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器用貧乏
お借りしたお題は「器用貧乏」です。
須坂と蘭子は違うエレベーターに乗った。
「二人は仲が悪いのか?」
梶部が綾子に小声で尋ねた。
「次長はご存じないのですか?」
綾子はそう言ってからあっと思った。
「ま、お邪魔でしたか?」
そこへ律子と香が乗り込んで来た。
ハッと気づくと梶部は綾子と二人きりだった。
(須坂はどこへ行った?)
梶部は嫌な汗を掻いた。
(確かに武藤君は美人だが、私にはユーミンが……)
二人同時に付き合う自信がないと思う器用貧乏な梶部である。