妖刀 叢雲
ココさんが言うには街までは馬車で半日ほどらしいが、さすがに一つの馬車に全員乗るわけにはいかないので、1日半かけて歩いて移動することになった。
一日目は特に何もなく順調に進んで終了。
そして、二日目の朝のことだ。
「朝だー!朝がK「うるさい!アホトウジ!」へぶぅ!」
「またやってるのか」
「おはよう、トウジくん」
「…グッドモーニング」
「おはようなのじゃ。新しい我が主よ」
おや?どうやら今日は俺が最後に起きたようだ。
「ん?声一つ多くなかったか?」
「たしかにそんな気がしたね」
「…でも今は5人だけ。…みんな寝てる」
「そうなんだよなぁ」
「じゃあ点呼をとってみたらどう?」
「ナイスアイディア、スグ!じゃあ俺いっちばーん」
「2」
「あたし3ばーん」
「じゃあ僕が4番だね」
「…ごばーん」
「6番じゃ」
「ハイおかしい」
「6番がいたね」
「…ゆーれいかも」
「や、やめてよユナ!そういう事言うの!」
「僕も怖いのは苦手だな…」
「幽霊どこだー!」
「やめてってば!」
「ここじゃ、ここ。幽霊ではないがの」
「ぎゃあああああ!」
「っ!びっくりしたぁ」
「トウジ、聞こえたか」
「あぁ、たしかに今…」
「…刀から聞こえた」
そう、声は刀から聞こえていた。
「お前が喋ってんのか?」
「そうじゃ。それからわらわは叢雲という名があるのじゃ、我が主よ」
「主?俺が?」
「そうじゃよ。わしを鞘から抜いたじゃろ?それはつまりわしと契を交わしたという事じゃろ?」
「契?」
「なんじゃ?今度の主は質問ばかりじゃの。契というのはわらわとお主との契約のことじゃ。わらわはお主に強大な力を授ける、その代わりにお主はわらわたちの試練に挑む。試練の内容というのは…まぁ追々話すとするかの。つまりお主はわらわの授ける力を使い試練を達成すれば良い。まぁ簡単な道ではないが、その程度は当然覚悟の上であろう?」
「ごめんなさい、そんなこと知らずにその場のノリで抜きました」
「なに!?意図せずわしを抜いたという事か!?」
「え?まぁ、そういう事だな」
「そうか、ふむ、なるほど…。気に入ったのじゃ!わしはぬしを主にするのじゃ!もう決めたことじゃ、嫌と言ってもついて行くからの」
ドヤ顔してる姿が目に浮かぶようなロリボだ。
こいつ刀の癖してロリババアだ。
刀の姿で喋るロリババア…かなりシュールだな。
個人的にはツボだ。
「でもついてくるって言ったってその格好じゃどうしようもないだろ」
「ふむ、そうじゃの。ならばこれならどうじゃ?」
言い終わると同時にポフンという音と煙が出てくる。
そしてその煙が消えると中から着物ロリが出てきた。
「ほれ、これならついて行けるぞ。」
「お前、さっきの刀か?」
「先程も名乗ったがもう一度名乗っておくとしよう。わしは『妖刀 叢雲』、名に拘りはないから好きに呼ぶがよい」
「叢雲…じゃあクーな」
「ク、クー!?」
「いやか?」
「嫌ではないのじゃが、その、そのように可愛らしい名は初めてじゃから、その、照れくさくての。うむ、クーじゃな。心得た。」
「…クーちゃん…かわいい」
「む、そう言えば主達の名を聞いておらんかったの」
「俺はトウジだ」
「マモルだ」
「幽霊…じゃないのよね。あたしは直美、スグでいいわよ」
「僕はサグルだよ。よろしくね、クー」
「…三園癒奈…ソノちゃんとかユナって呼ばれてる」
「うむ、トウジにマモルにスグそれからサグルとユナじゃの」
「皆さんどうしたんですか?」
おっと、ココさんが来た。
「ごめんココさん。起こしちゃったか?」
「いえ、大丈夫です。あれ?その子は誰ですか?」
「えっと、昨日もらった刀が妖刀で煙が出てその中からこいつが」
「クーじゃ、よろしく頼む」
「妖刀!?それに名前まで!大丈夫何ですか!?」
「ん?何が?」
「妖刀って言うのは、魔具の1種、魔具というのは代々魔王が使っている武具なんです!それに名前をつけるということは魔具との契約が終わってしまったということ!」
「わかりやすく頼める?」
「要するにトウジさんが魔王になっちゃうってことですよ!」
「そうなのか!?」
「まぁ大方あっておる。じゃが魔王になるにも試練のようなものがある。それを避ければどうということは無い」
「なんだ、そういう事か」
「まぁ避ける事が出来ればの話じゃがな」
ん?クーがボソッとなんか言った。
「なんか言ったか?」
「何でもないのじゃ、気にするでない」
「そっか、ならいいや」
「え、えっと…大丈夫何ですよね?」
「えぇ、どうも大丈夫なようなので街へ移動しましょう」
「行くぜー!」
「レッツゴーなのじゃ!」