表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
左遷からの成り上がり  作者: 流星明
間章 休暇中の出来事
44/96

幕間 これが、現実か‥‥

彼女達はエルザの部隊に所属しています。強さはボルフ達や影の騎士と互角です。

「はぁ~~い。ボルフちゃん、元気してた?相変わらず、良い筋肉ねえ。昔は小さかったのに、こんな立派になって。部下の子達も可愛いわああ」


「‥‥いや、その」


「どうしたの、黙っちゃって。こういう所は初めてなのかしら?お姉さんが色々と教えてあ・げ・る」


「ま、間に合ってます~~」


「オルバちゃんって言うのかあ。この子イケメンね。食べちゃいたいわ。ねえ、お部屋で良い事しましょうよう」


「ううっ、勘弁して下さい」


目の前にいるボルフ達の目は死んでいた。天国から地獄に突き落とされたのだから、無理もない。ここは娼館のはずだった。先程までは娼婦のお姉さん達が店にいたのだが、レオナルド達が入って来ると瞬く間に姿を消し、かわりに現れたのが彼女達だった。男でありながら乙女の心を持つ人々。レオナルドも見るのは初めてである。


「驚いたかい、フォンターナ中佐殿。こういう奴らも世の中にはいるのさ。覚えておいて損は無いぜ」


「ええ、驚き‥‥」


レオナルドは声のする方へ振り返ると固まってしまう。カウンターの中で、メイド服を着た初老の男が立っていたからだ。眼帯を左目にかけ、顔や腕、足等いたる所に古傷が残っている。鍛え上げられた体のせいで、今にもメイド服がはち切れそうだ。歴戦の兵士と見える男はレオナルドに頭を下げる。


「いらっしゃいませ、ご主人様。俺の名はロック。あそこで死にそうになっているボルフの元上官だよ。あの野郎。上官を利用して、うまい汁を吸おうって考えているようだが、そうはいかねえよな」


そのボルフは、体の筋肉がとても素晴らしい3人の女性?に囲まれ震えている。何でも彼女達も元上官や同僚だったらしい。


「ボルフちゃんたら、最初の戦闘で失禁しちゃったわよね。泣き虫で弱音ばかり吐いてたし。そんなボルフちゃんが、中尉まで出世するなんて思わなかったわ」


「素行に問題あったもんね。朝帰りは当たり前。賭け事でお金は使い込むし。何度、鉄拳制裁したかしら?」


「どうやら直ってないようね。性根を叩き直すから、今日は朝まで付き合ってもらうわよ」


「‥‥‥‥はい」


騎士の情けで聞かなかった事にしようとレオナルドは考え、カウンターにいるロックとを見る。昼間、帝都の大通りを歩いていれば確実に警察に捕まるであろう人物。慣れはしないが、勇気を持って話しかける。


「あーー、ロックさん。貴方、いったい何者です?」


「俺は、歓楽街の用心棒さ。この姿で行けば、喧嘩もピタリとやむんだよな。しかも、勝手に喧嘩してる奴らが逃げていきやがる。女装は俺の趣味でね。ここじゃ、誰も文句を言わねえから楽しくて仕方ねえ」


ロックのあんまりな言葉に、頭が痛くなるレオナルド。メイド服を着た強面の男が銃を片手に突っ込んで来たら、どんなチンピラでも逃げ出すだろう。


「女装する切っ掛けは何だったんです?何か理由があると思うのですが」


「俺は20年近く軍にいた。戦場でのストレスで精神的に参って自殺でもしようと考えた時に、出会ったのが彼女達さ。不思議なもので、彼女達の明るさと元気さに救われたよ」


最初は上官に付き合わされて、店に来るのは嫌々だったロック。しかし、通う内に楽しくなり、いつしか常連になってしまったようだ。結果、ストレスも発散されうつ病1歩手前だった精神も安定を取り戻していったらしい。


「付き合って楽しい連中だが、偏見や差別を受けていた。歓楽街でも、1番下に見られているからな。苦しんでる彼女達を守るべく、軍を除隊して用心棒になったのが始まりよ。これは彼女達に近付く為に着てるのさ。まあ、俺自身はノンケだけどよ」


