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メイド・主・メイド(後編)

朝見たらランキングが3位に上がっていてビックリでした☆

とりあえず、今の章は今回で終わります。

長い文章になって読みにくいかもしれませんが最後までお付き合いお願いします☆

「―――それまで!!」



闘技場内に響き渡る審判の声に、大きな歓声が辺りを包んだ。



倒れた相手に向けていた剣を下ろし、逆の手を差し伸べると相手の生徒は悔しそうな表情を浮かべながらも、手を取り立ち上がった。



「やっぱり『花冠の聖騎士』は強いな。俺も腕に自信があったが瞬殺だったよ…」


「貴方はもっと強くなれるわ、頑張って」



相手の健闘を讃え、励ましの意味もこめてかたく握手を交わすとその場を後にした。



「リナリア!!おめでとう、決勝進出ね!!!」



闘技場を出てすぐのところで嬉しそうに駆け寄ってきたフレイに笑みを返した。



「ありがとう。……予定通り決勝に行けるけどちょっとキツい試合だった。やっぱり今年は強い生徒が多く出てきてたみたいね」



溜め息を吐きつつ、頭のてっぺんで1つに結んだ髪を一房掴み軽く揺らした。


闘技場内は乾燥していたため砂埃が酷かったので髪がガサガサになってしまっていた。



厳しい表情で髪を弄っていたら目の前のフレイも顔をしかめた。


「せっかく腰まである綺麗な髪だったのに、酷く傷んでしまったね」



「こればかりは仕方ないよ、ホントだったら騎士は戦いやすいように短い髪が好まれるのに私は変なプライドのために伸ばしているんですもの。」



花冠の聖騎士と呼ばれ始めた当初は魔導科の生徒のみならず、騎士科の一部の生徒も『女の癖に』と陰口をたたき嘲笑を浮かべていたものだ。



だからこそ『女』ということで差別する周りを実力を見せることで黙らせ、媚びるつもりはないという意思表示として髪を長いままにしていた。



「とりあえずは闘技会が終わってからちゃんと手入れしようかなって思ってる」



「確かにそれがいいかもね。じゃあ私も準備の手伝いとかあるからもう行くね」



日頃からあまり自分の容姿に手をかけない私が積極的にやろうとしていることに、フレイは嬉しそうに笑ってその場を後にした。



「……さて、決勝まであと少しだけどちょっとマズイことになったなぁ」



見下ろした自分の右手を軽く握ったり開いたりしたが、その度に鈍い痛みを感じた。


「さすがに準決勝まで進むだけのことはあるわ。まさか私が打撃を受け流しきれなかったなんてね………」


男と女ではどうしても力の差がある分、私の戦い方は打ち込まれた衝撃を受け流すことによって次の攻撃を仕掛けるというスタイルなのだが、今回の相手は力もあればスピードもあって戦い難い相手だった。



治療すべきかどうかボンヤリ考えながら控え室へと向かっていると目の前から見覚えのある人物が歩いて来ていた。



―――――レナード……



数日ぶりに見たその顔色は、廊下が薄暗いせいもあってか少し悪いように見えた。

そして歩くレナードよ横には当然のように寄り添うように歩くカリーナの姿があった。


2人は手に紙の束を持ち、話をしながら歩いているため私の存在にはまだ気づいていない。



想像していたその光景に覚悟をしていたはずなのに何故か胸が痛かった………


「――レナード様」


「……花冠の聖騎士か」


先に私の存在に気付いたカリーナはすぐに立ち止まり、隣のレナードの袖を軽く引いた。

そんなカリーナの行動に訝しげな表情を浮かべたレナードだが、目の前からやって来ていた私の存在にようやく気づいて立ち止まった。



「『白銀』、式典以外で会うのは久しぶりですね。……貴方が騎士科所有の闘技場にいるなんてどのような風の吹き回しかしら?」



メイドの『リナ』だとバレないように、花冠の聖騎士としてのいつもの対応でレナードに話かけたが、カリーナにはその態度が気に入らなかったらしくあからさまに不機嫌な表情でわたしキツい視線を向けてきた。



