君へ捧げる菖蒲の花
気が付いたときから、私の側には貴方がいた。
他の誰よりも仲が良い私達。
でもその関係は、言葉では表せない。
だって…私以外には見えないから。
いつも私の傍に居るけど他人は、見向きもしない。
幼い頃は、それが不思議だった。
でも、貴方は教えてくれたよね。
死んだ者は、生きている者には見えないんだよって―。
君は、特別なんだよって―。
だから、誰にも言わなかった。
私だけの秘密にした。
それなのに、貴方は私の側から消えた。
いや…私が心の底で否定してしまったのかもしれない。
君ノ存在ヲ…。
幼い子供の私は、すぐに人に騙され傷付き、自己嫌悪に浸り自暴自棄になっていた。だから貴方は、私に嘘のつき方、作り笑いを教えてくれた。
幾月も練習をして、気がついた時には他人を信じれなくなっていた。大人の汚いモノも沢山知っていたし、人間の心の中には黒いモノが沢山在ることも知っていた。だから、信じれなくなっていた。かわりに貴方を依存し、信頼していた。
あの言葉を聞くまでわ…。
正直、あの言葉だけは…聞きたくなかった。
貴方だけは私を分かってくれると思ってた。
それなのに、貴方は言った。
僕は、もう君と居たくない。他の子と居れば良いよ。って―
そのときの事は今でもよく覚えてる。
頭を思いきり殴られたように痛く、真っ白になった。
その後、こう思ってしまっていた。
君なんて嫌いだ。
しょせん、君も他の人と同じだったんだ。
裏切る奴は嫌いだ。
もう、一緒に居たくない。と―。
それから、私は心を閉ざし生きていた。そうしたら、私の隣に貴方は居なくなっていた。
寂しくはなかった。
でも、心の底では泣いていた。
早く帰ってきてと―。
結局、貴方は帰ってきてはくれなかった。
隣に居るはずの貴方が居ない。
それだけで、私の心は穴が空いたように沈んでく。
本当は、心の何処かで分かっていたんだよ。
貴方が言ったあの言葉は、
私を想った貴方がついた嘘だった事を。
死んでいる貴方に、
依存してしまっていた私を、
進む事を拒む私を、
在るべき場所へ戻すためだって。
貴方がついた嘘のおかけで出来た友達に、気付かせれたよ。
もう、貴方が居なくても進めるようになったよ?
貴方が居なくても、信じれる友達を見つけたよ?
貴方が居なくても…っ。
生きようと想えたよ―。
神様が、貴方と出逢えた事になんの意味もないと言っても、
私は、貴方と出逢えた事に意味があると思うよ。
私の世界は、貴方が居たからなりったったんだから。
貴方は今何処で何をしていますか?
もう、生まれ変わってしまいましたか?
この果てしなく広がる大空の下に居ますか?
明るく元気に笑って居ますか?
幸せな毎日を暮らせていますか?
貴方が居ないこの世界は、
私には、とても寂しく、辛い場所だけど、
貴方と笑いあって生きてきた思い出が、
記憶に残っている貴方の笑顔が僕を支え、
励ましてくれるから…、
貴方と会いたい事にはかわりないけど、
私は、友達と未来への道を歩いていくよ。
ありがとう。
貴方の大好きだった百合の花を…
私から、菖蒲の花を捧げます。
そして、
大好きな貴方の幸せを心から祈ります。