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はた迷惑なプレゼント(後編)

再投稿版の最後の話です。楽しんで頂けたら幸いです☆

朝からドタバタしたせいだろうか、午前中の授業終了と共に激しい疲労感に襲われた。



実技だったならまだマシだったかもしれないが今日の授業は苦手な座学ばかりで余計に疲れたのかもしれない。



「リナリア様、ご一緒にお昼でもいかがですか?」


「ズルいわ!!私たちだってリナリア様とご一緒したいわ!!」



講師が教室から出ていったのを確認してすぐに私の周りを取り囲むクラスメイトたち。



目を爛々と輝かせ期待に満ちた目を向けてくるが……



「ごめんなさい、今日は少し先生に用事があって……」



また誘ってね?と周りをクルリと見回しながら告げると残念そうな表情を浮かべながらも不満も言わずに私を教室から送り出してくれた。






さて、やってきました生徒指導室。

扉をノックすると「お入りなさい」という言葉が返ってきた。




部屋の中には生徒指導のシリル先生が椅子に座っていて向かいの椅子座るように指示された。





「先生は私の言いたいことがわかっているみたいですね」


「わかっていますよ。レナードのことでしょう?」



「……なんで私が魔導科の生徒の部屋付きメイドをしなくてはならないのですか?正体がバレにくいキッチンメイドだったらということで働くことを了承したのです、話が違います!!」



先生は眉間にシワを寄せ深い溜め息をついた。

私の言いたいことが予想通りだったとでもいうのだろうか?



「今回のことは私も悪かったと思っているのです。あなたたち騎士科と魔導科の生徒が仲が悪いのは百も承知です。けれどどうしようもなかったんです……恨むなら前任のメイド科の生徒たちを恨みなさい」




やっぱりか………



予想通り前任者たちは部屋の主の美貌に惑わされ、メイド科の生徒としてはあり得ない失態を犯したのだろう。



こうなってみると魔導科の男子寮の使用人不足の原因が自ずとわかってくる。



勿論、魔導科生徒が嫌いな私には関係ない話だ。

だからこそ私がレナードの部屋担当になったんだろう。



「……先生はレナードが私の正体に気付いていると思いますか?」



思いきってここ最近で一番気になっていることを問いかけた。

もし、私の正体がバレていたとしたら大問題だ。

騎士科のトップに立つ『花冠の聖騎士』が犬猿の仲である魔導科のトップ『白金の魔導士』に使用人としてアゴで使われているとバレた日には、どうなるかわからない。



「レナードは頭がいい生徒です。けれど少し抜けているところがあるのも事実です、彼がもし気付いているのならもっと何らかの行動を取るはずです」



何らかの行動って何っ!?