一応、私の立場はカリーナなんかよりずっと上であるため無礼な口をきくな、と言いたくても言えない。だからこそ睨むしかないのだろう。



―――メイドというよりは忠犬みたいね……



「今回の闘技会では魔導科の開発した照明道具や結界を使用している。動作状況とデータを取るためにここに来ている」



「まぁ。白銀様がわざわざ足を運ばれたなんて光栄ですわ。騎士科のトップに立つも者としてお礼もうしあげます。」



棒読みで礼を言い頭を軽く下げたが、レナードは無表情のまま反応がない。


「……『花冠の』決勝はガイアスと当たるそうだな。奴はある意味手強い、心して戦うことだな」


レナードはそれだけ言い残すとその場から去って行った。

カリーナも慌てて後を追おうとし、すれ違いざまにこちらを睨み付けてから走り去った。



「なんで敵の私に忠告なんかしてんのよ」



……何故だろう。先ほどまで感じていた手首の痛みが、少しだけ軽くなったような気がした。








休憩を終えて迎えた決勝戦。


ガイアスはすでに闘技場中央でスタンバイしていて私が来ると、なんとも言えない笑みを浮かべた



「アンタが花冠の聖騎士、リナリアか。確かにそこらの女と比べたらデカイな。……まぁ、そんな細いモヤシみたいな体つきで騎士科トップなんて元々おかしな話だよな?女を利用してその地位にでも就いたか?」



ニヤニヤと気持ち悪い顔で暴言を放つガイアスに、不快感を覚えて腰に下げてあった闘技用に刃を潰した剣を取る。



「無駄口をたたくな、早く剣を構えろ。」



その言葉を合図に激しい剣同士のぶつかり合いが始まった。


力任せのガイアスの剣は一撃一撃が重く、痛めた右手首が悲鳴を上げる。



一応、手当はしたがこれだと長い時間は持ちそうにない。


「――――そんな剣で俺に勝てるとでも思ってるのかっ!!」


怒声を上げ、大きく剣を振り上げたガイアス。


――――今だ!!



腰を下げ、低い姿勢を保ったままガラ空きになったガイアスの腹へと一撃を打ち込んだ。



「――ぐぅ!!」



ガイアスが目を見開き、低く呻いて倒れた瞬間に響く悲鳴にも似た大歓声。


「っくそっ!!女なら女らしく家で大人しくしていろ!!その『花冠』という称号通り、頭に花の飾りでもつけてなっ!!」



安堵の息を洩らした私に、痛みのためか大量の冷や汗をかきながら暴言を吐いたのはガイアスだった。



「勘違いするな。『花冠』とは本来、花の冠ではなく、どんな相手にも立ち向かい負けを知らないという『果敢』という意味だ 」



――――称号の名は伊達ではないということだ、侮るなよ若造。



腹を押さえてうずくまっているガイアスにそれだけ言い捨てると、振り返ることなく闘技場を後にした。



途中、「表彰式が……!!」と何度か止められたが「大事な用があるので」と断りながら歩く速度を上げた。




やるべきことを終えて一番にしたいことはレナードに会うことだった。



今までの私の態度を謝ろう、仕事もマーサさんに教わってもっと前向きに頑張ろう、護衛をしろと言うなら守ってみせる。



――――騎士とは本来、誰かを傷付けるために腕を磨くのではない。守るためにその剣を振るうのだから!!