「えっ!そうなんですか?てっきり‥‥」


「こう見えて、女房も子供もいるんだ。あくまでも仕事着感覚さ。さすがにこの格好で家から通勤はしねえよ。子供達や年寄りにトラウマを植え付ける訳にはいかんからな」


意外と常識があるロックの考えに、レオナルドは驚く。そんなロックに対して、レオナルドは気になっていた事を尋ねる。


「ところで、ロックさん。これって、エルザの仕込みですか?」


「ああ、そうさ。エルザの嬢ちゃんは、彼女達のスポンサー兼後ろ楯でな。嬢ちゃんのおかげで、随分待遇も良くなったよ。いじめる馬鹿も減ったしな。エルザ相手の喧嘩は誰もしたくないからよ。今回の件は、嬢ちゃんに『ボルフの奴らをこらしめて欲しい。最近、調子に乗ってる奴もいるから締めて』って頼まれてな。彼女達も‥‥。こりゃあ、まずいかな?」


ロックの言葉に、レオナルドが振り返る。見れば部下達が、お姉さん方の部屋へと引きずりこまれそうになっていた。必死に逃れようとする部下達。たが、彼女達は強い。次々と部屋へと放り込まれる。


「はーい。1名様、ご案内~~。うふ、優しくしてあげるわよ」


「じゃあ、私はこの子にするわ。本当はフォンターナ中佐が良いけどね。エルザちゃん怒らせたらまずいし、諦めるわ」


「早く、来なさいよ。‥‥おい、いい加減腹くくれや!隊長の七光りで甘い汁すすろうとする性根、叩き直してやるわ」


「「「「隊長~~、助けて下さい!!」」」」


抵抗虚しく部屋のドアが閉まり、静まり返る娼館。残されたのはレオナルドとボルフのみであった。ロックはレオナルドの肩を叩き、帰るように告げる。


「フォンターナ中佐殿、今日は帰って良いぞ。これから、ボルフと大事なお話があるからよ」


「た、隊長。頼む、助けてくれ。俺達が悪かった。だから‥‥」


ボルフの救援要請をロックが顔を殴る事で黙らせる。その迫力にレオナルドも何も言えない。


「ボルフ、諦めろや。往生際が悪いぞ。そうそう、フォンターナ中佐殿。部下の連中は心配するな。あいつらも嫌がる奴らを手込めにはしねえから。精々、脅かす位さ」


「‥‥分かった。後はあなた方にお任せしましょう。ヤルステイン中尉、幸運を祈る」


断腸の思いでレオナルドは敬礼し、踵を返してドアを開ける。これから起こる真の地獄から逃れる為に。


「ち、ちょっ!隊長、そりゃあ‥‥」


「さて、ボルフ。久々に相手してやるぜ!体は鈍ってねえだろうな?」


ロックは、そう言ってレオナルドとボルフの間に割って入る。すかさず、3人の女性?がボルフを囲んだ。


「あーーん、ロックずるい。私が1番よ」


「ちょっと私よ、私。必殺技のラリアットをぶちかましたいわ」


「あんた、それで何人あの世行きにしたと思ってんの。まっ、ボルフちゃんなら耐えられるわよね?」


レオナルドが娼館を出るとドスの聞いた声が辺りに響く。説教タイムの始まりらしい。この惨状を見て、レオナルドは誓う。絶対にエルザを怒らせてはいけないと。












翌日のボルフ達。


「死ぬかと思った。エルザの奴、容赦がねえよ」


「2度としません。隊長、スタンコ少尉。ごめんなさい」


「敵と戦った方がましです。本気で死を覚悟しました」


翌日のロック達。


「エルザの嬢ちゃんの為だ。お前ら、ノルディンに行くぜ」


「あーーん、楽しみ。ノルディンってバイキングの国よね。良い男たくさんいそうだわ」


「ドラーム帝国も来てるのね。あっちの男達も気になる~~」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