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左遷からの成り上がり  作者: 流星明
第1章 左遷からの復活
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第29話 マルコの提言

「レオナルド、復讐に囚われるなよ。イザベッラのような馬鹿女に、地獄まで付き合う必要は無いからな。さてと本題に入るか。ブレディルとアレクサンドル、ウラディミル。俺の提案だが、ノルディン連合王国とトルド帝国と和平。ドラーム帝国との停戦を行い、イダルデ解放軍を倒す事だ」


「おい、マルコよ。復讐に囚われるなと言っておいて、復讐心丸出しではないか。それに、3国との和平と停戦は難しい。ノルディンは口説き落とせるだろうが、ドラームとトルドはなあ」


ブレディルの言葉に、ウラディミル以外の全員がうなずく。3国共にロマルク帝国と遺恨は深い。唯一、ノルディン連合王国が代替わりして、女王が和平へ積極的になっている位だ。


「‥‥やはり、貴方は傑物か。マルコ=フォンターナは未だに健在だな。ジャンボピザを出したのは、その話をするためか?」


「さすが、ウラディミルだな。そうさ、ロマルク帝国は領土を拡大しすぎた。今までは人口比率において、ロマルク人の人口の割合に余裕があった。しかし、領土が拡がるにつれ、支配した民族の頭を押さえるロマルク人の割合が減りつつある。混血化も進んでいるし、もし反乱が起きたら火消しは難しいだろうな」


現在、ロマルク帝国の人口比率はロマルク人が3で他の民族が7である。かつては5割を占めていたロマルク人も周辺諸国を次々と併合した事で人口比率の低下を招いた。いかに強大な力を持っていようとも数の暴力には勝てない。7割の人々が立ち上がれば、ロマルク帝国は危機に陥る可能性が十分にあった。


「ジャンボピザを帝国、お前らをロマルク人にたとえたのさ。ロマルク帝国は、ロマルク人にのみ恩恵がある。腹一杯にピザが食べられるロマルク人に対し、ピザが食えない他民族からは恨みや妬みが出るわな。しかも、食べきれず残しちまうし。だったら、余ったピザは分けろと俺は言うわけさ」


マルコの考えは次の5つだった。領内の荒れ地を軍で開墾し、農民達に与える。農業生産量が増えれば、無理な領土拡張はしなくていい。戦線縮小を行い、手に職を持つ者を日常に戻す。職人や技術者が主で、これにより軍事以外の工業の発展が望める。


帝国議会へ他民族議員を登用する。今まではロマルク人のみだったが、発言権の無い彼らの言葉も中央に届くようにする為の登用だ。教育の充実と子供達の保護。識字率が上がり、子供達の学力が上がれば、将来の帝国を担う人材が増える可能性が上がる。そして、最後が‥‥。


「イダルデ半島を奪取する。戦乱のせいで、イダルデの人口は減少、国土は有り余っているからな。そこへ、移民を募り移住させれば良い。ロマルク人のみにして、万が一の逃げ込み場所にするのか。それとも、不満分子をイダルデに送って、甘い汁を吸わせるのか。どちらでも好きにすりゃあ良い」


マルコの考えを聞いたブレディル達は途方に暮れる。それが出来ればいい。しかし、言うは易く行うは難しは世の常である。


「マルコ、その為にはこの戦争を終わらせねばならん。何か方策はあるのか?」


「そこはブレディル、お前らが考えろ。だが、そうしないとロマルク帝国に未来は無いぜ。いつまでも、戦争を続ける訳にもいくまい」


言うだけ言って、丸投げである。レオナルドすらも頭を抱える中で、ウラディミルは悪辣な笑みを浮かべる。


「陛下には、マルコ=フォンターナの意見として伝えておきましょう。そう言えば、貴方達が嫌いなイダルデ解放軍の代表が、現在ドラーム帝国に滞在しています。恐らく、対ロマルク同盟に加わる気でしょう。3国に不協和音を響かせる好機ですな」


ウラディミルの発言に全員が驚く。イダルデ解放軍が対ロマルク同盟に加われば、4方面での戦いになってしまう。ノルディンは海軍、トルドとドラームは陸軍が2正面作戦で担当していた。それが更に増えるのだ。陸軍大将たるブレディルにとっては、たまったものではない。


「安心して良い、ブレディル。イダルデ解放軍なぞ、足手まといにすぎん。すぐに音を上げるわい。ウラディミルよ。貴様、解放軍代表に何か仕掛けたな? 大方、フォンターナ中佐の情報を流したのであろう。違うか?」


アレクサンドルの問いに、ウラディミルはうなずく。ただ、しばらくしてため息をついた。対象が自分の思惑以上の動きを見せたからだ。


「あそこまで簡単に動いてくれるとは、正直思いませんでしたがね。フォンターナ中佐、君は愛されてるのだな。脳内花畑で、行動は軽率。見た目は悪くないが、あれでイダルデ解放軍のトップとは悲しくなってくる」


「‥‥遂に舞台に上がってきたか。ドラーム帝国に同情する。彼女は周辺を振り回し、被害を拡大させるからな。そう言えば、イェーガー大佐達は帝国に帰れたようですね。絶対にあの女に捕まりますよ。私の情報を聞くために」


「あの脳内花畑姫はしつこいからな。逃げても逃げても追いかけて来やがるし。どこぞの魔王並に執念深いぜ」


レオナルドとマルコは、遠くドラーム帝国にいるオイゲン達に思いを馳せる。確実に苦労している彼らに、心の底から同情を禁じ得なかった。







次回より、ドラーム帝国が舞台です。オイゲン達が姫様相手に苦労します。

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