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左遷からの成り上がり  作者: 流星明
間章 休暇中の出来事
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第43話 ノルディン情勢

色々と忙しくやっと更新出来ました。

「つまり、私の隊はハブられたか」


「仕方ないですな。ノルディン連合王国との和平交渉は、ロマルク帝国にとっても重大事。全権大使は皇太子ボリス=ロマルク殿下が任命されました。皇太子殿下は、色々と揉め事を起こす貴方を嫌っております。まあ、当然ではありますな」


ずけずけと物を言うガスパー。レオナルドとボリスとの関係が悪いのは、スダール少将やブレディエフ大佐といった皇太子派の人々を直接及び間接的に失脚させたからだ。彼ら自身の素行の悪さが原因であり、擁護も弁護もとても出来るものではないのは事実。とはいえ、失脚させた張本人に対する恨みはある。


「だからといって、レオや私達を外す訳にはいかない。私達とアレサ女王陛下が会いたいと望んでいるから。そこで‥‥」


「本来の任務たる物資輸送の任務を任せるようね。私の可愛い坊やが教えてくれたわ。『フォンターナ中佐は、蚊帳の外。今回は我らが手柄を独占する』ってね。問題は、すんなり和平が出来るか何だけど」


そう言って、ユリアはガスパーの方を見る。彼はげんなりした様子で、質問に答えた。言外に、彼らの予測が甘すぎると言わんばかりの態度だ。


「この状況をドラーム帝国の連中が黙って見てる訳がない。向こうに潜入している諜報員に確認してみた。奴らは、女王陛下の叔父たるバロル大公と連絡を密にしている。加えてドラーム帝国の軍人達が、秘密裏にノルディンへと渡ったらしい。どう考えても介入する気満々ですよ」


ガスパーはその仕事柄、各国の商人達と付き合いもある。ドラーム帝国の商人某が、情報料と引き換えに教えてくれた話を語りだす。場所は軍港キーメの商船や客船用の船着き場。客船乗り場で行列を並んで待っていた所、突然大勢の労働者達が現れて先に乗り込んでいったと言う。


並んでいた乗船客が抗議するも港湾管理者は、『彼らはノルディン側の要請で、我が国が送る労働者達です。優先権は彼らにありますので、申し訳ありませんが皆様には次の便で乗船願います』と言うだけであった。その商人は客船に乗れず、商談が流れたと憤慨していた。


「がたいが良すぎる労働者で、明らかに作業服が似合ってない連中もいたと言う話を他の人々から聞きましてね。こりゃあ、変装した軍人だなと簡単に推測出来ましたよ」


「民間船を使ったのは目眩まし目的? 確かにドラーム帝国海軍の輸送船がノルディンに向かえば、悪目立ちするのは分かる。けど、まるで隠しきれていないわ。何らかの策なの?」


「エルザ姉さん。恐らく、ノルディン側への圧力では? ドラーム帝国軍が裏で動いていると見せて、バロル大公には内乱をそのまま決行させる。女王陛下にもドラーム帝国が介入している事を分からせた。そうする事で、彼女にバロル大公と彼らが裏で繋がっていると再確認させたのでは?」


内乱が起きない可能性を考えて、仕掛けを行ったとすれば合点がいく。バロル大公がドラーム帝国軍を引き込んだ。そう、アレサが考えればしめたもの。同盟国とはいえ、他国の軍隊を国内に勝手に入れたのだ。バロル大公の反逆は確定し、両者は戦うしかなくなる。なかなか悪辣な計略と言って良い。


「仕掛けたのはルーテンドーフ陸軍参謀長です。自分の部下とイェーガー大佐の部隊をノルディンに送り込んでいます。それが、俺の話に出た奴等みたいなんですよ。とある筋からの情報でして‥‥」


「ガスパー、民間人が知るべきでない事も知っているな。とある筋というのは、レノスキー少将閣下であろう? あの方が帝都にいる君達を放置するとは思えんからな」


「さすがですね。確かに、レノスキー少将閣下と我々は一種の同盟関係にあります。普段より、相互に情報を提供していますからな。もっとも、軍事機密は教えてくれませんでした。例えば、貴方の正体とかね」


ガスパーがレオナルドの正体を知ったのは、イザベッラからエルザに対して放たれた刺客を始末した時だ。彼らに対する拷問によって、レオナルドとイザベッラの関係やマルコ=フォンターナの亡命の原因。イダルデ解放軍の組織内情報を得ることが出来た。


「しかし、あのイザベッラ姫は何を考えてるんですかね?ノルディン連合王国に乗り込むらしいですよ。『アレサ女王に真意を問う』とか。まあ、真の理由は貴方に会いたいのでしょうがね」


「‥‥もう、止めてくれ。これ以上、イダルデ王家の恥を世界に広げて欲しくない。途中で船が沈んでくれないかな?」

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