ中佐か。ウラディミル、彼をどう見る? 優秀なのは間違い無いが、その忠誠心は何処に向いているのか。時折、分からない所があるからな」


「彼はイダルデ解放軍に復讐すべく、ロマルク帝国に亡命しました。そのイダルデ解放軍は風前の灯。つまり、彼の目的は半ば達成されているのです。しかし、ご安心を。サーラ=ルイシコフ技術中尉に命じてあります。フォンターナ中佐の監視をね。彼もそれを知っており、排除しようとしていません。彼には出来ないのです」


ウラディミルは確信していた。レオナルドは女性に危害を加える事が出来ない。幼馴染みモニカの死が、彼の心に大きなトラウマを残している。例え、敵であっても女性は殺せないだろう。


「ふむ、甘いな。とはいえ、幼少期に恋人の凄惨な死に様を見ては仕方あるまいか。だが、例外もあろう?」


「イザベッラ姫ですな。しかし、彼女は死にました。フォンターナ中佐に例外は最早ありません。後は、サーラ嬢に任せましょう」


ウラディミルは、婚約者となったサーラに女性隊員に命じて、ある仕掛けを施していた。貴族令嬢たる彼女に夜の技術を徹底的に学ばせたのだ。成長著しいサーラによって、レオナルドはもちろんエルザですら懐柔出来ると考えている。


「隙がないな。だが、ウラディミルよ。時に、策を凌駕するのが人だ。サーラ嬢が逆に取り込まれねないかも知れんぞ?」


サーラは諜報員ではない。貴族令嬢の教育を受けているとは言うものの、感情に身を任せてロマルク帝国を裏切る可能性も考えられる。ミハイルの不安をウラディミルは軽く払拭させる。


「その時は、別の策を立てるまでですよ。本物の諜報員を飛び込ませる事も考えていますから。とりあえず、まずはフォンターナ中佐にノルディン連合王国での任務を頑張ってもらいましょう。皇太子殿下のお守り。ドラーム帝国との戦争に加え、アレクセイ殿下の護衛もありますからな」


「どれも一筋縄ではいかん任務だな。しかし、ドラーム帝国はノルディンの内乱に加わる気なのか? この状況下で」


同盟崩壊に加え、度重なる失政の影響でドラーム帝国内部は不穏な空気に包まれていた。そんな時に外国の内乱に加担してる場合だろうか。当然すぎるミハイルの質問に対し、ウラディミルはため息をつきながら答える。


「ドラーム帝国としても必死なのですよ。イザベッラ姫の暴走の結果、ノルディン連合王国が最後の生命線になりました。反乱を画策したバロル大公も後には引けますまい。既に、ノルディン陸軍内部ではアレサ女王に鞍替えする者も出てきたようです。早く行動を起こさねば、じり貧に陥りますからな」


「アレサも正念場だな。しかし、ノルディンが泥沼に陥れば我が国としても動かずにはおれまい。ウラディミル、念のために陸海軍を軍港に集めておいてくれ。すぐに対応出来るようにな」


「かしこまりました。指揮官はいかがなさいましょう。暇をもて余すイワン皇子殿下がやる気になりそうですが」


イワンは現在中将の地位にあり、一個師団の師団長として帝都にいる。将としては優秀で、先のトルド帝国との戦争において撤退戦を見事に指揮してみせた。だが、ミハイルは首を横に振る。


「駄目だな。単なる戦争なら任せられるが、今回は政治も絡む。海千山千の古だぬきが出てきても、奴にはとても御しきれまい。何かあれば、余が直々に出よう。イワンは帝都で留守番だな」


様々な思惑が交錯する中で、バロル大公の乱と後世に伝わる戦いが幕を開ける。この戦いは小規模な小競り合いが何回かあったにすぎない。だが、第2次エウロパ大戦において、後に重大な事態を引き起こす事になっていく。


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