その過程で私が『花冠の聖騎士』だとバレてしまうかもしれないが、それも仕方ない。



以前の私なら想像もつかなかっただろうけど今ならレナードと解り合える気がする。



汚れた騎士服を脱ぎ捨てメイド服に着替えた私は頭の上で1つに結んだゴムを解き、手早く三つ編みへと結い直す。



たどり着いたレナードの部屋の前、大きく息を吸い軽くノックして部屋の中へと足を踏み入れた。



「……レナード様?」



部屋の中は灯りで照らされて人の気配がするのに返事がない。



嫌な予感がして気配を殺しつつ部屋の中を素早く確認した。



―――ガタッ



寝室のほうから聞こえた物音に気付き、足音を忍ばせながらそちらに向かった。



いけない事とは思いつつ覗いた寝室の中、衝撃的な光景が目に入った。



ベットの上であられもない姿で座っていたカリーナ………





「……カリーナ、貴方何をしているの!?」



一瞬、まさか!?という思いが浮かんだが冷静に状況を見れば部屋の中にレナードの姿がない。

『事後』というわけでもなさそうだ……



「~~~リナさん!!貴方こそ何故ここに来ているのっ!?もう来なくていいとクビになったはずよ!!」



ベットから立ち上がり素早くバスローブを羽織ったカリーナは、羞恥というよりは怒りで顔を真っ赤に染めて私に向かって怒鳴り散らす。



「カリーナさんこそ、主不在の寝室に忍び込んで何を考えているのですか?」


人のことメイド失格だ、とかなんとか言ってたくせに自分のやっていることは何だというのだ!!

苛立つ心を落ち着かせようとするが、目の前のカリーナは人の神経を逆撫でしてくる。



「私は側付きメイドなのよ、こういうことだって仕事の内よ!!……クビになったくせに勝手に部屋に入ってきたのは許せないけど、まぁいいわ。ちょうど貴方に話があったのよね」



目の前の女は艶然と微笑みながら私に向かって手を伸ばした。



「リナさん、貴方レナード様から部屋の鍵にもなるネックレスを頂いてるわよね?あれ、返してもらってもよろしいかしら?クビになった貴方には必要のない物でしょ」



「…………」



目の前の女の目的がハッキリ解った。



「……目的は賢者の石だったわけね。」



確認するように呟くと、カリーナはその顔に笑みを深めた。


「あら、やっぱり貴方が持ってたネックレスが賢者の石だったのね。いくらこの部屋を探しても見付からないから焦ってたのよ」


「見付からなかったから色仕掛けで聞き出そうとしたの?」



その問いかけに対して眉を寄せたカリーナは不本意そうな表情を浮かべた。



「それは違うわ。本来は賢者の石が目的だったけれど、もうどうでもいいもの。……レナード様はとても魅力的な方よ、純粋に引かれるのは仕方ないでしょ?……でもね、私が貰えていないレナード様からのプレゼントを貴方だけが持っているのが許せないの」



――――だから力ずくでも渡してもらうわ。



近くに置かれていた自分の剣を取ったカリーナがゆっくり間合いを詰めてくる。


さすがにメイド兼護衛として雇われるだけのことはある、剣を構えるその姿に隙はない。



「……貴方が目障りで仕方ないわリナさん。私が側付きになったら貴方のことを絶対に排除してやろうと思ってたのよ。見た目も野暮ったくてメガネブス、それにメイドの仕事だって中途半端なくせにレナードに信頼されている。可笑しな話でしょ!?納得できないわ!!貴方なんかより私のほうが彼には相応しい!!!」



