第42話 女王様と情報屋
こんな2人ですが、腕は超一流です。
「ここが、ガスパーとユリアの店。早速、中に入りますよ」
レオナルドとエルザが訪れたのは、帝都サンベルクの歓楽街にある2階建ての店舗であった。まだ人通りが少ない通りに、看板も出してない店。エルザは慣れた手つきで、ドアをノックして開ける。たが、目の前で展開されている光景を見て2人は固まってしまった。
「ほら、この馬鹿! お仕置きだよ。私の鞭をくらいな!」
「あっつ! すごいよ、ユリア。何か魅惑の扉が開きそうだ!」
ドアの先では、ガーダーベルトに黒のボンテージ姿の女王様が男を足蹴にし、鞭で尻を叩いていた。どうやら、彼らがガスパーとユリアらしい。呆気に取られるレオナルドを尻目に、エルザは勢い良くドアを閉めた。憤怒の表情を浮かべて。
「レオ。ちょっと、待ってて。変態を成敗する」
「‥‥‥‥世の中色々な人間がいるな。しかし、あの2人大丈夫か?」
怒りの収まらないエルザは、ドアを勢いよく開けて中に入っていった。しばらくして、戦場で恐れられる腹ペコ死神の怒号が辺りに響く。
「ガスパー、ユリア! 日も高いうちから何してる! お仕置き」
「ちょっ、エルザ姉さん。姉さんのお仕置きは洒落になら‥‥、きゃああ」
「俺、ある意味被害者‥‥。ぐふっ」
激しい物音と共に断末魔の声が店の中から聞こえてくる。しかし、周りの人々はまるで意に介さない。レオナルドは不思議に思って、近くにいた体格の良い男とお婆さんに聞いてみる。
「すみません、これって日常茶飯事なんですか?」
「あん? 兄さん、この店は初めてかね。ユリアの女王様振りは板についてるんだよな。さすが、貴族連中にも顧客がつくだけはあるぜ」
「何でも、言葉と鞭の扱いが絶妙なんだってさ。全く大した娘だよ」
会話の中で、ガスパーの存在感がまるで感じられないレオナルド。それとなく聞いてみる。
「ガスパーの店ですよね、ここは?」
「そうだよ、兄さん。とはいえ、ガスパーの奴は目立たねえんだよな。ユリアが激しいもんだから、どうしても影が薄くなる」
「あの娘もきついからねえ。ガスパーも大変なのさ。兄さんも気をつけないと」
そう言って、2人は去っていく。残されたレオナルドは、エルザが出てくるのを待っていた。しばらく経ち、エルザが2人と共にようやく出て来る。
「やっと会わせられた。ガスパーとユリア、挨拶する」
「ううっ、ユリア=スタンコです。先程は失礼しました、中佐殿」
「エルザに殴られた所、まだ痛いな。初めまして、フォンターナ中佐。ガスパー=スタンコです。とんだ所をお目にかけましたね。まずはお近づきのしるしに、これを」
エルザからのお仕置きを受け、普段着に戻ったユリアは涙目だ。一方、ガスパーは殴られた頬を気にしながらも飄々とした様子である。そんなガスパーから見せられたのは、今回のノルディン連合王国との和平に関しての報告書だった。帝国内での今回の和平に対する貴族の立ち位置や商人達の動向。ノルディン連合王国を始めとする周辺諸国の動静等が書き記されていた。驚くレオナルドに、ガスパーは片目をつむる。
「情報源は数多く、貸しが多い貴族やお偉方も多いのですよ。これからはエルザ姉さん共々、よろしくお願いします」
勉虚不足の点が多い事を実感する日々です。創作の難しさを実感しています。




