幕間 ボルフによる男修行3
「勝ったり、負けたりだな。だったら、この辺で勝負を賭けるべきか?」
そう言って、レオナルドはチップを全て賭ける。周りで見ている者達はどよめく。何故なら15000ルーブルを全額だからだ。勝負に出たレオナルドを見て、シャイアは笑みを浮かべる。
「あら、良い度胸じゃない。負ければ意味が無いけれどもね。カードを配るわよ」
シャイアはカードをシャッフルし、レオナルドの前にカードを出す。カードの合計は20。レオナルドに圧倒的有利な状況となり、ボルフ達は歓喜する。借金が無くなるうえ、娼館で豪遊出来そうだからだ。しかし、レオナルドは冷静であった。シャイアの表情は伺えないが、何か嫌な予感がする。シャイアのカードの数字は2。ここから21を目指さねば行かない状況。だが、妙に落ち着き払っているように見えるのだ。
「‥‥サレンダーしよう」
自分の勘を信じ、レオナルドは賭けを降りる選択を取った。有利な状況を捨てるレオナルド。周囲の人々の困惑や戸惑いが場を支配する中で、無表情を貫くシャイアは念を押す。
「本当に良いのかしら?勝利がほぼ確定してるのに、勝負を捨てるだなんて。規則通り、降りるなら賭け金の半分を頂く事になるわよ」
「勝つのは8割を持って良しとするのが、兵法の基本だ。それに勝ったと思った瞬間が、最も敗北しやすいからな。さあ、遠慮無く半分持っていってくれ」
レオナルドは立ち上がると半分のチップを換金すべく、テーブルを離れた。その様子を見たボルフはシャイアに尋ねる。
「なあ、あんたの手札はどうなんだ?ちょっと見せてくれよ」
シャイアは黙ってカードを引く。次のカードは10だった。合計12で、残りの数字は9。そして、その次に引くカードは‥‥。
「9だと!もし、隊長が勝負してたら全額持っていかれてた。降りたのは正解だったのか!」
ボルフの言葉に、驚きやレオナルドへの賞賛を口にする人々。ルーブルは、怒りに震えるシャイアを見て同情を禁じ得ない。シャイアはレオナルドを負けさせるべく、カードを操り自分が勝てるように仕向けた。だが、それに感付いたレオナルドは降りる事で被害を最小限に食い止めたのだ。
「‥‥ちょっと失礼」
怒りが我慢の限界を越えたシャイアは、レオナルドを追いかける。その頃、レオナルドは換金を終え、ボルフ達の借金を黒服に返している所だった。
「これでヤルステイン中尉達も懲りれば良いのだがな。で、シャイアさん。何か用事ですか?」
「貴方、分かってたの?私が仕掛ける事を」
「正直、勝ちすぎたからな。どこかで大きく負ける必要があった。貴女が出てきて助かりましたよ。最初のディーラーよりも上手いですから」
シャイアは心の中が荒れるのを必死に押さえる。レオナルドの筋書き通りに動かされたからだ。この時、シャイアの心に強烈な感情が芽生えた。後にレオナルドはこの日の事を後悔する羽目になる。
(今に見てなさい。私を怒らせたらどうなるか、思い知らせてやるわ)
ボルフ達は救われましたが、後にレオナルドは大変な目にあいます。シャイアによって。
修正 ブラックジャックの最後のシーン、7ではなく9でした。




