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左遷からの成り上がり  作者: 流星明
第1章 左遷からの復活
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第21話 部隊再編

「オーブルチェフ少佐、先程はすみません」


「気にするな、スタンコ少尉。俺も少しはしゃぎ過ぎた。レオナルドは、士官学校時代からの親友でな。左遷からの復活劇に、年甲斐もなく大喜びしてしまったよ。さて、ここから真面目な話だ。俺が辞令と共に預かった、軍務省からの命令を伝える。皆、心して聞いてくれ」


そう言って、レナニートは胸ポケットから命令書を取り出す。それを広げると、レオナルド達に対する命令を読み上げる。


「フォンターナ中佐の部隊に隊員を増員する。今回の作戦で、5割近くの兵士が戦線離脱し、うち3割は戦死。人的被害が著しい為、休息と部隊再編に1ヶ月の期間を設ける。また、中佐に昇進した事も考慮し、部隊規模を連隊とする。‥‥とあるが、戦力と士気の低下は必至だろう? 俺も報告書を見たが、壮絶な銃撃戦みたいだったからな」


レナニートの指摘は間違っていなかった。ロッテハイム准将が仕掛けた最初の野戦砲による砲撃とオイゲンによる戦車主砲の砲撃。これにより、多くの死傷者が出ていたからだ。


「その通りですよ、オーブルチェフ少佐。俺の部下も10人近くやられました。俺と共に修羅場を潜り抜けてきた奴等も、今や40人程になってしまいましたよ」


ボルフは悔しそうにつぶやく。彼と同じ貧民街出身で、最初は100名近くいた者達も戦死や戦病死、戦傷による除隊などで約6割を失っている。仲間を失うのは、何度経験しても慣れるものではなかった。


「俺も戦友を何人も失ったから、その気持ちはよく分かる。とはいえ、感傷的になっている暇はない。続けるぞ。ヤルステイン中尉、スタンコ少尉両名には、新たに配属する隊員への訓練を命ずる。1週間の休暇後、2週間で400名の隊員を使えるようにせよ。以上が軍務省からの命令だが、質問はあるか?」


「また急な話ですな。しかし、急ごしらえの寄せ集めでは連携が取れないでしょうし。何よりの問題が‥‥」


「オーブルチェフ少佐。隊員が増えすぎて、士官が不足してしまいます。それについては、どうなさいますか?」


「ゼリシュ大尉とスタンコ少尉の疑問に答えよう。まず、士官に関しては俺の人脈で集める。全員及第点以上の士官だから心配するな。兵士は新兵とベテラン混成の編成だから、ましだと思うぞ。軍上層部の中には、『新兵だけで編成しろ』と言う意見があったんだからな。それをゴルバ大将が止めてくれたんだ。話を続けるぞ?」


レナニートの説明は続く。配属される士官についてだ。中尉2名と少尉4名が配属される事になったが、その中に女性士官がいるらしい。


「名前はサーラ=ルイシコフ。技術中尉で、君達が前回の作戦で使った新式銃を生産しているルイシコフ重工業の令嬢だ。貴族位は男爵。歴代の当主は、技術畑出身の者が多い家でな。彼女も宝飾品やお菓子なんかよりも、戦車や車が大好きという変わり者さ」


「‥‥変わり者で悪かったね。僕の実家は技術の分野において、かなり帝国に貢献してるんだけど」


「うわっ! サーラ、いつの間に!?」


驚くレナニートの後ろから現れたのは軍服姿の少女だった。肩口で揃えた赤髪と幼い顔立ちが印象的な彼女。だが、それらよりも印象深いのは‥‥。


「ルイシコフ技術中尉、胸大きいですね。うらやましい、半分下さい」


「スタンコ少尉。いきなり、それは無いよ~~。身長低いのに、胸とお尻だけ大きくなって困ってるんだから。男連中の視線が、どうしても集中するし」


「‥‥ぜいたくな悩みです」


起伏に富んだ身体を見て、うらやましがるエルザ。レオナルドを除いた男連中は、エルザとサーラを見比べる。そして、見比べて思う事は1つだった。


((((‥‥確かに、スタンコ少尉は体の起伏が無いもんな))))


「そこの4人、横1列に並んで。顔に鉄拳見舞うから」


4人が思った事を瞬時に見抜いたエルザ。笑顔で彼らに近づくが、その眼は笑っていない。腹ペコ死神と化したエルザを見た、男4人の決断は早い。


「「「「止めてください。失礼な事を思って、すいませんでした!!」」」」


綺麗に揃った土下座を見せるレナニート達に、サーラは呆れる。


「男って、本当に馬鹿だねえ。フォンターナ中佐の意見は?」


土下座しても許さなかったエルザに、制裁を受ける4人を見ながら、サーラはレオナルドに意見を求める。


「重要なのは性格だよ。容姿は2番目で良い。幼い頃から、美人で醜悪な女性を多く見てきたからな。その点、ルイシコフ技術中尉は素晴らしい女性だと思う。明るくて、とても親しみやすいし、見ていて元気が出るよ」


「‥‥あ、ありがとう。婚約者にそう言われると、僕もとても嬉しい」






突然の婚約者登場。知っていたのは皇帝周辺とサーラの実家。それとレナニートだけです。

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