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左遷からの成り上がり  作者: 流星明
間章 休暇中の出来事
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幕間 ボルフによる男修行4

休暇中の続編です。ボルフ達が悲惨な事になっていきます。

「ふう、どうなるかと思ったが助かったぜ。さて、隊長。飲みましょうや。隊長の勝利に乾杯!」


「「「「「乾杯!」」」」」


酒場の中で、ボルフの音頭に応じる隊員達。レオナルドは、彼らの借金分を支払いカジノを後にした。オーナーのルーブルは帰る際、レオナルドにこっそり耳打ちする。


「なかなかの手並みでした。さすがは、あのエルザの男ですな。勝敗のさじ加減も分かってらっしゃる。また、お越し下さい。今度は負けませんよ」


エルザのカードゲームの強さは裏社会でも有名である。大勝ちせず、勝敗のさじ加減も忘れない為、多くの軍人が彼女の手練手管に泣いた。勝ったお金は、食料を購入する資金に回してたらしい。


『賭け事は、ほどほどに勝つのが大事。勝ちすぎると妬まれたり、相手をしてくれなくなるから。食べ物が掛かってたから、必死に勉強もした」


レオナルドにもその手解きをしており、今回の勝ちに繋がった訳だ。とはいえ、酒を飲み陽気にはしゃぐボルフ達を見て、ため息をつく。借金分の金はそれぞれに返したが、それはあくまでも一時的な処置だ。彼らの借金は立て替えたのであって、きっちり請求する。その為にルーブルから、証明書までもらったのだから。


「‥‥後でちゃんと彼らの家族に請求しよう。今回は勝てたが、いつも勝てるとは限らんからな。賭け事は」


「どうしました?隊長、この後はお楽しみが待ってますからね。酔い潰れないで下さいよ」


「こちらの台詞だ、ヤルステイン中尉。そちらこそ倒れたりするなよ」


すっかり出来上がっているボルフ達。早いものでエールを3杯開けている。レオナルドは自分のペースを守りながら、ウインナーやビスケット、フライドポテトをつまみに飲み続けた。そして、部下達の様子を観察する。


「俺達、ようやく陽の目を見られて嬉しいぜ。隊長のおかげだ」


「周囲の俺らを見る目が変わったもんな。女にゃモテるし、最高!」


「貴族になんかに負けねえぞ。これからもっと出世してやる。おーい、姉ちゃん。エールをおかわり!」


今まで日陰の身の上だったからか。嬉しそうにはしゃぐ部下達を見て、レオナルドは冷静に考える。部隊の士気を引き締める必要があると。


(ふむ、未だ実戦は1回しか行っていない。それに先の戦いは、正直エルザがいなかったら詰んでた。ヤルステイン中尉は分かっているだろうが、部下達は分かっていまい。さて、どうするかな?)


レオナルドが、考えこんでいるとボルフが席から立ち上がる。部下達を見渡すや、手を叩いた。部下達がボルフに注目する。


「よーし、酒は飲んだな。これから娼館に繰り出すぞ。隊長が行けば、お近づきになりたい女は必ずいる。隊長を餌に、良い女を呼ぶぞおお!」


「「「「さすが、中尉。頭が良いぜええ」」」」


騒がしくなる中で、レオナルドはある事を思い出す。それは家から出かける時に、エルザが告げた言葉であった。


『娼館に行っていいけど、ボルフ達の目論見は外れる。ふふっ、生き地獄を味わうといい。レオには手出しをしないように伝えてある。楽しんできてね♪』


その時のエルザからは、凶悪な鬼気が体から溢れだしていた。あの父マルコ=フォンターナがドン引きするレベルなのだから、押して知るべし。


「さて、何が起きるか分からないが行くかな。‥‥かなり嫌な予感がするけれど」


こうして、レオナルド達は娼館へと向かう。そこは、まさしく地獄であった。


後日の話だが、レオナルドはボルフ達の家族に借金返還の請求書を送っている。奥さんや親に散々に絞られ、家族共々ボルフ達は謝りに来た。頬が紅葉だらけの奴や青アザを作っている者。奥さんに頭を足で踏みつけられ、土下座する者を見てレオナルドは考える。


(賭け事は小遣いの範囲でやろう)


ボルフ達の悲惨な状態を見て、心からそう思うのだった。



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