聞き返したい衝動にかられたが、疲れきった雰囲気をまとう先生にそれ以上何かを言うことはできなかった。




とりあえず眼鏡をかけて髪型も変えている、普段の『花冠の聖騎士』として作っているキャラを隠して素に近い自分で接している。



…… 多分バレていないはず



自分にそう納得させて指導室を後にした。









午後の授業も無事に終え、再びメイド服に着替えた私はレナードの部屋へと急いだ。



夕方の仕事は朝と違ってやることがたくさんある。

主がいない時間にしかできないこともあるので早く仕事に取りかからないと間に合わない。



たどり着いた部屋の前、朝渡されたばかりのネックレスを扉にはめられた飾りにかざすと淡い光を放ったあとカチャリという軽い音と共に鍵が開いた。



これも魔法の力なのか……



得体の知れない現象に沸き上がる嫌悪感。

やっぱり魔法は嫌いだ。



部屋の中に入るとゴミ箱のゴミを集め、窓の硝子を乾拭きする。


物が少ないこの部屋ではやることが限られているのですぐに仕事は終わってしまう。



とりあえず、授業から戻ってすぐに食べれるようにと事前に作って焼いておいたクッキーを皿の上に盛り付けて置いておく。



「……こんなもんかな」



部屋の中の出来上がりに満足していた私ははっきり言って油断していた。



「―――― !」






突然背後から伸びてきた腕が首を捕らえてきつく締め上げられた。



苦しくなる呼吸、自分の失態に舌打ちしたい気分だが息をするのもままならない。


どうにか巻き付いている腕を引き剥がそうとするが相手の力が強く、思うようにならない。



「おい、メイドは俺が捕まえとくからお前は早く例の物を見つけろ!!急げ!!」


「わかってるよ!!」



相手は強盗だろうか?少なくとも人数は2人。本気を出せばやってやれないことはないか……



「――――っぐ!!」


片足を思いっきり上げ勢いよく背後の男の足を踏みつける。

踏みつけられた痛みで緩んだ拘束から体を逃がすと激痛からか床にしゃがみこんだ男の後頭部にかかと落としを食らわせ、完璧に床に沈めた。




「この野郎!!よくも―――!!!」



部屋の中を荒らしていたもう一人の男が事態に気付いて近くにあった木の椅子を振り上げてこちらに向かってきた。



こんな時に相棒の剣があったらなぁ…




そんなことをどこかぼんやりと考えつつ、攻撃を向かえ討つべく態勢をととのえた。



「『閃光よ彼のモノを貫け!!』」



「――!!」



突然まばゆいばかりの光が部屋中に溢れ、とっさに目を閉じてしまった私の耳に低いうめき声と何かが倒れる音が聞こえた。



瞬間、何者かが私の体を包み込み頭のてっぺんに温かい息がかかる。


新たな拘束者の出現に身を硬くして反撃にかかろうとしたが、真正面から自分を抱き締める存在の正体に気付いて安堵の息をつく。



いまだに目を開けることはできないので確認できないが、その人物の服から香る洗剤の香りは自分が日頃愛用しているものだ。



「レナード様、いい加減息苦しいので放してください。」



「……怪我してないか?」



不安そうな声をしてやっと拘束を解いてくれたレナードは私の体を色々と確認しているようだ。

何やら熱い視線を感じるし………



そっと目を開け頭を軽く振る。

まだ光の余韻が残っているせいか若干頭がクラクラしたがなんとか動ける。



「怪我はありません、レナード様こそ大丈夫ですか?……それより貴方はいつから寝室にいたんですか!?」


「私も怪我はない。部屋には朝からずっと居た。……言ってなかったけど学園のほうは今休暇中で行かなくてもいいんだ。」



……朝からずっと居た。だと?!

それなら夕方やって来てあくせく働く私の姿をじっと確認していたのだろうか?


前のメイドたちみたいに愚かな真似でもすると思ったのか!!だとしたらなんと傲慢で自惚れ家なんだ!!



「学園を休暇中とは面白い表現されますね。わざわざ学園を休んでまで私のことを見張ってでもいたのですか?」


「――!!それは誤解だ!!」



レナードは焦ったような表情で今回のことを初めから説明し始めた。

奴の言い分では学園の経営する研究所にて魔導士たちの至高の存在、求めてやまないものを造り出してしまったらしい。

しかしその存在はレナード個人が産み出した物ということで所有権は奴にあったらしい。


勿論、納得できない研究所の魔導士たちは色々な工作を行ったらしいが皆失敗に終わった。



そのへんはさすが『白金の魔導士』を名乗るだけのことはあるよね。


とりあえず事態を重く見た学園側は周りを落ち着かせるまでの間、自室にて過ごすように命じたらしい。



ところが世話に来るメイドが変なちょっかいをかけてくる上、無断で部屋に侵入してくる始末。


やっと来たまともなメイド(?)である私に世話されてようやく平穏な日々を過ごせるようになったらしい。



ちなみに今回の強盗犯はやっぱり研究所が雇った人間らしく窓から侵入して部屋の中を漁り始めたところ、やって来た私に驚きとっさに浴室に隠れて襲う機会を伺っていたらしい。



それに気付いていたレナードも取り押さえようと学園側に魔法で連絡をとっていたが予想外に早く仕事にやって来た私が捕まってしまい、警備の者が駆けつけるのを待つことなく犯人制圧を決めたらしい。



「本当に申し訳なかった。もっと早くに魔法で押さえつけていればリナを怖い目に合わせることはなかったのに…」


……

………いや、貴方一部始終見てたんだよね!?私ってば普通に犯人1人倒してたよね!?見てなかったの!!?!



この人、自分の使った閃光の魔法で目がオカシクなったんだろうか???



つい、奇怪なモノを見る目を向けてしまった私の後ろをようやくやって来た警備の人たちによって拘束された犯人たちが連行されていく。



「くそっ、深紅の賢者の石を手に入れればどんなことでも思いのままになったのに!!」



最後に部屋を出た犯人の言葉にふと、頭の中を何かが過った。


―――――賢者の石。魔法を使う者なら誰もが憧れる空想の産物。まさかそれをレナードが造り出してしまったのか!?

いや、それよりなにより何かが引っ掛かる………



「あぁ、ネックレス着けてくれたのか。やっぱりリナには『赤』が似合うな」


『赤』……見下ろした視線の先、胸元で輝くビー玉サイズの赤色の石。



「ほら、1日付けていてくれてたから手の肌も荒れてたのが綺麗になった。やっぱり治癒の効果もあったみたいだな」



目の前にいる男は私の両手をすくい上げ表裏とひっくり返して肌荒れチェックを行っている。



確かに早朝低い気温の中で行う鍛練とキッチンメイドとして水仕事をしていた手は酷いアカギレと潰れたマメで凄いことになっていた。


周りにはバレないようにと手袋をして誤魔化していたはずだがレナードには気付かれていたらしい。

(ちなみに今は急いでいたのもあるが手袋をするのを忘れていた)



「せっかく綺麗に治ったんだ、もうキッチンメイドには戻らないで私専属のメイドになれ。慣れない武器を持って手にマメをつくることもない、私が守ってやるから………」



そう言って私の右手を引き寄せるとその手の甲に軽い口付けを落とした。



「……ちょっと待て、私は別に貴方に守ってもらう筋合いはない。それ以前に自分の身は自分で守れる

。だいたい……………そんな物騒なもの(賢者の石)を人にホイホイとやるな!!」




大声で怒鳴り付け思いっきり目の前に居る奴の腹に渾身の蹴りを食らわせた。




衝撃で部屋に置かれたテーブルにぶつかって、皿に置かれていたクッキーが倒れたレナードの頭に降りかかる。



ホント、人を馬鹿にした奴だ!!

だいたい賢者の石を肌荒れの為に使うとはどういう神経してんだ!!




沸き上がる怒りを押さえることが出来ず倒れるレナードに目もくれず部屋を後にする。



目的地は勿論、使用人筆頭であるマーサさんの元だ。




――――――絶対にこんな仕事やめてやる!!





その後、鼻息荒く決意の辞表をマーサさんに突きだしたが土下座と必死の懇願プラス若干の脅迫でその決意をポッキリとへし折られてしまったのは言うまでもない((涙))







――――――続く???






次話、少しづつ変わり始めるレナードとリナの関係。新しくメイドも増えるみたいでリナの心中は複雑で……



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