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左遷からの成り上がり  作者: 流星明
第2章 オイゲンの受難
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第33話 酒と涙と詩と嘆き節

約2名出来上がっています。

波乱と絶望の同盟会議が終わった日の夜。オイゲン達は酒場に繰り出し、エールをソーセージとザワークラフトをつまみに飲み始めた。話題はノルディン女王アレサの行動と帝国への影響についてだ。


「クリストフ、元気出せよ。しかし、ノルディン連合王国離脱か。あの女王陛下は賢いな。イザベッラ姫とは比べ物にならん。自分の国を守る為にイダルデ、ギレブーを生け贄にしやがった。なかなかの悪だぜ」


「我輩が見るに、アレサ様はイダルデとギレブー両国の参戦を知っていた。加えて、この時期でのエゲレース王国とフラシア共和国との同盟を成立させるとは。なかなかの雌狐ではある」


「はあ、大変な事になりましたね。あ、お姉さん。ソーセージ追加で」


オイゲンとユルゲンは、アレサの行動に感心しきりであった。反ロマルク同盟と言っても、ノルディン連合王国はドラームとトルド両帝国の使い走りにすぎない。このままでは国が疲弊しかねないと判断したアレサは、ドラーム帝国と手を切り、エゲレース王国とフラシア共和国に同盟を持ち掛けた。


両国としてもノルディン連合王国は同盟したい相手である。ドラーム、トルド、ロマルクの三大帝国の勢力拡大は避けたいからだ。北エウロパに位置するノルディンは、ロマルクとドラーム両帝国を牽制するのに役に立つ。


バレット海をエゲレース王国とノルディン連合王国の海軍で封鎖すれば、ロマルクとドラーム両帝国に多大な経済的損失を負わす事が出来る。ロマルクとドラーム両帝国の港は全てバレット海に面しており、封鎖すれば海上交易が不可能になるからだ。


フラシア共和国の場合は、ドラーム帝国を追い込む。それだけの為だ。長年の戦争で恨み骨髄に達しているので、さっさと叩き潰したいの一念での同盟参加だ。こうして、利害の一致を得た新たな三国同盟は成立してしまう。


「くそっ! 同盟離脱に加えて新同盟の結成とは。ドラーム帝国軍や政府は、蜂の巣をつついた程の大騒ぎだ。どうすれば良い? このままでは我が家は破滅だ!」


「確かに大失態だからなあ。下手をすると比喩抜きで首が飛びかねん」


クリストフはエールを5杯近く空けて、嘆き節の最中であった。イダルデとギレブー両王国を同盟に加えた結果、ノルディンが離脱したのだ。両王国の戦力とノルディンの戦力を比べれば、ノルディンに軍配が上がる。実質、同盟は弱体化したに等しい。現実を忘れ、飲みたくもなる。そんな彼にオイゲンは同情していると、ユルゲンが突然立ち上がる。


「人生~~、それは試練。この世を生きるは難しい~~。だけど、それが~~面白‥‥あだっ!」


クリストフを勇気づけようとしたユルゲンだが、どうやら気に障ったらしい。渾身の右ストレートを顔に食らって、床にひっくり返る。そんな彼を酒場の人々は、まるで気にも止めない。何故なら、ユルゲンが殴られるのは日常茶飯事だからだ。原因はと言えば‥‥。


「‥‥ライペール少佐、今少しの自重を願います。この前も殴られてたじゃないですか」


「ぬう、ベルントよ。我が輩をイザベッラ姫と同じにするな。詩を分かろうとしない愚か者が多いのが悪いのだ。しかし、クリストフよ。今のは痛かったぞ」


ベルントの言葉も通じないユルゲン。6杯目のエールを飲み、見事な酔っ払いになっている。ふらつきながらも何とか立ち上がり、クリストフに抗議する。


「貴様、他人事だと思って! このままでは、本当に‥‥」


とうとう堪えきれず、泣き出したクリストフ。そんな惨状を見かねたオイゲンは決断する。エールを飲み干すとクリストフの肩を叩き、こう告げた。


「分かったよ、クリストフ。俺が一肌脱ごうじゃないか。この前は助けてもらったんだ。今度は俺の番だよな」


「えーと、イェーガー大佐。何をしようとお考えで?」


ベルントは、オイゲンが何をするのか不安でしょうがない。オイゲンの場合、こんな時は絶対にろくでもない事を実行するのだ。


「決まってる。こういうのは本人に聞くんだよ。アリサ=デュレール本人にな!」


「何考えてんですか!? 会える訳無いでしょうがあああ!!」


ベルントはそう言うが、オイゲンには切り札がある。魔王や腹ペコ死神のいる軍と戦い、無事生き残った自分の話をアレサが聞きたいだろうと思ったからだ。彼女にとってもロマルク帝国は脅威。少しでも情報を欲しいに違いない。


「まっ、俺に任せておけ。必ず会ってみせるさ。‥‥いざとなったら実力行使かな?」

次回、アレサにオイゲンが会いに行きます。

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