第28話 レオナルド=エマヌエール
仕事や体調不良で更新遅れました。レオナルドが
王家を憎む最大の理由が語られます。
「レノスキー少将閣下、ここで私の素性をばらしますか?」
「君の正体がばれるのも、時間の問題だからだ。上級貴族の中には、薄々感づいている者もいるしな。それにゴルバ大将閣下とレーム少将を味方に付ければ、ある程度の抑止になる。貴族将校達の報復からな」
レオナルドの活躍は、貴族達にとっては既得権益の侵害につながっている。当然面白い訳も無く、何らかの報復を企てるのは時間の問題であった。そこで、陸軍のトップたるブレディルと敵に回したら怖すぎるアレクサンドルを味方に迎えれば、迂闊な事は出来ない。ウラディミルは、そのように計算した訳だ。
「レオナルドも大変だな。まあ、俺も似たような目にあったよ。イダルデ王国の馬鹿どもによく足を引っ張られたもんさ。北イダルデ戦線から呼び出された時は‥‥。まあ、最悪だったわな」
「そうでなければ、イダルデ王国を倒せなかったわ。こやつの陣地は鉄壁じゃからのう! 前線からマルコ=フォンターナがいなくなって、わしらは小躍りするしたものじゃ」
「確かにな。マルコがいなくなってから、ロマルク帝国軍の快進撃が始まった。戦いが終わった時は、あまりの脆さに拍子抜けしたものだよ」
マルコを失ったイダルデ王国軍は精彩を欠き、ロマルク帝国軍に敗北。北イダルデ戦線は2日で抜かれ、ロマルク帝国の包囲網に大きな穴が開いた。当然だが、共に第一次エウロパ大戦を戦った大陸諸国は、イダルデ王国に抗議している。
『名将を更迭しやがって! お前らは勝つ気があるのか!』
『失望した。戦後に覚悟しておけ。お前達に貸した金を容赦なく回収してやる。』
『マルコの旦那がいないなら、これ以上戦う義理はねえな。俺達は撤退する』
イダルデ王国が滅亡した時、どの国も助けようとしなかったのはこの出来事が原因である。当時のイダルデ王は、マルコに対する仕打ちを死の目前まで後悔していたと聞く。その最期は、民衆が見ている中での公開ギロチン処刑であった。敗戦と政治不信の元凶たる王の死に、イダルデの人々は歓喜に沸いたと言う。
「俺に謀反の疑いありって、誰かが讒言したらしい。前線から呼び出されて、査問会だぜ。与太話に付き合わされ、ねちねち嫌味を言われで俺はキレそうだった。まあ、最終的には間違いじゃなかったがな。愛娘を馬鹿王女に殺されたら反旗を翻すわ!」
マルコの言葉にアレクサンドルは驚いていた。突然、マルコ=フォンターナが部下達とイダルデ王国からロマルク帝国に亡命した理由。その全てが分かったからだ。最初は何らかの罠かと思ったが、真実と知って歓喜したのを覚えている。
それから、わずか1ヶ月で王都ローナが陥落。イダルデ王国がこうも簡単に滅んだのは、マルコ=フォンターナに見限られたからだと皆が言ったものだ。
「モニカが殺された時、私はイダルデ王家に復讐をしようと心に決めました。だから、父と共にロマルク帝国へ亡命したのです。帝国の力を利用し、イダルデ解放軍を打倒する為に」
覚悟を決めたレオナルドは、そう言うとウラディミル達に向き直る。本当の身分を明かすべく、少し緊張しながらも語りだした。
「私の本当の姓名は、レオナルド=エマヌエール。王族と言っても、大分端の方ではあります。イダルデの王位には、全く関心はありません。イダルデ王家の恥さらしな連中を潰したい。ただ、それだけです」
イザベッラを筆頭とした王族や貴族達は、国を滅ぼしたにも関わらず解放軍と名ばかり変えて、イダルデを未だに支配している。そんな厚顔無恥な馬鹿共を許せる訳にはいかない。
「特に許せないのはイザベッラです。『王族に相応しくない娘。だから、殺したの』と言って、モニカの死体を見せられました。猟犬に噛まれた跡と猟銃で撃たれた銃傷が、どう殺されたかを物語っていましたよ。奴ら、モニカを狩猟に見立てて殺しやがった!あの女だけは、この手で始末をつけたい! 当時10才の私は、そう心に誓ったのです」
マルコ=フォンターナは、三国志の姜維や陸伉のような立ち位置です。国が乱れる中で奮戦しますが、後方の連中のせいで‥‥。




