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メイド・主・メイド(前編)

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

今日こそ言わなくては………!!!


決意を胸に私は通い慣れた部屋へとノックと共に足を 踏み入れた。


いつも通り部屋の掃除を開始し、ある程度片付くと窓 際に花瓶を置き持ってきていた花を生けた。


基本的、この部屋は物が少なく主が綺麗好きなせいか 汚れというものがあまり見当たらない。


寝室にはさすがに入ることを躊躇われるし、何より主 が入られることを嫌がった。


浴室も似たような理由で却下。


ホント、やることなくて逆に暇。 というかこんなぬるい仕事で高い給料もらっていいの かっ?!


………なんてことは思わない!! 何せこの部屋の主は一癖も二癖もある問題人物なのだ から。


「リナっ!!今日は早かったんだな」


はい、出ました問題人物。 レナード・ハルディウス!!


容姿端麗、頭脳明晰、世間では非の打ち所がない将来有望な青年だと言われて人気のある人物。


特に学園の魔導科ではどこの宗教の教祖みたいに象徴扱いされ、『白金の魔導士』と呼ばれて崇拝されている。


ちなみに私も学園の騎士科で『花冠の聖騎士』と呼ばれているのだけど、レナードとは違って気さくな感じで周りに接している。


扱いも教祖的なものではなくアイドル的な感じだ。



とにかく本来はライバル関係である私たちだが

レナード本人にはまだバレてはいない。



まぁ花冠の聖騎士は魔導士嫌いで有名だし、貴族の令嬢ということもあって、まさかこんなメイド仕事しているとは思わないんだろうけど。



ほら、事前に作っておいたマカロンも美味しいそうだし、紅茶も上手く入れられた。


そんなこと考えながらもテキパキとテーブルの上をセッティングしていく。



「レナード様、今日は重大なお話がございます。とりあえず椅子に座って頂いてもよろしいでしょうか?簡単な物ではありますがお茶に合うお菓子もご用意いたしました」



「わかった、せっかくだからリナも座って一緒に休憩しよう」


「いえ、私はメイドなので立ったままで結構です」



レナードは私の緊張した雰囲気を察したのか自分が座った向かい椅子に座るよう勧めてくれたが丁重に辞退した。


「レナード様、単刀直入に申し上げます。明日より貴方様に付く側付きのメイドが参ります。メイドとしての経験も豊富で実家は騎士の家系、腕に覚えもある頼もしい人物だと伺っております。」



「それは誰からの指示だ?なんで使用人筆頭のマーサが来ないんだ?」


コツコツコツ、一定のリズムで響くテーブルを指で叩く音。

不機嫌な態度を隠そうともしないその姿に呆れというよりも怒りを感じる。



「レナード様のその態度が予想できたからこそマーサさんは私に今回のことを頼んだのでしょう。それに、これはマーサさんより上の方たちのご命令でもあるのです、人手が増えて過ごしやすくなることはあっても不自由になることはないでしょう」



そう言い聞かせてみても不満そうな態度を崩さない目の前の人物。

元はと言えばレナードが賢者の石と呼ばれる空想の産物を産み出したせいで四六時中誰かが護衛に付かなくてはいけなくなったのだ。



確かに以前見かけたレナードの魔法は強力なもので護衛なんか必要なく感じる。

しかし、相手は場所を選ばないのだ。


もし、学園内で襲われたら?

狭い建物の中で派手な魔法を使おうものならたちまち周りを巻き込んで大惨事となるだろう。


だからこその護衛兼メイドなのだが本人はどうにも不満たらたらみたいだ。



「……メイドはリナ1人で充分だ。護衛だって警備の者1人いればそれでいい。」


「却下です。私には事情があります。レナード様の側にずっと控えておくことなんてできませんし、しばらくの間は朝のお勤めも辞退させていただくことになりました。」


「なぜだ!!専属になれという命に従わないばかりか数少ない会える時間もなくなるのか!?」



……ちょっと待て、コイツは何か勘違いをしていないか?

私の直接の雇用主はマーサさんであってコイツではない!!

それ以前に朝は仕事をしに来ているのであってコイツに会うためとか断じてないっ!!


「レナード様、これは決定事項です。貴方に拒否権はありませんし私も夕方は今まで通り部屋付きメイドとしての仕事に参る予定ですので我慢なさってください」



これで話は終わりとばかりに口をつけられることなく冷めてしまった紅茶を下げ、新しい物と入れ替えるべくワゴンの方へ移動する。



「……私はリナに側にいてほしい。どうしたらこの気持ちを君にわかってもらえるんだ?」



小さく消え入りそうな声で呟かれた言葉。


普段の自信満々なレナードの姿からは想像できない力のない声。



私はそれらすべてを無視し、気付かないフリをする。



正直、胸の奥が軋んだがぐっと我慢して唇を噛み締める。



勝手なことばかり言うな!!

お前は魔導士、私の大嫌いな魔導士だ!!




頭の中で何度もそう繰り返し自分に言い聞かせてみても、どこか以前みたいに嫌悪の感情が沸いてこない。



―――――ねぇレナード、お前は私に自分のことを理解してくれと言うけれど、お前こそがわたしを知ろうとしないんじゃないか……!!






近日中に次話更新したいと思います☆

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