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左遷からの成り上がり  作者: 流星明
第1章 左遷からの復活
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第20話 新たなる仲間

「さて、どうでしょうか? 私は、ただの愛国者ですよ。腐った権力者を憎む1国民でしかありません」


「‥‥そう言う事にしておこう。偽りの姿ではなく、本来の姿である君と語れる日を楽しみにしているよ」


意味ありげな笑みを浮かべるミハイル。その姿を見て、レオナルドは確信した。ミハイルとウラディミルは気付いている。自分が何者であるかを。だが、それをあえて追求しないのは何故か? レオナルドは考えを巡らせる。


(おそらく温情であろうな。私の存在を使えば、イダルデを押さえる重石に出来たはず。しかし、ロマルク帝国の為になる改革の尖兵として、私を使えると見たのだろう。使える駒を遊ばせはしないか)


レオナルドが考えを頭の中で巡らせていた時、ミハイルは勲章をグレゴールとラルフへと渡していた。恭しく受けとる2人。そして、次にレオナルドの下へと皇帝が向かって来る。


「さて、フォンターナ特務大尉。ゼリシュ中尉とヤルステイン少尉は、それぞれ大尉と中尉に昇進した。君にも勲章を授与し、特務大尉の任を解く。階級は中佐へ昇進させる事とする。任務は引き続き物資の輸送が主だが、加えて要人の警護輸送も命じる事になろう。更なる功績を期待するぞ」


「はっ、お任せ下さい。陛下の期待に応える働き、見せてご覧にいれましょう」


こうして、4人の勲章授与式は幕を閉じた。レオナルド達はミハイルの御前を辞し、軍人達が整列している場所へと戻る。ブレディル=ゴルバ大将やアレクサンドル=レーム少将は笑みを浮かべ、良く言ったと言いたげだ。


「おのれ、平民の分際でいい気になりおって」


「スダール少将もブレディエフ大佐も気の毒な事よ。奴に名をせしめただけだからな」


「今に見ておれよ。皇太子派に歯向かった事を後悔させてやる」


一方、苦虫を噛み潰している者や怒りに燃える眼を向ける者もいた。デミトリ=ブレディエフ大佐と同じ派閥の者や貴族階級の軍人なのだろう。彼らの反感や憎悪を買うことは、内の敵との戦いが激しくなる事を意味する。


しかし、現状を良しと考えられないレオナルドは、彼らを見て自分の信念を貫くと改めて決意した。既得権益にあぐらをかく連中に苦しめられる国民を守る為に。


「それでは、今回の勲章授与式を終了する。諸君らは食事や舞踏を楽しんでくれ」


ミハイルの言葉で、謁見の間に楽団の音楽が響き渡る。集まった人々は、テーブルに並べられた料理に舌鼓をうつか、美しき女性達との舞踏を楽しむ。あるいは派閥の者同士で話し合いが始まるかだ。


その中でも皇太子派の面々の表情は暗い。皇帝からの叱責と失望を身に染みて感じたからだ。皇太子の側近たるスダール少将とブレディエフ大佐の不祥事は、あまりにも影響が大きい。下手をすると廃太子の可能性も出てきかねないからだ。


「まったく、あの馬鹿どもが! 余計な事をしくさりおって。あの基地にいた貴族将校は軒並み銃殺刑だろう。派閥の長としては心苦しいが、ここは見捨てよ。例え、親族や息子であろうがな」


「なっ!? いえ、宰相閣下の仰せのままに。ここで異議を申せば家が断絶しかねませんからな。陛下の怒りは相当でしたし」


「軍部の怒りも怖い。レノスキー少将から『現場将兵の怒りが凄まじい』と聞いています。下手をすれば、我々も襲撃されかねませんぞ! ‥‥レーム少将に」


不安と焦りを覚える者達を横目に見ながら、レオナルドは部下達と共にバルコニーへと向かった。集まった4人の顔を見て、彼は改めて決意を語る。


「ゼリシュ大尉、ヤルステイン中尉。そして、スタンコ少尉。今回の件で私は貴族の多くを敵に回したかも知れない。だが、私が望む改革の為には避けて通れぬ道だ。皆には苦しい思いをさせるかもしれないが、これからも協力して欲しい。よろしく頼む」


「了解です。貴族は大嫌いですからな。良心的な貴族以外は叩き潰す勢いでいきましょう」


「改めてよろしくな、隊長。お偉方に目をつけられて、大変でしょうがね。まっ、いざとなればエルザを護衛につかせますよ」


「任せて。レ、じゃなかった。隊長の事は私が守りますから」


3人の答えにうなずくレオナルド。そこへ1人の士官がやって来る。金髪碧眼の整った顔立ちに軽薄そうな表情を浮かべた軍人の男は、挨拶もそこそこにレオナルドの肩を右手で叩いた。


「よう、レオナルド! 随分と出世したな。少佐の俺を軽く越えていきやがって。一時はどうなるかと思ったがな、スダール少将に対するあれで」


「‥‥レナニート先輩。痛すぎるので、肩を強めに叩くのは止めてください。その節は大変心配をおかけしました。これからは少し自重しますので、ご容赦を」


「同期の中でも俺が1番の出世頭なんだ。俺はともかく、他の連中はお前に嫉妬してるんだぞ。このくらい受け入れろ。あと自重はしっかりしてくれ。また営倉に入りたくないだろ?」


彼の名はレナニート=オーブルチェフ少佐。レオナルドの2期上の先輩で、軍で参謀として活躍している男だ。そんな彼を『秀才レナニート』と軍人達は呼ぶ。


水準以上の能力で戦闘をこなし、戦術と戦略を立案、実行出来るからだ。何でもこなせる彼は軍上層部に重宝された。


そのおかげなのか、出世も早い。同期の中では佐官に一番早く昇進している。出世街道を走る彼をやっかむ者は『器用貧乏レナニート』と呼んでいるが、本人は全く気にしていない。


「そこの貴方。隊長を離さないと、そのにやけた顔を握り潰します」


宣言通り、エルザはレナニートの顔を右手で掴む。力を少しずつ加える彼女に、レナニートはすぐさま全面降伏する。慌てて、レオナルドから離れた。


「痛い、痛いって!! 噂通り怖いな、スタンコ少尉。分かった、止めるよ。自己紹介がまだだったな。レナニート=オーブルチェフ少佐だ。今度、君達の部隊に副官として配属される事になった。これからよろしく頼むぞ」











レナニートは万能型の軍人です。なんちゃって副官のアーンナとは能力が違います。




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