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ぶどう狩り
お借りしたお題は「ぶどう狩り」です。
恵子は矢那の顔があまりにも近いので、後退った。
「今度、ぶどう狩りにしないか?」
矢那がフッと笑って言った。恵子は眉をひそめて、
「もう終わっていると思いますが?」
「君のぶどうを狩るんだよ、吾妻君」
矢那は恵子の胸を凝視して囁いた。恵子の背中に悪寒が走った。
「帰ります」
恵子は席を立った。
「杉村君は今頃観路野君と会っている」
矢那の言葉に恵子は全てを悟った。
「課長、貴方を軽蔑します」
恵子は言った。