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チュウ ノ ジョウ。  作者: r
1
3/6

まあまあな恋愛

大学に入った頃は、恋人がいた。

高校の卒業式の前日に

一緒に水族館へ行って

近くの海ですごくロマンチックに

告白されたのが印象深い。

私がYesと答えると

その瞬間にキスされた。


「下手くそになった。」


と無邪気に笑う彼を

かわいいとは思わなかったけれど、

そんな自分に気がつかないフリをした。

たぶん、もう後戻りできないと分かっていたから。


彼とは違う大学だった。

アルバイトを始めた私たち。

会えばお互いの新しい生活の話。

ううん、彼の話と私の話の比率は8:2。

ニコニコ聞くふりをして不満ばかりが積もった。

彼のアルバイトは時給が良くて、生徒のほとんどいない塾の講師だった。

「楽に稼げる。」

という彼の自慢は

アパレルと人気雑貨の販売店で

低い時給で働く私にとって

気持ちの良いものではなかった。


2人の生活はすれ違う。

よくある話だと思った。

5月の下旬くらいには

彼の愛の大きさに心がついていけなくなっていた。

彼の前で”良い彼女”を装うようになったのはいつからだろう。


彼は本当に優しい人だった。

それが私には”優しいフリ”に見えた。

彼女を大事にして、優しくする自分は良い彼氏だ、

かっこ良い、

そんな風な優しさに見えた。

私が彼の前で”良い彼女”を装うように

彼も私がの前で”良い彼氏”を装おうと必死だったのかもしれない。


違う。そんな優しさいらない。

時には怒って欲しかった。

彼氏なんだから、

無理やり抱いてもよかったよ。

だけど私が眉をしかめると必ず退くのが彼だった。

彼はキス以上のことは1つもしてこなかった。

”大事にしたいから”と言っていた。

優しさじゃない。いくじなし。

だけど”良い彼女”を装う私は結局のところ

「大事にしてくれてありがとう」と言った。


そうして

私たちはセックスもしないまま

6月の中旬に別れた。


きっかけは友達に

「最近悩んでばかりじゃない?好きじゃないなら別れなよ。彼にも失礼だよ。」

とありきたりなことを言われたから。

その通りだと思った自分がいたから。


「ごめんね、ゆうちゃん。バイバイ。」


嫌だ、りょうこ、

嘘だって言って。

俺、無理だよ。


”良い彼女”から突然の別れを切り出された彼は

今までに見せなかったほど醜く私にすがった。

あぁ、私が欲しかったのはこういう本音だ、

そう思ったけれどもう遅かった。


私たちがうまくいかなかったのは

お互いに本音を言えなかったから。


歩き出した私には

悲しいキモチが押し寄せた。

だけど涙は出なかった。

あれ、別れ話をしているときは

あんなに涙がでたのに。

頭に走馬灯のように流れたのは、

楽しかった思い出ばかりだった。

そんな、ドラマみたいな。

あの涙も知らぬ間の演技だったのかなあ。だとしたら嫌だなあ。”良い彼女”が体にまで染み付いている。


付き合う前に

既に手を繋いでしまっていたから

告白を断りづらかったんだ。

付き合う雰囲気になっていたから

仕方なかったんだ。

だから、こうなっちゃったんだと

必死に自分を正当化した。



私の付き合ってからの恋愛の寿命は

いつも短い。





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