大事件
『お願い!人足んなくて!りょんちゃんに来て欲しいの!』
私に来て欲しいんじゃなくて
私がお願いしたら来てくれそうだからだろうなあ。
いい意味でとれば
優しそうだからだろうなあと思いながらも
首を横に振ることができなかった私は
知らないサークルの飲み会に参加していた。
友達を連れてきていいとのことだったから
同じ学部で1番仲の良いめぐちゃんに
付き合ってもらうことにした。
「りょんちゃん、私、ちょっとタケちゃんと電話してくるね。」
開始1時間くらいたった頃
お酒のペースについていけなくなったのか
2つ年上の彼氏の名前を口にして
めぐちゃんが席を外した。
中々潰れない私には
”大学生”って感じのノリで
どんどんお酒が回ってきた。
途中でめんどくさくなって
酔っ払ったふりをしていたけれど
だんだん本当に酔ってきたのか、
かなりの量を呑んだから
頭がそう思い込んだのかわからないけれど、
自分が自分じゃなくなって良い気がした。
「…宮くん?」
気がついたときには
宮くんの家に居た。
あの、ゼミの、
ちょっと良いなって思ってた彼。
もちろん二人きりなんて
ベタな展開じゃなくて
何人かの潰れた人とそうでない人が
”一人暮らし”で都合の良い
宮くんの家に移動していた。
私が疑問系で彼の名前をつぶやいたのは
今私が彼にお姫様だっこをされているから。
「あ、りょんちゃん、ごめん、起きた?今ベッドに運んでるから、もうちょい待って。」
あれ?私、寝てたのかな?
でもずっと誰かに運ばれてるなあって
思ってたしな。
「…ん、宮くん、行かないで」
普段の私なら
言えないような言葉。
「え?」
彼の首に腕を回して
ぎゅうっと抱きしめる。
「どーした?気持ち悪い?」
「ううん、、、いや、行かないで。」
「りょんちゃん?」
「…ぎゅうってして…」
先に言うけれど
宮くんは決して軽い男ではない。
女の子をきちんと女の子扱いするような
クールで紳士な男の子。
そんな宮くんが
何も言わずにぎゅっと私を抱きしめるのは
後から考えたら
すごく…うん、なんてゆーか、
胸が苦しい。
「宮くん…、宮くん」
そうやって潤んだ目で
自然と上目遣いになってしまう私に
宮くんは唇を近づけた。
キスされる、
そう思った。
だけど直前で
「あ、やべえ。」って顔をして
鼻をちょこんと私の頬にくっつけた彼の温度を
私はよく覚えている。




