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誘うまなざし
お借りしたお題は「誘うまなざし」です。
須坂は駅前に到着した。
時刻はまだ午後六時三十分。約束の時間までまだ随分ある。
周囲を見渡しても、蘭子の姿はなかった。
(それはそうだよな。僕が早く来過ぎなんだ)
須坂は苦笑いして、待ち合わせ場所の定番である銅像のそばに行った。
「え?」
ふと横を見るとジッとこちらを見ている美人がいる。
大きな犬を連れていて、深窓の令嬢と言うのが似合いそうな雰囲気だ。
(僕を誘っているのか?)
周りには誰もいない。鼓動が高鳴った。