血走った目でこちらに向かってきたカリーナ。

私はとっさに近くにあった杖を手に取り、斬られる寸前にその刃を受け止め弾き返した。


すぐさま体勢を整えて、再び剣を振り下ろしてきたがそれも受け流しながらこちらからも反撃をした。


驚愕の表情で私の攻撃を剣で受け止めようとしたカリーナだったが、そのスピードに間に合わず剣を弾かれた。



「……アンタ何者よ!!私は騎士の家で育ったのよ!?ただの平民の使用人ごときが私に勝てるはずないわ!!」



髪を振り乱し叫ぶカリーナに冷めた目を向ける。

まだそんな口をたたけるなんて図太い性格ね…



また襲いかかってくる可能性もあるので、杖を持つ右手に力を込めたが瞬間、痛みを感じて眉をしかめた。



「そこで何をやっている?」



緊迫した状況を打ち破るかのように響いた声。



振り返ると寝室の扉に体半分を寄りかからせたレナードがこちらを見詰めていた。



「っっっレナード様!!」



突然叫んだカリーナが走り出してレナードに抱き付いた。


あっという間の行動に目を丸くして見ていると何とも自分勝手な説明を始めた。


カリーナいわく、クビになったはずの私が寝室に進入してきていたので自分が止めていた、抵抗して杖を振り回してきたので仕方なく剣を抜いて応戦したとか。



よくもまぁ、そんな嘘っぱちなことを言えるなぁ。


ある意味感心していると、あらかた話を聞き終わったレナードが抱きついていたカリーナの肩に手を置き、その体を放した。



「……やっと本性を現してくれて嬉しいよ、カリーナ。君の目的は大体想像できてたから監視していたんだが、いい加減ガマンの限界だったんだ」







――――私は例えメイドと言えど興味のない人間を側に置いておきたくないんだ。



万人を魅了する笑顔を浮かべながら口にしたのは冷たく突き放す感情の一切を切り離した台詞。



間近でそれを聞かされたカリーナは顔色を失い、力なく床に崩れ落ちた。



どこからか現れた警備兵が座り込んだまま動かない彼女の腕を両側から掴んで部屋の外へと連行していった。



残されたのは私とレナードの2人だけ。



……なんかこの状況に似たこと前もなかったっけ?



そんなことを考えながら目の前に立つレナードを見つめた。



何か言わなくちゃ…


口を開こうとするが上手く言葉が出ない。



「――!!??」



突然レナードの腕に包まれ息が詰まった。



前も同じことがあったけど、今回はこの暖かい腕の中から逃げようとは思わなかった。


久しぶりのレナードの匂い。


私のお気に入りの香りがまだ残っていて涙が出そうになった。


「すまない、彼女の狙いが賢者の石だったという予想はついていたのだが中々尻尾を掴めなかった。その上、彼女は初めからリナのことを良く思っていないのがわかったから危害を加えられる前にと思ってしばらく離れてもらったんだ。……事情を説明できなくて悪かった」



顔をレナードの胸元に押し付けながら無言で首を振った。

気遣ってもらってた、私の為だったんだ………


胸がいっぱいいっぱいで何も言えない。


「君を守るって言っただろ?……だからまた、私のメイドに戻ってもらえないかな?カリーナの用意する料理は確かに美味しかったけれど、私はやっぱりリナの手料理がいい。朝一番の紅茶はストレートではなくミルクティーで。学園から帰ったら君の作ってくれたお菓子を食べたい。―――リナ、君は私が認めた最高のメイドだよ」



嬉しくて嬉しくて涙が止まらない。


自分的に納得してなかった仕事ぶりだったけど、レナードは私が努力していたのを知ってくれていた。



「レナード様、お願いがあります。私を貴方の専属メイドにしていただけますか?」



「―――リナっ!!」



再びキツく抱き締められたあと、顔を上げさせられた。




「……やはり押しても駄目なら引いてみろだな……」



そんな呟きのあと潤んだ瞳を閉じて迫ってくるレナードの顔。



「……ちょっと待て、もしかして貴方はカリーナを駆け引きに利用したってわけ?」



――――フサゲンナッッッ!!!!(怒)



私が放つ怒りのオーラに気付いたレナードが目を開けた時にはもう遅い。



その端整な顔に左の拳をめり込ませ、腹に向かって膝蹴りを食らわせた。




「リッリナッ!!」



苦し気に自分を呼び掛ける声が聞こえたが、完璧無視!!!


私はこの件に少なからず関わっているであろうマーサさんの元へと足を速めた。


文句を言ってやらないと気がすまない!!



「それ以前にやっぱり奴の担当からは外してもらおう!!!」



……頭に血が昇っているリナは気付いていない。自分が専属メイドになるって言ってしまったことを。



言質を取ったレナードが嬉々としてリナの囲いこみにかかるということも想像していなかっただろう。









さぁ、リナの明日はどうなる!?







続く?


一応、完結設定にしてますが次の章の話が出来次第、再び掲載させていただく予定です。

それと、この場で感想を頂いた方々に御礼申し上げます。

でこ助太郎さん・plekiosさん・Hlloween?!さん・龍華さん、ありがとうございました☆

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